小学生の登下校 親が付き添うのは過保護? 防犯の専門家が解説

武田信彦

子どもだけで登下校するのは、日本ではごく普通の光景。しかし、安全や防犯の視点から、不安に感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。

「親が付き添うのは過保護?」「自立のためには子どもだけで行かせるべき?」
そんな疑問への回答を、防犯の専門家・武田信彦さんの著書よりご紹介します。

※本稿は武田信彦著『身近な危険から自分を守る方法』(青春出版社)より一部抜粋・編集したものです。

Q 登下校に付き添うことは過保護でしょうか?

A 付き添いは過保護ではなく“一番の防犯力”です!

「ひとりで歩いたことがあるよ!」低学年⽣向け防犯セミナーで、「外でひとりで歩いたことがありますか︖」の投げかけに、多くの児童が⼿を挙げます。⽇本では⼩学校へ⼊学ころから、⼦どもだけで⾏動する機会がぐっと増えますね。

ちなみに欧米では、日本の中学生の年齢ぐらいまでは、子どもだけで行動させないのがふつうです。

子どもだけの状態にすること自体を、社会的にルール違反となす国や地域もあるほどです。

これは、治安レベルの差のみならず、いわゆる“自己責任“の捉え方の違いが大きいと考えられます。

⽇本では、地域で子どもを育てよう=地域育ての⽂化・習慣が育まれました。地域の⼤⼈たちが⾒守るなか、徒歩圏の学校に通うスタイルが定着し、⼦どもだけで。“通学路“を歩く姿が⼀般的となりました。

このような背景から、とくに公共空間では、自己責任よりも「みんなで守り合う」意識が強く働くようになったと考えられます。いまでも、子どもたちは通学路を歩き、地域のみなさんが⾒守りを⾏う光景が⾒られるわけです。

同時に、「保護者が付き添いにくい」と感じる方が多くいます。また、「子どもだけで歩かせることが自立になる!」とおっしゃる方も…。

しかし、自立とは、子どもの成⻑にあわせて、判断力や行動力をていねいに育んでいくもの。おとなと一緒にいるときであっても、自立は育まれるはずです。

一方、仕事をもつ多くの保護者は、付き添いが厳しい状況もあります。だからこそ、地域での見守り、助け合いの環境が欠かせません。

私はいつもこうお話ししています。
「子どもの通学に付き添うのは、過保護ではありませんよ。可能な範囲で、付き添いやお迎えをしてくださいね!

そして、付き添いの際には、ぜひ周囲にいる児童たちへも⽬を向けてあげましょう。大人がいると、子どもに対して悪意や犯意をもつ人が犯罪を実行しにくくなります。あなたという大人がひとりいることで、多くの子どもたちを守る“防犯力“が生まれるのです!」。

10歳までに身につけたい 身近な危険から自分を守る方法

武田信彦著『身近な危険から自分を守る方法』(青春出版社)

学校・塾・習い事・スポーツ活動など、親の手から離れる時間が増えてくると、子どもがひとりで行動する場面も広がっていきます。 家族と一緒に出掛けた場所でも、家の中でも、じつは「ひとり」のシーンは案外多いもの。

だからこそ、子ども自らが「自分の身を守る」力を育ててあげましょう。クイズやゲーム感覚でできる防犯力の高め方を中央省庁をはじめ、自治体や教育委員会、警察等からの信任も厚い子どもの防犯のスペシャリスト・武田信彦先生が徹底解説。

家庭はもちろん、教育関係者や自治体まで、子どもの防犯に取り組む方々には必携の一冊です。