「子どもに金融教育を」って具体的にどうする? 悩む親に伝えたい『さるかに合戦』で教える資産価値の考え方
人生100年時代に欠かせないのに、学校ではなかなか教えてくれない「お金の知識」。しっかりと子どもに教えたいけど、実際自分もよくわかっておらず説明できない、という親も多いのではないでしょうか。
そんな中、みずほフィナンシャルグループと空想科学研究所の柳田理科雄さんがタッグを組んだ『空想金融教室』が注目を集めています。なかでも『さるかに合戦』を題材にした章は、「おにぎりと柿のタネ、どちらが価値があるか?」という身近な疑問から、投資の核心である「現在価値と将来価値」の概念を見事に解き明かしています。
従来の金融教育では理解が難しい「時間の価値」や「割引率」といった概念を、誰もが知っている昔話で自然に学べるこのアプローチ。親子で「なぜサルはあんな提案をしたのか?」と議論しながら、資産価値の本質に迫ることができます。
今回は、この画期的な金融教育の実例として『さるかに合戦』の章を抜粋してご紹介します。
※本書は、『昔話でおカネの基本がわかる!空想金融教室』(小学館)より一部抜粋、編集したものです。
『さるかに合戦』おにぎりと柿のタネ、価値があるのはどっち?
柿のタネを拾ったサルと、おにぎりを拾ったカニが、ばったり出会った。
おにぎりを食べたいサルは「カニさん、柿のタネをおにぎりと取り換えてあげるよ」と提案するが、カニは「柿のタネなんかいらないよ」と断った。するとサルは「おにぎりは食べれば終わりだけど、柿のタネをまけば、たくさん実がなるんだよ」と言う。
心を動かされたカニは、交換に応じる。そして柿のタネを庭にまき、「早く芽を出せ、柿のタネ。出さねば、はさみでちょん切るぞ~」と、こまめに水をやり、熱心に育てた。
柿の実がおいしく熟したとき、サルがやってきた。「柿の実を取ってあげよう」と言うと、柿の木に登り、熟した柿を自分だけがむしゃむしゃと食べた。
木に登れないカニが「こっちにもおくれよ」と頼むと、サルは「ふん。これでも食べな」と、青くて硬い柿の実を投げた。それが当たって、カニは死んでしまった。
だが、そのタイミングで、たくさんの子ガニが生まれる。子ガニたちはやがて、栗、ハチ、牛のフン、臼の力を借りて、サルの家へ乗り込んで、親ガニの仇を討つのだった。
柳田さん:うむむむむむっ。この話のどこに「金融の重要ポイント」があるのか、ぜんぜんわからん!そもそも物語のなかに、おカネは1円だって登場しないじゃん。筆者のココロに強く残ったのは、カニがあまりに気の毒なことだ。おにぎりと柿のタネの交換を持ちかけられ、一度は断ったのに「おにぎりは食べれば終わりだけど、柿のタネをまけばたくさんの実がなるよ」と、一見ナルホドの提案を受ける。それでつい話に乗ったら、柿の木を育てさせられ、果実はすべて奪われ、ついには命まで取られてしまった。悪夢のような事件ではないですか。
おにぎりも柿のタネも「資産」
みずほさん:やっぱり興味深いお話ですねぇ、『さるかに合戦』。
柳田さん:あの、みずほさん、本気で言ってます?ワタクシにはこの話がおカネや金融にどう結びつくのか、まるでわかりません。みずほさんはなんで、そんなにニコニコしているのでしょう?
『昔話でおカネの基本がわかる!空想金融教室』(小学館刊/柳田理科雄(著)・みずほフィナンシャルグループ(解説・監修)・株式会社博報堂・博報堂ケトル(協力))
金融経済教育の一環として、みずほと空想科学研究所がタッグを組んで、2024年4月に立ち上げた「空想金融教室プロジェクト」。そこで公開してきたエピソードに、新たに書き下ろしたイラストやコラム・用語解説などを加えて書籍化。「お金」について、親しみにくい投資の話から、難しく感じる金融や保険の話まで、有名な昔話を用いながら解説する一冊。