赤ちゃんの「伝える力」を引き出す! ベビーサインで親子がわかり合える育児の秘訣
赤ちゃんはまだ言葉を話せなくても、「伝えたい」気持ちをたくさん持っています。ベビーサインは、その思いを小さな手の動きで表し、親子がわかり合えるきっかけをつくる方法です。
タイパ、コスパ重視の方にも知ってほしい、かわいいだけではないベビーサインの魅力を、日本のベビーサインの先駆者・吉中みちるさんの著書より紹介します。
※本稿は、『ベビーサイン図鑑: 簡単なジェスチャーだけで、2歳児以下とも双方向コミュニケーション!』(吉中みちる/Gakken)から一部抜粋・編集したものです。
育児に自信がつき、家族関係が良好になる
これまで私は「ベビーサインをする子どもたちが、とにかくかわいいからやってみて!」が口癖でした。実際に、そのぷくぷくの小さな手で、一生懸命気持ちを伝える姿は20年経っても忘れられないくらいかわいいのです。
でも、毎日の忙しい育児の中で、そのかわいさを見るためだけにベビーサインを実践するのは、ちょっと負担が大きいと感じる人もいるでしょう。というのは、ベビーサインを実践するには、子どもへの日々の語りかけに、大人が手の動きを添えて見せないといけないから。つまり、まず大人がベビーサインを覚える必要があるのです。
そして、何とかスタートしたとしても、子どもがすぐに手の動きを覚えて、会話が成り立つようになるわけではありません。ベビーサインが返ってくるまで「待つ」期間が意外に長いと感じる人もいます。タイパ、コスパ重視の若者世代には正直、魅力に欠けるのも事実です。
ベビーサインは育児を一時的にラクにするためだけのツールではない
それでも、ベビーサインを育児のスタートで取り入れてほしい理由はたくさんあります。具体的には本書の中でお伝えしますが、中でも一番伝えたいのは、ベビーサインが育児を一時的にラクにするためだけのツールではないという点です。
子どもはベビーサインを使うことで、まだおしゃべりできない時期に「伝えることができた」「わかってもらえた」という「成功体験」を重ねます。この「成功体験」から、「受け止めてもらった」安心感を得ることができます。この安心感が、子どもの「自己肯定感」の芽となり、後に良好な人間関係の構築や、自己表現へとつながっていきます。
そして、実践した親も我が子と「わかり合えた」という体験の積み重ねから、育児に自信が持てるようになります。これが、親自身のその後の人生や、夫婦関係の変化にもつながったという声がたくさん届いています。
ベビーサインを実践してくださったパパが「ベビーサインの数だけ夫婦の会話が増えて嬉しい」「子どもの気持ちがベビーサインでわかるので、育児にちゃんと参加していると実感できる」という感想をくださったこともありました。
小さな子どもも、周囲と関わりたがっている
お世話が必要な子どもを、一人の小さな人として認識するのは、いざやってみると意外と難しいのかもしれません。でも子どもは、生まれながらにして社会性を持っています。「周りと関わりたい」「自分の気持ちを伝えたい」「周りの人にわかってほしい」と思っているのです。
おしゃべりができない時期の赤ちゃんは、「お世話が必要な未熟な存在」として扱われがちですが、それなりに考えていることはあるんです。例えば、私の娘は食事中にお皿やコップをポイポイ投げた後、それをのぞきこみながら【痛い】とベビーサインをしました。自分で投げ散らかした食器を「【痛そう】だね」とベビーサインで伝えてくれたんです。散らかっている食卓にイライラしていた私を、一瞬にしてほっこりさせてくれた思い出です。
近年では、子どもが泣くとスマホやタブレットを与えて静かにさせる場面も増えました。でもそれは、子どもの「周りと関わりたい」という思いを知らないまま子育てをしているからかもしれません。そんな思いを理解し、さらに子どもの「伝える力」を知れば、日々の育児はきっともっと豊かになります。
今すぐ試せる! この記事に出てくるベビーサイン
【痛い】両手の人差し指の先をツンツンとします
「痛かったね」を伝えます。子どもが転んだり、何かにぶつかったりした時にまずは【痛い】のベビーサインで共感してあげましょう。保育士が見てない時のもめごとも、このベビーサインで教えてくれることがありますよ。
『ベビーサイン図鑑: 簡単なジェスチャーだけで、2歳児以下とも双方向コミュニケーション!』(吉中みちる/Gakken)
20周年を迎えた「ベビーサイン」が決定版となって、大幅にパワーアップして登場!
「ベビーサイン」とは、簡単なジェスチャーだけで、まだ言葉が話せない2歳くらいまでの子どもとも双方向コミュニケーションがとれる方法。
子どもは、言葉を話し始める前から、たくさんの気持ちや願いを抱えています。
「おしまいにしたい」「もっとやってみたい」「こわいよ」「うれしいな」「バスが来たよ」「リンゴが食べたい」――そんな思いを、言葉の代わりに“手の動き”で伝え合えるのが「ベビーサイン」です。
親子の心の距離をぐっと近づけてくれます。