怒り下手な子は「すぐキレる」「怒れない」 上手に怒りを表現するには?

戸田久実
2025.09.18 11:32 2025.09.22 11:50

落ち込む小学生の女の子

「すぐキレてしまう」「怒るべき場面なのに怒れない」。それぞれ正反対の性格に見えますが、どちらも「正しい怒り方」ができていない状態です。

アンガーマネジメントを広める戸田久実さんは、「怒りは自然なことなので無理に抑えなくていい。ただ、上手な怒り方を身につけることはとっても大切です」と言います。

子どもが自分の“怒り”と向き合い、気持ちをうまく伝えられるようになるための方法と、注意点について、戸田さんの著書より抜粋してご紹介します。

※本稿は、戸田久実『まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

怒りは自分を守るためのものでもある

わたしたちにとって、怒りは誰もが持っている感情で、なくすことはできません。
「うれしい」「楽しい」「悲しい」と感じることと同じです。

だから、怒りで表現することは自然なことなので、無理に抑えたり、なくそうと思ったりしなくてもいいですよ。

そして、怒りは自分を守るための感情とも言われています。

たとえば、誰かに突き飛ばされて危ない体験をしたり、自分の心が傷つくようなことを言われたりしたら、自分を守るために怒りを感じて、

「危ないじゃないか!」
「そんなことを言うな!」

と怒ることはありますよね。

自分の心やからだ、自分にとって大切なものを守るために怒ることは、悪いことではありません。

ただ、上手な怒り方を身につけることは、とっても大切です。

怒りは強い分、振り回されがち

草原に座る男の子

怒りは、「うれしい」「楽しい」「悲しい」というほかの感情よりも、強いエネルギーを持っています。

だから、怒りに振り回されてしまわないように、上手に扱えるようになりましょう。

そうすれば、イライラすることが減っていきますよ。

「これはおかしい」「許せない」「これは違う」と思うときに、イライラして相手に伝えることもありますよね。

それを「怒り」で伝えることで、自分の一生懸命さや本気だという気持ちをわかってもらえるようにもなるのです。

だから、勇気を出して

「これは、やめて」
「これは、おかしい」

と言うことも大切なことだと、覚えておいてくださいね。

注意したい4つの怒りの特徴

【1】小さなことでも、激しく怒る、一度怒ったらとまらない

・怒った時に、自分でもコントロールできないほどの強い怒りを感じる
・怒り出したらとまらなくなってしまう
・一度怒りだしたらとめられないような激しい怒りを出してしまう

まわりがとめてもおさまらずに怒り続けるので、うんざりされてしまったり、腫れ物に触るような扱いをされてしまいます。

【2】根に持つ、長く引きずる

・一度怒るとしばらく怒りがしずまらない
・過去のことを思い出し、そのときの怒りがわきあがってまた怒り出す
・しばらく口をきかない。不機嫌が続く…など、根に持つ

「そういえばあのとき、あんなことがあったよね!」と過去をほじくり返して、また怒り出したりするので、言われた相手も「またはじまった…」「まだそんなことを根に持っているの?」と何度もイヤな思いをすることになります。

【3】頻度が高い、しょっちゅうイライラしている

・いろいろなことで頻繁に腹を立てる
・いつも不機嫌に見える

しょっちゅう愚痴や文句を言ったり、ため息をついたり、舌打ちをしたり、「なんでイライラしているんだろう」と近くにいる人が気になることや、イライラさせてしまうような振る舞いをしていると、まわりの人たちは「この人とは関わりたくない」とうんざりしてしまいます。

【4】攻撃性がある、人を傷つける、ものをこわす、自分を傷つける

・怒ると相手を責めて、傷つけるようなことを言ったり暴力を振るったりする
・自分を責めて、自分の心やからだを傷つけるような行為をする。怒りを抑え込んでつらくなる
・ものをこわす、ものにあたる

カッときた瞬間に、相手に暴言を吐いたり、暴力を振るったり、ものをこわしたり…といった乱暴な振る舞いをしていると、まわりも傷つき、怖いと思われ、人が離れていってしまうかもしれません。

怒りは感じてもいいですし、怒ってもいいのですが、これら4つの怒りの特徴については、こうならないように気をつけないと、人が離れていったり、自分もつらくなってしまったりするので、注意したいですね。

怒りがわいたときにやってはいけないこと

小学生の女の子

自分の思い通りにならないことやイヤなことがあったときに、あなたはどうしていますか?

もしかしたら、大声を出して怒鳴ったり、ものに八つ当たりをしてしまったこともあるかもしれませんね。

そういう怒り方をすると、相手に大事なことをわかってもらえなくなったり、まわりが困ってしまったりすることもあります。

そして、ますます大きな怒りになってしまうので、やめましょう。

「なんで、こうしてくれないんだろう…」
「どうして、こんなことをするんだろう…」

ということや、相手に対して

「いつか仕返しをしてやろう」
「やり返してやろう」

ということばかり考えていると、怒りが大きくなってしまいます。
やり返してしまったあとで、自分も傷ついたりイヤな思いをすることにもなります。

そうならないためにも、その怒りをエネルギーにして、「いまに見てろ!」と自分にとっていい行動につながるようにしましょう。

戸田久実

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。

立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現 セイコーグループ株式会社)にて営業職、音楽業界の企業にて社長秘書を経験しながらコミュニケーション研修に携わる。

2008年、アドット・コミュニケーション株式会社を設立。2015年、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の理事に就任した後、2024年より代表理事を務め、協会運営とアンガーマネジメントの普及に尽力している。

大手民間企業や官公庁を中心に、研修講師として活躍するほか、書籍も含め、親や子ども向けのアンガーマネジメントコンテンツも提供している。講師歴30年以上、登壇数は4500回を超え、指導人数は25万人に及ぶ。

まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント

戸田久実著『まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント』(かんき出版)

「どうして、あんなに怒ってしまったんだろう……」
「なんで、あの子はすぐキレるんだろう……」
子どもの怒りも、大人の戸惑いも、ちゃんと理由があります。
本書は、子どもが自分の〝怒り〞と向き合い、気持ちをうまく伝えられるようになる
ための最初のガイドです。

心理学に基づいた“アンガーマネジメント”を、子どもにもわかるように、楽しいマンガと会話形式でやさしく解説。子どもも、大人も、一緒に学べる一冊です。