子どもに「戦争」をどう伝える? 答えに詰まる前に読みたい“大人も学べる”平和の本15選

Gakken(編集),小泉悠(監修)

「なんで戦争って起こるの?」 そんな子どもの素朴な疑問に、どう向き合えばいいのでしょうか。戦争や平和について考えることは、命の大切さや他者への思いやりを育む第一歩です。

ロシアの軍事研究の第一人者であり、東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏が執筆した本をはじめ、子どもと一緒に「戦争と平和」を考えられる本を厳選。大人にとっても新たな発見がある、おすすめの15冊をご紹介します。

※本稿は、Gakken(編集)/小泉悠(監修)『僕らは戦争を知らない 世界中の不条理をなくすためにキミができること』(Gakken)から一部抜粋・編集したものです。

戦争と平和について学ぶための おすすめの本

戦争と平和に対する理解や考えをもっと深められる本を紹介します。気になるものがあったらぜひ読んでみましょう。

ウクライナ侵攻をNHKの解説委員が解説

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ウクライナ侵攻 小学生1000のギモン なんで、せんそうおわらないの?

著:NHKネットワーク報道部
刊:青志社

ロシアによるウクライナ侵攻に対して小学生から寄せられた1000のギモンの中から、子どもたちの関心の高いものを紹介。「どうして戦争をしているのか」「現地の子どもたちは大丈夫なのか」などの質問に、NHK解説委員で、ロシア取材一筋の安間英夫さんと、紛争現場や国連への取材経験豊富な鴨志田郷さんが、やさしい言葉で答えます。

ウクライナから日本に避難した少女の日記

ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記

著:ズラータ・イヴァシコワ
刊:世界文化社

「みなさん、明日は戦争になります」――。もし、学校の先生から突然こう言われたら? 日本でマンガ家になることを夢見ていた16歳のズラータさんの祖国ウクライナは、2022年2月、ロシアに侵攻されました。母と別れ、幾多の困難を乗り越えて日本に避難した経験を、ズラータさん自らが日本語でつづった、等身大のサバイバル日記です。

ロシアの文化や国民性を理解する一助に

ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔

著:小泉悠
刊:PHP研究所

ロシアに暮らした経験のある著者の体験を通じて、ロシアとロシア人を多角的にひも解くエッセイ。ウクライナ侵攻により、多くの日本人のロシアとロシア人に対するイメージは好ましくないものに転じました。しかし「ロシア政府=ロシア人」なのでしょうか。両者の関係を知り、ロシアが何であるかを理解するのに役立つ1冊です。

戦争で家族を失った少女の実体験と平和への祈り

新版 ガラスのうさぎ

作:高木敏子 画:武部本一郎
刊:金の星社

戦争の中を生きぬいた著者が、平和への祈りを込めて少女時代の戦争体験をつづったノンフィクション。12歳の少女敏子は、疎開中に東京大空襲で母と妹を失います。実家の焼け跡からは、ガラス工芸の職人だった父が作ってくれた「ガラスのうさぎ」が溶けた状態で見つかりました。そして、父までも…。戦争の悲惨さを後世に伝える名作。

被爆にめげずたくましく生きるゲンの物語

はだしのゲン コミック版(全10巻)

著:中沢啓治
刊:汐文社

広島で被爆した中沢啓治さんによる自伝的マンガ。1945年の広島市で、貧しくとも家族仲良く暮らしていたゲン。ある朝、何の前触れもなく投下された原爆により、ゲンの生活は地獄と化しました。それでもゲンはめげることなく、激動の戦後を生きぬきます。当時の様子が克明に描写され、被爆の惨状をリアルに伝えています。

戦争の中でも人々の日常は続いていく

©こうの史代/コアミックス

この世界の片隅に【新装版】(上・下)

著:こうの史代
刊:コアミックス

主人公すずは、絵を描くことが好きな、おっとりとした少女。広島市から軍都・呉へ嫁ぎ、夫の周作やその家族に囲まれ、慣れない土地で一日一日を健気に生きていきます。そんなすずの日常に、戦争の影が忍び寄り…。戦時中の人々の暮らしを丁寧に描いた作品です。このマンガを原作とするアニメーション映画もつくられました。

三頭身のキャラクターで戦争の悲惨さを描くマンガ

ペリリュー 楽園のゲルニカ(全11巻)

著:武田一義 協力:平塚柾緒
刊:白泉社

太平洋戦争末期、マンガ家志望の兵士・田丸は、南太平洋に浮かぶペリリュー島にいました。飛行場を奪取すべく、島に襲いかかる米軍の精鋭4万。これを迎え撃つのは、日本軍の守備隊1万。祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか――? 戦争の時代に生きた若者の、長く忘れ去られた真実の記録。

不沈艦といわれた戦艦武蔵の壮絶なさいご

戦艦武蔵のさいご

著:渡辺清 画:藤沢友一
刊:童心社

太平洋戦争末期、敗色が濃厚となった日本海軍は、フィリピン・レイテ沖海戦で起死回生の戦いに挑みます。日本海軍の大きな期待を背負い出撃した戦艦武蔵は、アメリカ海空軍の猛攻を受け、多くの兵士を巻き添えにしてフィリピンの海に沈んでいきました。生き残った乗員が、当時の様子を生々しく記録した児童文学です。

抑圧された日常の中で希望を捨てなかった少女の日記

アンネの日記 増補新訂版

著:アンネ・フランク 訳:深町眞理子
刊:文藝春秋

ユダヤ人の少女アンネ・フランクは第二次世界大戦中、ドイツ占領下のオランダでナチスから逃れるため一家で身を隠しますが、2年後に見つかってしまい、1945年に強制収容所で亡くなりました。隠れ家での生活中にアンネが書いた日記を再編集したのがこの本です。アンネの夢や悩みがみずみずしい感性でつづられています。

ナチスから読書の灯を守り続けた少女の生きざま

アウシュヴィッツの図書係

著:アントニオ・G・イトゥルベ 訳:小原京子
刊:集英社

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによりユダヤ人などが収容されていたアウシュヴィッツ強制収容所には、秘密の図書館が存在していました。本の所持が禁じられている中、図書係を務める14歳の少女ディタは、命がけで本を隠し持ちます。実話をもとに、本を愛する少女と、彼女をめぐる人々の生きざまを描いた物語です。

核兵器の恐ろしさを伝える世界的ベストセラーの絵本

風が吹くとき

著:レイモンド・ブリッグズ 訳:さくまゆみこ
刊:あすなろ書房

老夫婦のジムとヒルダは、イギリスの片田舎でのどかな年金生活を送っていました。しかし、世界情勢は日に日に悪化し、ある日、戦争が勃発します。核ミサイルが飛来し、命からがらシェルターに逃げ込んだジムとヒルダですが…。絵本『スノーマン』で知られる作者の素朴で温かみのある絵が、核戦争の残酷さや人間のもろさをいっそう際立たせる作品です。

兵士の目線で描かれる戦争のリアル

本当の戦争の話をしよう

著:ティム・オブライエン 訳:村上春樹
刊:文藝春秋

ベトナム戦争に従軍したアメリカ出身の作家による22の短編小説集。人を殺すということ、失った戦友、帰還の後の日々――ベトナム戦争で若者が見たものとは? 兵士の目線で戦争のリアルを淡々と描き出し、本当の戦争とは何であるかを私たちに問いかけています。

戦場ジャーナリストが命がけで残したメッセージ

世の中への扉 戦争を取材する――子どもたちは何を体験したのか

著:山本美香
刊:講談社

シリアでの取材中に銃弾に倒れた記者・山本美香さんが小学校高学年向けに書いた本です。地雷で足を失った少年や目の前で友だちを殺された少年など、山本さんが取材先の紛争地で出会った子どもたちの様子を克明に記録しています。なぜ戦争が起こってしまうのか、平和のために何ができるのかを考えさせられます。

紛争地で憎しみの連鎖をほどく前代未聞の挑戦

紛争地で「働く」私の生き方

著:永井陽右
刊:小学館

永井陽右さんは「テロや紛争のない世界」の実現をビジョンとして掲げ、ソマリアやイエメンといった紛争地の最前線において、テロ組織からの投降兵や逮捕者を脱過激化し、社会復帰へ導く活動を続けています。仲間の死や絶望と隣り合わせの中で、なぜこれほどまでに危険な仕事に向き合い続けるのか? 前代未聞の挑戦の目的が明かされます。

日本と世界の戦争をマンガとクイズで学べる入門書

るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ! 平和と世界

監修:坂元一哉
刊:JTBパブリッシング

「戦争ってどうして起こるの?」をテーマに、日本と世界の戦争の歴史や、日本と各国の関係性、国際社会の動向や平和のための取り組みなどを、オールカラーのマンガと図解でくわしく解説しています。各章の最後にはおさらいクイズもついています。戦争と平和について学びたい人の入門書として、おすすめの1冊です。

僕らは戦争を知らない

小泉悠(監修)『僕らは戦争を知らない 世界中の不条理をなくすためにキミができること』(Gakken)

【人はなぜ戦争をやめられないのか? 子どもも大人も読みたい“平和の本”決定版】
ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの戦闘、北朝鮮の核・ミサイル開発――日本に住む私たちにとっても、戦争は当事者として直接的・間接的に直面する課題にほかなりません。そこで本書では、主にウクライナ戦争を例にとり、なぜ戦争が起こるのか、戦争を起こした国は憎まれ続けるべきかなどのテーマを、やさしい言葉と図解を用いて解説します。