子どもの語彙はスーパーでも育つ! 日常を“学びの場”にするエクササイズ

船津洋
2025.10.16 11:00 2025.10.21 11:50

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子どもの語彙を豊かにするには、絵本やフラッシュカードが効果的。しかし言語学学者の船津洋先生は、かならずしも本やカードに頼る必要はないと語ります。

日常生活の中で楽しく語彙を増やせる「スーパーマーケット・エクササイズ」について、船津先生の著書より抜粋してご紹介します。

※本稿は船津洋著『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)より、一部編集、抜粋したものです。

広く語彙を身につける

父親と男の子

高解像度で知覚できれば、より正確に状況を理解できることになります。
 
さて、それでは、知覚力を高めるための作業です。

五感を通して入ってきた情報は、心内辞書とも呼ばれる語彙を参照します。

語彙は人の知識として登録されている語の集合体です。物の名前とその意味がセットとなり「語」と呼ばれ、語の集合が「語彙」となります。

知覚力(対象物が何であるか特定する力)を高めるためには、豊かな語彙が必要となります。
 
さて、その語彙を豊かにする方法は極めて簡単です。たくさんのものやコトを知ればいいのです。

知るためにはインプットが必要で、それは文脈のある読書からでも可能です。たとえば、次のような文脈があったとします。

 町中で見かける鳥にはスズメやカラスがいます。
 スズメは小さな茶色い鳥で、チュンチュンと鳴きます。
 カラスはスズメより大きな黒い鳥で、カーカーと鳴きます。

町中の鳥、つまりここではスズメやカラスという名前(記号)と、それらの意味(それらの存在自体、あるいは鳴き声や色形などの知識)がペアでインプットされていきます。
 
これらの語は、文脈、推論、経験などから自然と語彙化されていきます。

教育熱心なご家庭では、絵本をたくさん読み聞かせしていると思いますが、絵本の文に出てくる単語群はもちろん語であり概念です。

たとえば絵本の中に、「タカシ君は幼稚園で草団子を食べました」という文があったとします

「草団子」を知らなかった子でも、こうした絵本に出会うことで、「草団子=緑色の団子とあんこ、甘い、美味しい」という意味とペアになり、語彙としてその子の中で登録されます。

早期教育を実践しているご家庭には「フラッシュカード」があるかもしれません。

一般的なフラッシュカードでは、対象物が単体で描かれています。そしてその名前を音声で読み上げます。それによって子どもたちは、「ああ、これはこういう名前か」と対象物と語をペアで知覚していくことが可能になります。

フラッシュカードは語彙の強化の点においてはひとつの有効な方法です。

しかし、カードや絵本になっていなくても、日ごろから「ほらあれを見てごらん」などの指差しと声がけで、背景(地)から意味(対象物)を抜き出して、概念化することが自然に行われます。

教材や教具に頼らなくても、日常生活の中で豊かな語彙を形成することは十分に可能です。

まずは、広く語をインプットすることで、世の中に対する知覚の解像度を高めていきます。

豊かな語彙の構築は言語能力の向上の「はじめの一歩」です。語彙が乏しいことには知覚ができません。知覚ができなければ、その先の理解ができません。

目の前にあるものの本質・正体を理解できなければ、その上にどのような思考を重ねても、正しい判断にはたどり着けません。

その大前提となる豊かな語彙の構築に向けて、まずは広く概念をインプットすることです。基本中の基本ですので、頑張りましょう。

語彙力が上がるスーパーマーケット・エクササイズ

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スーパーマーケットで買物をする際に、お子さんと次のようなエクササイズをしてみましょう。

■インプット
① 買い物に出かける前に、「子どもと一緒に」買い物リストを作る。
② 目に入る食材などの名を、指差ししながら口に出して言う。

■アウトプット
③ 買い物リストの品物を、子どもに探してもらい、かごに入れる。
④ ひとつの食材を指定して、代替可能な食材を子どもに探してもらう。
 例:ほうれんそう→小松菜 / マッシュルーム→エリンギ

スーパーマーケット以外でも、散歩中など、季節ごとに感じる気温、湿度、街中の物の名称などでも同じようにエクササイズしてください。

親が、目に入る景色をひとり言のように口にするだけでも、自然と風景から概念が切り出されて、子どもの世界を広げていくのです。

船津洋

船津洋

1965年生まれ。東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業(言語学専攻)。上智大学院言語学修士。言語学者。40年以上にわたり、幼児教室や通信教育などの教務を通じて子どもの英語教育と発達研究に携わる。特に、自身が開発した「パルキッズ」は音声を入口にした英語インプット教材として、30年を超えるロングラン教材となっている。現在まで累計で10万組以上の親子に対して、バイリンガルに育てるための指導を行っている。近年では「スローな子育てをしながら賢く育てる」という子育て法をまとめたオンライン講座「地頭力講座」を開講。英語だけでなく、日本語をはじめ言語学全般に指導範囲を広げている。著書にベストセラーとなった『たった「80単語」!読むだけで「英語脳」になる本』(三笠書房)、Amazonランキング1位を獲得した『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)、『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)など、多数。

「地頭力」を鍛える子育て

船津洋著『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)
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