子どもの語彙はスーパーでも育つ! 日常を“学びの場”にするエクササイズ
子どもの語彙を豊かにするには、絵本やフラッシュカードが効果的。しかし言語学学者の船津洋先生は、かならずしも本やカードに頼る必要はないと語ります。
日常生活の中で楽しく語彙を増やせる「スーパーマーケット・エクササイズ」について、船津先生の著書より抜粋してご紹介します。
※本稿は船津洋著『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)より、一部編集、抜粋したものです。
広く語彙を身につける
高解像度で知覚できれば、より正確に状況を理解できることになります。
さて、それでは、知覚力を高めるための作業です。
五感を通して入ってきた情報は、心内辞書とも呼ばれる語彙を参照します。
語彙は人の知識として登録されている語の集合体です。物の名前とその意味がセットとなり「語」と呼ばれ、語の集合が「語彙」となります。
知覚力(対象物が何であるか特定する力)を高めるためには、豊かな語彙が必要となります。
さて、その語彙を豊かにする方法は極めて簡単です。たくさんのものやコトを知ればいいのです。
知るためにはインプットが必要で、それは文脈のある読書からでも可能です。たとえば、次のような文脈があったとします。
町中で見かける鳥にはスズメやカラスがいます。
スズメは小さな茶色い鳥で、チュンチュンと鳴きます。
カラスはスズメより大きな黒い鳥で、カーカーと鳴きます。
町中の鳥、つまりここではスズメやカラスという名前(記号)と、それらの意味(それらの存在自体、あるいは鳴き声や色形などの知識)がペアでインプットされていきます。
これらの語は、文脈、推論、経験などから自然と語彙化されていきます。
教育熱心なご家庭では、絵本をたくさん読み聞かせしていると思いますが、絵本の文に出てくる単語群はもちろん語であり概念です。
たとえば絵本の中に、「タカシ君は幼稚園で草団子を食べました」という文があったとします
「草団子」を知らなかった子でも、こうした絵本に出会うことで、「草団子=緑色の団子とあんこ、甘い、美味しい」という意味とペアになり、語彙としてその子の中で登録されます。
早期教育を実践しているご家庭には「フラッシュカード」があるかもしれません。
一般的なフラッシュカードでは、対象物が単体で描かれています。そしてその名前を音声で読み上げます。それによって子どもたちは、「ああ、これはこういう名前か」と対象物と語をペアで知覚していくことが可能になります。
フラッシュカードは語彙の強化の点においてはひとつの有効な方法です。
しかし、カードや絵本になっていなくても、日ごろから「ほらあれを見てごらん」などの指差しと声がけで、背景(地)から意味(対象物)を抜き出して、概念化することが自然に行われます。
教材や教具に頼らなくても、日常生活の中で豊かな語彙を形成することは十分に可能です。
まずは、広く語をインプットすることで、世の中に対する知覚の解像度を高めていきます。
豊かな語彙の構築は言語能力の向上の「はじめの一歩」です。語彙が乏しいことには知覚ができません。知覚ができなければ、その先の理解ができません。
目の前にあるものの本質・正体を理解できなければ、その上にどのような思考を重ねても、正しい判断にはたどり着けません。
その大前提となる豊かな語彙の構築に向けて、まずは広く概念をインプットすることです。基本中の基本ですので、頑張りましょう。
語彙力が上がるスーパーマーケット・エクササイズ
スーパーマーケットで買物をする際に、お子さんと次のようなエクササイズをしてみましょう。
■インプット
① 買い物に出かける前に、「子どもと一緒に」買い物リストを作る。
② 目に入る食材などの名を、指差ししながら口に出して言う。
■アウトプット
③ 買い物リストの品物を、子どもに探してもらい、かごに入れる。
④ ひとつの食材を指定して、代替可能な食材を子どもに探してもらう。
例:ほうれんそう→小松菜 / マッシュルーム→エリンギ
スーパーマーケット以外でも、散歩中など、季節ごとに感じる気温、湿度、街中の物の名称などでも同じようにエクササイズしてください。
親が、目に入る景色をひとり言のように口にするだけでも、自然と風景から概念が切り出されて、子どもの世界を広げていくのです。
船津洋著『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)
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