子どもの倫理観は親しだい? 「見せる・説明する・考えさせる」で育つ子どもの心
人の立場に立って物事を考えることができる…そんな適度な「倫理観」は、ぜひ子どもに身に着けてほしいもの。
そのために大切なのが、親の子へのかかわり方です。
言語学学者の言津洋先生の著書『「地頭力」を鍛える子育て』より、そのコツを抜粋敷いてご紹介します。
※本稿は船津洋著『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)より、一部編集、抜粋したものです。
倫理観を育む方法
適度に高い倫理観は、人間関係の根っこの部分になるので、確実に育みたいものです。
その取り組みを説明します。
ポイントは次の3つです。
① 見せる
② 説明する
③ 考えさせる
この3つのポイントを実行するには前提として、親子間の会話の環境が整っている必要があります。
心がすれ違っている状態で、これらの作業に取り組もうとしても、子どもはそれを「価値観の押し付け」と受け取って反発する可能性があります。
子どもの自由時間を奪うようなエンタメの要素を控えめにして「思考」のトレーニングをさせたり、家族の会話を増やしたりするような準備をしておく必要があります。
さて、「見せる、説明する、考えさせる」を順次見ていきましょう。
①見せる
「見せる」は「子は親の背中を見て育つ」と言われるように、親が常に理想とする倫理観に則った行動をすることです。そして、それを子どもに見せてやることが重要です。
不思議なもので、子どもは知らず知らずのうちに親のとっている行動を真似るようになります。
たとえば話し方などは、その最たるものです。親の口癖や使用語彙など表出される情報である「口のきき方」が似るのが当然ですが、表面的な発話のみならず、その背景にある思考も似ます。
つまり、物静かで控えめ、考えていることもあまり口にしないようであれば、子どもたちも「考えた」上で、それを口にしないように育っていきます。
また、物事の本質を捉えて、ことば少なめに核心を突くようなことを言う親の言動を見ていると、子どももそのような思考や発言をするようになります。
論理の瑕疵によく気づく親のもとに育てば、子どもたちも同様に育ちます。
さらに、よく人助けをする、周囲とコミュニケーションを図ろうとするなど、人との関わりに対して、積極的な親の態度を見て育つ子は、自然と自らも積極的に人と関われるようになります。当然のことながら、人助けや社会貢献に積極的な親であれば、子どももそのような人格に自然と育っていきます。
常に子どもに「見られている」という自覚を持って、ご自身の倫理観を発揮するようにましょう。
自然と子どもも似たような倫理観を持つように育ちます。
②説明する
しかしながら、子どもはまだ年若で、「見せる」だけでは直感的に理解できないこともあります。
たとえば、おもちゃの取り合いなどは、自分の気持ちに反する相手の行動が原因なのですが、まだ相手の気持ちにまで考えが及ばなければ、年下の子からおもちゃを奪うかもしれませんし、年下の子に対しておもちゃを貸さないようなことも起こります。
これは「あの子もこれで遊びたい」という気持ちは「あなたと同じ」であること、ひとつしかないのであれば「順番に遊ぶ」しかないこと。あるいは、自分より体の小さい年少者に対しては「やさしくする」。自分より小さい子はまだ「あなたのように考えることができない」ことなどを説明してやらなくてはいけません。「駄目なことは駄目だ」などと思考停止せずに、なぜ駄目なのかを説明するようにしましょう。
親の取った行動、あるいは友人の行動などについて話し合う際にも、何が良くて何が悪いのかを説明してやることと、そうした説明を習慣づけることが重要です。
これは、記録に残すのもひとつの方法です。そのようにすれば、過去の行動と比較しての成長を親も子も感じることができるでしょう。
この点に関しては、子どもが納得行くまで丁寧に説明することが大切です。ついつい、オペラント条件づけ的にご褒美で釣ったりしますが、それは避けましょう。
③ 考えさせる
最後になりますが、とても重要なのが考えさせることです。
先ほどのおもちゃのケースでは、「お兄ちゃんがおもちゃを貸してくれたらどう感じる」「おもちゃを貸してあげたら、あの子はどんな気持ちになるかな」と考えさせるのです。
ただし、あまりくどくどやると辟易するので、「もう分かったよね」と陽動作戦・迂回戦術も併用して、子どもの気分を切り替えましょう。
深い理解はあとになるかもしれませんが、子どもの記憶にはしっかりと刻まれるので親としては誠心誠意、わが子に接することが大切ですね。
このように、丁寧に子どもと向き合って対話し、子どもの考えに耳を傾けることを常に心がけましょう。自分だけでなく他者も尊重するような語りかけを受けた子どもは、自分が良ければいいという利己主義には陥らず、目的とするところの適度に高い倫理感を身につけられるはずです。
船津洋著『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)
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