「忘れ物が多い小学生の女の子」が変わった理由は? 教師が親に伝えた”よい習慣の作り方”

熱海康太

「また忘れ物をしてしまった…」毎朝ランドセルを確認しても忘れ物が減らず、悩む保護者は少なくありません。元公立学校教員で多数の教育書を執筆、現在は一般社団法人日本未来教育研究機構代表理事として活動する熱海康太さんが、忘れ物が多い子が自分で管理できるようになる家庭での習慣づくりを解説。ワーキングメモリの理解、視覚的チェックリスト、見守る工夫、朝の時間の余裕など、子どもの自立を促す具体的な方法をご紹介します。

忘れ物が多い子が自分で管理できるようになる、家庭での習慣づくり

「先生、また体操着を忘れてしまって」。連絡帳に書かれたお母さんの言葉には、疲れと申し訳なさがにじんでいました。小学4年生のMさんは、明るく優しい女の子でしたが、忘れ物が非常に多い子でした。体操着、絵の具セット、宿題のプリント、教科書。週に何度も忘れ物があり、お母さんは毎朝ランドセルの中身を確認していましたが、それでも忘れてしまうのです。

Mさんは後に学習障害(LD)とADHD(注意欠如・多動性障害)の特性があることがわかりました。LDの中でも、特にワーキングメモリ(作業記憶)が弱く、複数のことを同時に覚えておくことが苦手でした。「明日は体育があるから体操着を持っていく」という情報を頭の中に保持しておくことが難しいのです。これは本人の努力不足ではなく、脳の特性によるものでした。

忘れ物が起きる仕組みを理解する

まず、私はお母さんにワーキングメモリについて説明しました。