昨日は行くって言ったのに! 不登校児の「やっぱり行かない」に疲弊しないための対処法
不登校の子どもが「明日は学校へ行く」と言えば、親は喜び、期待するものです。
しかし、いざ当日になると「やっぱり行かない」と言われてしまい、がっかりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
こうしたやり取りを繰り返すと、親も疲れてしまいます。
子どもの「やっぱり行かない」を減らすためにできることを、福田遼さんの著書からご紹介します。
※本稿は、福田遼著『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。
Q.「前日は『行く』と言うのに、朝になると『行かない』と言います」
A.前日と当日の「やるべきこと」を洗い出そう
不登校のわが子が「学校に行く」と言ってくれたらうれしくて、そわそわ期待するのが当然です。でも、翌日の朝になって「やっぱり行かない」と言われ、ガックリ。
そんなお子さんのひと晩の手のひら返しに、感情を振り回された経験がある親御さんは多いはずです。この手のひら返しが毎日のようにつづけば、親御さんの精神的な負担はかなり大きくなってしまうと思います。
ここでは、前日と当日の場面に分けて、いくつか対策をご紹介しましょう。
前日の対策1
まず 「学校に行く」ことについて、スモールステップを設けましょう。
ひと口に「行く」と言っても、教室ですべての授業を受けるのか、1時間だけ授業を受けるのか、別室や保健室へ登校するのか、先生と会ってプリントをもらうだけなのか……。いろんな「行く」がありますよね。
「学校に行く」という漠然としたイメージから、お子さんの中で過度に高いハードルを描いているかもしれません。それを防ぐために、事前に具体的になにをするのか明確にしておくんです。もちろん、内容はスモールステップで、お子さんができそうだと思えることに設定します。
僕らがよく使う最初のステップは、「放課後に先生や友だちと会う」「まずは給食を別室で食べる」などです。「明日は学校に行く」よりも、「明日の放課後に先生と会おう」だったら、ずっと簡単にできそうな気がしませんか?
子どもにとっては、そんなわかりやすさやハードルの低さが大切なんです。スモールステップでゆっくり自信をつけていきましょう。
前日の対策2
前日に翌日の行動(学校に行く)を詳しくシミュレーションしておくのもおすすめです。
なにをするかもわからずに、自分にとってアウェイな場所へ行くなんて、大人でも緊張したり不安になりますよね。反対に、事前に行動の見通しが立っていれば、すこしは落ち着いて臨めるはずです。
ですから、前日に翌日の行動の流れを確認しておくだけでも、お子さんの「学校に行く」不安を大幅に減らすことができるんです。
たとえば、「朝起きたら〇〇を食べて、着替えをする。外に出たら15分くらい歩くよね。学校についたら、東門から入って、保健室へ向かって……」と家からの行動を細かくなぞってみたり、授業に参加する場合は「1時間目の国語では〇〇の単元をやるよね。2時間目は……」と授業内容をチェックしておくのも良いと思います。なにか行事やイベントなどがあるときには「どこで、どれくらいの人数で、どれくらいの時間、どんなふうに行われるのか」といった詳細な情報があると、事前に見通しが持てるようになるでしょう。
当日の対策
子どもは、どうしても「行くか行かないか」「やるかやらないか」と0か100かの思考になりがちです。「お腹が痛いから今日はもう無理」などとすぐ極端な結論を出してしまうんですね。
そういうときは、「AかBかどうする?」とまったく別の小さな行動を選んでもらうようにしましょう。たとえば、「朝ごはんはごはんを食べる? パンを食べる?」とか「先に着替えてくる? ごはんを食べる?」などですね。目の前に行動の選択肢が差し出されると、意識がそこに集中し、動き出せる子が多いです。
あるいは、「とりあえず荷物を持って外に出てみない?」「〇〇公園まで歩いてみるのはどうかな?」など、ごく小さな行動を提案してみるのも良いと思います。ちょっとした行動がトリガーになって、不安から目をそらせることもありますし、活動のリズムができて、ポンポンと登校につながることもあります。
継続している場合
「昨日は行くって言ったのに……」が継続している場合、親御さんは朝から欠席連絡をくり返すことになりますよね。「やっぱり今日も行けないみたいです」と学校に連絡するのも、「今日もお休みさせてください」と職場に謝罪するのも、かなり心にダメージがくると思います。
そういうときは、「明日は行く」という発言が出た際に、親御さんの事情も真っ直ぐ話しつつ、きちんと「約束」を結ぶようにしましょう。
約束とは、言い換えれば契約です。つまり、守れたら良いことがあるし、守れなかったらその結果の不利益も受け入れなくてはならない。
たとえば、「明日は行く」の発言を受けて、「じゃあお母さん、明日は仕事に行くって会社に連絡するね。もし明日になって行けないってなっても、お母さんは仕事に行くから、そのときは、お家でひとりで過ごしてね。約束通り学校に行けたら、3P分(※)スタンプを押そうか」と伝えます。
※ここでの「P」はトークンシステムのポイントのことです。
トークンシステムとは、子どもががんばった行動にスタンプやポイントをつけてあげて、たまったらご褒美と交換できる仕組みのこと。小さな達成を積み重ねることで、「できた!」という気持ちを育てていく方法です。
そして、翌日「やっぱり行けない」となってしまったときは、宣言通り仕事に出てください。約束した結末をしっかり味わうことが、それ以降お子さんにとっての約束の価値を上げることにつながりますから。親御さんが「約束」を破ることもないように気をつけてくださいね。
これをくり返すことで、すこしずつ「行く」という発言への責任が芽生え、「行くって言ったのに……」といった肩透かしは減らすことができると思います。少なくとも、お子さんのひと言に振り回されるみなさんの心の負担は確実に減らせるのではないでしょうか。
また、前日の「約束」については、先生を巻き込むのも効果的です。先生に電話やメッセージで「明日は行きます」と伝え、「じゃあ△時に校門の前で待ち合わせしようか」などと具体的な約束を交わすんです。
家族を超えた外の世界と約束を結ぶことが、より強い後押しになる子も多いと思います。無理のない範囲で、ぜひ実践してみてください。
以上が「行く」と言ったのに行けないときの対策になります。併せて、学校に行けたときのご褒美として、大きな喜びを用意しておくのもいいでしょう。そして、家族みんなから、めいっぱいコンプリメント(※)を伝えてあげてください。
※日本語で言うと「褒め言葉」。子どもの行動や努力について、肯定的に褒める言葉かけをすることです。
ただし、これらの対策はどれもひとつのツールです。全員が一発で学校に行けるようになる魔法ではありません。一度試して終わりにするのではなく、「これらの“道具“をどう使おうか?」と考えて、試行錯誤してほしいと思います。

福田遼著『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』(KADOKAWA)
不登校の児童は増え続け、いまや全国で30万人を突破。
「原因がわからない」「どう支援すればいいのかが見えない」
現代の“令和型不登校”は、従来とは異なる複雑さを抱えています。
それなのに、「親のせい」「育て方が悪い」という空気や発言がいまだに見られることも事実です。
本書の著者・福田遼さんは、元小学校教諭。憧れだった教員になって、「不登校問題」に直面しました。
学校に行けない子どもたちを救うことができなかったと、自分の無力さを痛感。
大好きだった教員を辞め、不登校問題をなんとか解決できないか、新しい仕組みを学びたいと、世界18カ国の教育現場を回りました。
そして、注力していた不登校支援を実践するべく、無料のオンラインフリースクール「コンコン」を立ち上げたのです。
子どもが自分の進みたい方向を見つけ、一歩踏み出す自信と力をつけられるように、日々子どもたちに向き合っています。
この本では、福田さんがこれまで培ってきた知識・経験・実績を総動員し、「不登校は親のせいでも子どものせいでもない」という前提のもと、
子どもが自信を取り戻し、将来幸せに生きていくためのメソッドを具体的にお話していきます。
どうにかまた学校に行ってほしくて、あれこれ子どもに働きかけている方。
いろいろやり尽くして、子どもの再登校はもう諦めたという方。
「学校に行きたくない」と訴える朝が増えて、不登校を間近に感じている方。
そんな方に、ぜひ読んでいただきたい内容になっています。
子どもの未来を諦めないすべての方へ。
不登校という状況を、自信を取り戻すチャンスに変えるための1冊です。