子どもを勉強好きに変える、マルでもバツでもない「第3の記号」
勉強でミスするたびに悔しがって、癇癪を起こす小2の男の子。「親子ともども疲れ果てています」と悩む親御さんに、『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』のMC、福田遼さんが伝えたいこととは?
福田遼さん、秋山仁志さんの著書より、抜粋してご紹介します。
※本記事は福田遼,秋山仁志『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです
Q 間違いを伝えると、癇癪を起こしてしまう
息子は小2なのですが、すでに授業についていけません。おそらく読み書きを苦手にしていることが原因だと思われます。黒板の文字をノートに書くこと自体が負担になって授業を聞けないようなのです。
夏休みの宿題で漢字の書き取りをしたところ、1年生のときに習ったはずの漢字もかなり曖昧になっていました。文字を書いているのを見ていると、書き順が毎回めちゃくちゃだったり、カタカナすら怪しいということがわかり、この夏休みはあいうえお表や1年生の漢字の復習をしていました。
学習中に少しでも間違えたり時間内に書けないというようなことがあると、過剰に悔しがり、怒り出して放棄してしまいます。クールダウンをしたり気分転換をしたりしてなんとか再開するのですが、いつも20分ほどの学習に1時間以上かかってしまいます。そんな状況に、親子ともども疲れ果てています。
A バツは「お宝」。力を伸ばすチャンスです
100点よりも「勉強を嫌いにならないこと」が大事
ひとし:親御さんがかなりしっかりと間違いをフォローしてあげている感じだね。でもお子さんは癇癪を起こしてしまったり、なかなかうまくいかないというお悩みです。
はるか:このお悩みをいただいて、僕は「こういう方のためにこのポッドキャストをやってるんだ!」と思いましたね。
ひとし:どういうこと?
はるか:普段からたくさんの親御さんのお悩みを聞いているんですが、こんなお悩みって一番多いんです。親御さんはお子さんのためを思ってやるんだけど、それがうまく伝わらなくて、子どもは癇癪を起こしてしまう。それで、お父さんもお母さんも疲れてしまって……というパターン。
この方もそうだけど、そもそもお子さんへの愛情が深いがゆえ、じゃない? だからこそ、その愛情のベクトルをプラスの方向に変えたら、劇的に良くなるはず。子どもが喜ぶ形で愛情が伝わって、それが成果にもつながって、子どもは自信を持てるようになるんじゃないか。ポッドキャストでは、そんな方向性を示せたらいいな、といつも思ってるんだよね。
ひとし:なるほど。だからこのお悩みはドンピシャだったんだ。
はるか:そうそう。まず僕は、子どもの勉強において「勉強を嫌いにならないこと」が最も重要だと思ってるんです。
たとえば、義務教育の9年間で勉強を詰め込んだとしても、そこで勉強嫌いになってしまったら、その先70年、80年生きていく上でずっと「勉強したくないです」という人になるよね。反対に、学校のテストでは100点なんて取れなかったけど、なんとなく勉強してるときに楽しい思い出があったら、いくつになっても勉強好きな人になると思う。
ひとし:まさに俺だ。俺は勉強大好きなんよね。
はるか:おうちの人に勉強についてダメ出しされた記憶ってある?
ひとし:いや、ないかも。褒められた記憶しかない。
はるか:実は僕もそう! 僕は学生時代、良い点数のテストしか親に見せなかったんです。悪い点数はゴミ箱に捨てて。
ひとし:それはダメじゃん!(笑)
はるか:でも、そうしてたから母も父も「勉強好きなんやねー!」ってすごく褒めてくれた。「勉強しなさい!」「この点数はなんだ!」って怒られたことは一度もないんです。なので僕の中には、褒められてうれしいとか、「勉強って楽しい」みたいな記憶だけが残っていて。だからこそ、今でも勉強が大好きで、毎日毎日勉強してるんだと思います。
ひとし:じゃあ、テストで良い点を取るよりも、まずは「勉強を好きになってもらう」のを第一目的にすべきってことか。
はるか:そうそう! 人生という長い目で考えたら、目の前のテストで100点を取るより、勉強を好きになって、自ら学び続けるようになるほうがずっと重要だと思います。
マル、ハナマルに続く「三つめの記号」は、ホシ!
ひとし:それはすごくわかるんだけど……。やっぱり親御さんの立場になって考えたら、テストの点数が悪かったりしたら気にならない? 今回のお悩みにもあったように、間違いを指摘したり、しっかり復習してほしいと思っちゃいそう。
はるか:たしかにそうだね。もちろんテストで良い点を取るのも、勉強を好きになるポイントでもあるし、教師としてもテストで間違った問題を見逃し続けるわけにはいかない。
ひとし:それはどうするの?
はるか:前に「ヨイ出し」(ダメ出しの反対)の回で、バツは使わずにマルとハナマルを使うって話をしたの、覚えてる?
ひとし:うん。子どもたちはみんなハナマルをめざしてモチベーションが上がるって話だったよね。
はるか:そこで僕流のやり方がもうひとつあって。それは、間違っているところにホシをつけること!
ひとし:おぉ、三つめの記号はホシか。たしかにバツと違って、嫌じゃないね。
はるか:でしょ? しかもこれは、単に子どものご機嫌取りがしたいわけじゃなくて、「間違いや失敗は宝だ」という大事な考え方を伝える意図が込められているんです。
社会に出ても、「間違いをいかに修正して成長につなげるか」って大事じゃない?
ひとし:本当にそう! 大事だよね。
はるか:勉強でも同じ。一番力がつくのは間違いを克服する瞬間なんだよね。こんなにおいしい部分はない! なので「間違いは宝なんだよ」「どんどん失敗していこうぜ!」って、失敗に対する肯定的な捉え方を、子どもたちにしっかり伝えたいんです。だからこそ「ホシ」なんですよ。
ひとし:じゃあ、子どもたちもホシは間違いだと認識してるけど、「間違いは宝だ」って考えも共有してるから、ホシを見ても落ち込まないのか。
はるか:そうそうそう。だから、僕のクラスではよく「おー! 宝見つけた!」って子どもたちが言ってました。
ひとし:すごくない? え、その教室怖くない?(笑)
はるか:かわいいでしょ、スーパーポジティブで!
勉強も宿題も「間違うことで改善する力」をつけるチャンス
ひとし:でもその考え方は本当に大事だと思う。俺も、よく会社に行くときに忘れ物して、すごい落ち込むんだよね。でも「なんで忘れたんだろう」ってちゃんと反省して、「次は寝る前に玄関に置いとこう」みたいに改善できると、ちょっとうれしい。成長した、って思えるというか。
はるか:まさにそう。「なんで忘れ物しちゃったんだ」と落ち込んだり、「また忘れ物したの?」って叱るんじゃなくて、「これを機にこう改善しよう」と前向きに考える力が大事。僕は、勉強や宿題も、そういう力を身に付けられるチャンスなんじゃないかな、と思ってるんですよね。
ひとし:俺、最近やっと自分のミスを前向きに捉えられるようになったんやけど。小学生がみんなそれやってたってことだよね?
はるか:そういうこと。
ひとし:恐ろしい教室や……。
はるか:ははは! でも本当に、「ヨイ出し」の考えをベースにして、かつ「間違いは良いところを増やす宝だよね」という考えを伝えていくと、子どもにもちゃんと伝わるし、みんなすごく楽しそうに勉強するようになるんです。
ひとし:いやー、おもしろい! これは社会人にもタメになる話だね。
はるか先生のワンポイント
間違いには「ホシ」を付けてみよう!
= 「間違いや失敗は宝」と伝えよう。
『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(福田遼,秋山仁志/PHP研究所)
「第5回 JAPAN PODCAST AWARDS」大賞・教養部門最優秀賞、2冠!
大人気ポッドキャスト「子育てのラジオ『Teacher Teacher』」、初の書籍化!
子どもにガミガミ怒ってばっかりの自分に、ドンヨリ。 うちの子の将来、このままでだいじょうぶかな、と不安になる……。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えるすべての親御さんに届けたいーー。
元小学校教師のはるか氏と、友人でラジオ番組プロデューサーのひとし氏の二人が、子育てに悩める親御さんの気持ちに寄り添い、「明日やってみよう」と思える、22の「神回答」をお届けします。