苦手だらけの場所で大興奮! 自閉症の娘と親子で挑戦した成長と感動の一日

高校生の「ここな」さんと、自閉症と重度知的障がいがある中学生「ゆいな」さんの2人の娘がいる蓬郷由希絵さん。ゆいなさんの「興味」をきっかけに、苦手な音や人混みのある女子プロレス会場へ。
「やってみなけりゃわからない」。そんな子育ての積み重ねを、由希絵さん初エッセイからご紹介します。
※本稿は、『どうにかなるっちゃ 知的障がいのある自閉症児ゆいなの母の記録』(蓬郷由希絵/KADOKAWA)から一部抜粋・編集したものです。
ゆいな、女子プロレスを見つける!
楽しく人生を歩んでほしい思いから、趣味になるような体験を経験させるようにしてきました。映画、乗り物に乗る、カラオケ、リズムジャンプなど。楽しい思いをして、ストレス発散ができれば最高です。リズムジャンプは今あまり気が乗らず、行けていません。まあまた行く気が起きたときに─なんてゆっくり考えていたら、なんとゆいなが自分で趣味を見つけてきたんです。
とある日、アンパンマンを見ているはずのゆいなのタブレットから「うおりゃー!」「どりゃー!」と聞こえてきました。何見てるん、と聞いたら「なんでもないよ!」と隠します。それは女子プロレスの映像だったのですが、見ては怒られるものと思ったようですね(笑)。
以前、ゆいながテレビの中のレスリングの試合に「ケンカしないでー」と話しかける動画がバズったことがありました。そのときに「ケンカではなくスポーツで、じゃんけんのように勝ち負けがあるんだよ」と教えたため、プロレスのおもしろさがわかったのでしょう。
実際に女子プロレスを観戦
興味があるなら、と実際に女子プロレスを観に行ってみました。自閉症の子をプロレス会場に連れていくなんて、信じられない所業だと思います。怒号、人ごみ、甲高いゴングの音─苦手なことばかりです。それでも「入れないかもしれないけど、行ってみるか」と出かけました。「行ってみなけりゃ、やってみなけりゃわからない」。小さい頃から私たちの子育てはずっとこうだったね、と夫と話しながら。
結果、まさかの私が一番大興奮。楽しすぎる!
プロレスラー女子の、なんとかわいく華やかなことか。プリキュア好きなゆいなはもう夢中で、目を輝かせて手を振っています。悪役には振りません(笑)。本当に楽しかったので、また家族で行きたいと思っています。
こんなふうに、ゆいなが私の世界を広げてくれることが多々あります。全国を回って講演し、集まってくれた人たちの笑顔を見ているときにも、これはゆいなの見せてくれた景色だと感じます。
今でも毎日のように、ゆいなから教わることがあります。ゆいなの言葉で腹を立てたり、傷ついたり、前向きになったりしながら生きています。どんなこともポジティブな力に変えて、これからも過ごしていきたい。
未来に向かって

14 歳になり、成長を続けるゆいな。視野が広がり、未来のことも考えられるようになってきました。「車を運転するよ」「バイクに乗るよ」と言ってみるなど、自分も大人になるんだという気持ちが伝わってくるのです。ちゃんと、プライドを持って生きている。だってそうして接してきたから。
ゆいなは自己肯定感が高く、何にでもチャレンジしようとします。プロレスに行ったときは、自分がリングに上がってたたかうつもりでしたからね。焦った〜!
でもそのチャレンジ精神を持ち続けるためにも、安心できる場を増やしていこうと思うのです。
高校は特別支援学校に行き、就業のための訓練をする予定です。
無事就職できたなら、家の近くにひとり暮らしできるようにし、いいヘルパーさんを見つけてあげたい。グループホームに入るという選択肢もあります。いずれにせよ、家族以外にも安心して気を許せる人や場を広げたい。ひとりの女性として、幸せに過ごせるように。
いずれ、どんな仕事に就くのでしょう。どんな地道な作業でも、何時間でも諦めず最後までがんばれるゆいな。きっと、ゆいなに合う仕事を見つけてがんばっていけると信じています。
いろんなことがあるけれど、前を向いて必死に生きるゆいなが愛おしく、誇らしい。これからも、ひとつひとつ積み上げていこう。生きる力も。楽しい思い出も。
『どうにかなるっちゃ 知的障がいのある自閉症児ゆいなの母の記録』(蓬郷由希絵/KADOKAWA)
発売即重版! 密着取材動画で200万人が感動! 自閉症児を育てる母の初著書
全国から講演会オファーが殺到、メディア出演でも話題。
知的障がいを伴う自閉症児ゆいなちゃんの母、蓬郷(とまごう)由希絵さんの初エッセイ。
キャラも濃いけど、愛はもっと濃い。
子育てで心折れそうになっているすべての親・家族に、「大丈夫だよ。」と伝える希望の書。






























