4年間ママと一切会話をしない息子の本音とは? 2丁拳銃・小堀さんが向き合った「息子の沈黙」 【前編】

小堀裕之(芸人・2丁拳銃)

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思春期の子どもとの距離に悩む親は多いもの。
お笑い芸人・2丁拳銃の小堀裕之さんの次男・響己(ひびき)さんは、中学3年の夏を境に、ママと話さなくなったといいます。それから4年。小堀さんは”父親としての目線”で、その変化をどんなふうに受け止めてきたのでしょうか。

家族で話せるのは父・小堀さんだけ

――ABEMAの番組では、奥様と次男さんが4年ほど口をきいていないとおっしゃっていましたね。それはいつ頃、どのように起きたんですか?

【小堀】中学3年生の、8月30日って言ってたかな? 4年前の夏休み終わりから始まりました。

――動画のほうでもお話しされていましたけど、奥様の過去の発言に次男さんが怒ってしまったそうですね。

【小堀】次男の響己が幼稚園の時におしっこを漏らして、それをママ友か誰かに「漏らしたんよ」みたいに話したことがあったそうなんです。それを中学3年の時にふと思い出して、「もう口聞かへん」となったみたいです。ずっとどこかで腹立つなと思っていたんですかね。それが中3で爆発したんだと思います。

――何か大きなきっかけがあったわけではないんですね。

【小堀】何気ないことからだと思います。兄弟とも喋らず、家族の中では僕としか喋りません。嫁は「次男とはドアで会話してる」と言ってました。ドアの閉め方で機嫌が悪いかわかるそうです。

これまで僕はあまり家に帰らなかったんです。だから最初は、「ママと響己が僕を家に帰らせるために”組んでる”んかな」と思ったりもしました。

ママの作るご飯も食べへんし、ママが買ってくるご飯も食べへん。「あんたのしか食べへんから買ってきて」と嫁に言われて、響己のためにご飯を買ってきて部屋の前に置いていました。

僕も一回怒ろうと思ったんです。でも、僕が怒ってしまって響己が僕からも離れたら、もう誰とも喋らへんし、見捨てることになるなと思って、やめときました。

――一度も厳しい言葉はかけていないんですか?

【小堀】あんまりないですね。「仲良くせえや」とか「許したって」みたいな感じで、軽く突っ込むくらいです。

幼少期の次男はお利口でおとなしかった

――響己さんはどんなお子さんだったんですか?

【小堀】響己は、やっぱり溜めるタイプでしたね。一方で長男は、嫌なこともしたいことも何でも言えるタイプ。長男と次男は4歳差なんですけど、長男がとにかく手がかかって、二人目を考える暇もなかったんです。

例えば、長男が2〜3歳の頃かな。パン屋さんに行って「触ったらあかんよ」と言っても触る子だった。触ったパン、全部買って帰らなあかんこともありました。

次男は「触ったらあかんよ」と言ったら触らへん子。響己はお利口でおとなしかった。だから内に秘めるというか、我慢する子でしたね。

――あまり手のかからないお子さんだったんですね。

【小堀】ずっと手がかからないから「ラクやわ〜」って言ってたんです。それが爆発したんだから、やっぱり溜めてたんでしょうね。

――小学生の頃までは”いい子”だったんですね。

【小堀】そう。いい子で、中学生になって少し様子が変わってきたんです。逆らうっていうのも、言い返すんじゃなくて口をきかない。「ママなんていらん」みたいな感じやと思います。

――「手がかかる子のほうが可愛くなっちゃう」という錯覚もあるって言いますよね。もしかしたら次男さんは、「あまり見てもらえてない」って気持ちがあったのかもしれませんね。

【小堀】そうかもしれません。長男は自由に生きて、勉強もできて。中学あたりから響己も意識してたと思います。

長男も次男も、小中一貫校に通っていたんですが、長男が7年生(中1)になるタイミングで、本来はそのまま上がるはずが、テニス部がないということで別の中学に行くんです。

兄との比較意識

――テニス部がある中学校に行かれたんですね。

【小堀】その後、次男も同じ道を辿ったんです。多分、長男を意識してたんだと思います。
長男は推薦で高校に進学しました。そしたら次男も同じ高校に入ったんです。

次男は地頭は良いんですが、反抗期になり、高校に入ったくらいから「もう芸人目指す」と言って勉強をしなくなるんです。

長男はそのまま勉強を続けて、指定校推薦で中央大学法学部へ。

高校入学までは兄弟で同じ流れなんですけど、次男はいったんテニス部に入って、そこから「お笑い」って決めて、勉強もせんようになって、テニス部を辞めて軽音部に入部しました。

これは僕の道と一緒なんですよ。勉強じゃなくて、お笑い芸人、歌。こうすることで家族の気を引いてる気がします。

――同じ道をたどることで、「家族に見てもらいたい」という気持ちもあったのかもしれませんね。

【小堀】だから今は、構ってほしいがゆえにママを突き放して、家族の気を引いてるんです、多分。

長男はおっとりしてます。嫌われようが悪く言われようが、あんまり気にしないタイプ。響己は長男のことを「ああいうとこ腹立つわ」と言ってました。

たとえば音楽イベントで、響己は漫才で出て、他にバンドもいろいろあって、家族(兄弟もママも)も見に来てて。最後に出演者で写真を撮る時に、長男が出てもないのに写りに来る。それをむちゃくちゃ怒ってて。「出てへんやろ。やってへんのに。俺がやったんや。ああいうとこ嫌いやわ」って。

――あえて別の道で目立とうとしているのに、そこに入って来られるのはちょっと嫌ですよね。

【小堀】そう。違う道で目立とう、パパに好かれようとしてるのに、兄ちゃんは自由やから「こっち来て、撮ろう撮ろう」ってなる。何やねん、あいつって、怒ってたりしてました。

――中央大学法学部というのも「すごい」と言われがちですよね。

【小堀】うちはお金もないし、長男は塾へ行かずに大学進学しました。そういう周りの評価も聞いてるから、響己は「逆で目立ったろう」という気持ちもあったと思う。

今年、響己はNSCに入りました。親子で「ヘドロ一家」というコンビも組んでいます。

キャッチボールで実感した成長と、親としての“待つ”覚悟

――幼少期や小学生の時にお子さんたちと「やっておけばよかった/やってよかった」と思うことはありますか?

【小堀】やってよかったのは、コロナ真っ只中に家にいて、久しぶりにキャッチボールをしたことですね。動画も残ってます。もっとやっとけばよかったとも思います。結構、ちゃんとした球を投げるんですよ。響己が中2の頃ですね。

運動神経は長男も次男も良いんです。テニスも強かったです。3人でテニスしたこともあります。

それで、長男のサーブがストレートじゃなくてスライス(回転がかかった球)で、響己は「正々堂々と来いや。小細工すんな」と怒ってたのを覚えてます(笑)。「打たん」と言って、レシーブをボイコットしたこともありました。

――苛立ちは正義感からというのもあるかもしれませんね。

【小堀】真面目なんです。「俺はこう思う」が強い。なのに本人は「家族なんかどうでもええ」という態度をとってしまったから、照れがずっとあるんだと思います。

――思春期特有の難しさですね。

【小堀】でも、最近になってちょっと分かってきたと思います。響己が学生じゃなくなって、外へ出ることも増えて。

実は響己は知らないと思いますが、NSCの授業料はママが貸してるんですよ。僕が貸したことにして。ママが「パパから貸したことにしてほしい」と。で、僕に毎月「3万ずつ返せ」と伝えています。

でも、いろいろ忙しいし、外食も多いし、お金がないんですよね。そこでだんだん(現実を)分かってきたと思うんです。これで一人暮らしとか始めたら、もっと分かるはず。

だから去年・一昨年くらいから、僕も「(社会に)出たら分かるやろ」と思って、「ママの言うこと聞いて感謝せえ」なんて言うのをやめました。自分で分からんと直らへん、そういうもんやと思います。

(取材・編集:nobico編集部 片平奈々子)

※後編は2025年11月25日公開予定です