難関校中受は親子の衝突も覚悟? 親の“二人三脚サポート”のリアル

ユウキ先生

中学受験では、親によって子どもへのかかわり方もさまざま。オンライン指導を中心に中学受験を支援する「中学受験スリースターズ」を運営し、自身の息子の中学受験も経験したユウキ先生は、親子の関わり方のタイプの1つとして“二人三脚サポート型”を挙げています。
難関中学合格者の保護者に多いこのタイプについて、ユウキ先生の著書より特徴や注意点を解説します。


※本稿は、『「まだ伸びる!」をあきらめない 中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』(ユウキ先生/KADOKAWA)から一部抜粋・編集したものです。

二人三脚サポート型

子どもの隣に常にいて、宿題から復習まで徹底サポート

メリット
・子どもに安心感がある
・計画倒れを防げる

注意点
・自立の芽を摘む
・「やらされ感」が強くなりがち

教えるところまで徹底的に関わり、子どもとの衝突も覚悟する

保護者が「自分が子どもに勉強を教えるところまで徹底的に関わる」タイプです。プリント整理や解き直しだけではなく、実際に自分が問題を解き、子どもに説明をする役割まで担います。あるお母さんのケースでは、毎晩子どもが塾から持ち帰ったプリントを教科・日付ごとに細かく整理するところから始まります。

宿題を整理した後、子どもが問題を解き始めると、横に座って見守ります。子どもの手が少しでも止まると、「どこで迷っているの?」「どうしてこの答えになったのかな?」と問いかけ、その場ですぐに解説を始めます。 一方で、いつも子どものそばでサポートしているからこそ、ミスも目につくので、「ここの公式は覚えてないの? 昨日もやったでしょう?」と畳み掛けてしまい、子どもが「わかった」と答えても不安がぬぐえず、何度も同じ問題を繰り返します。このお母さんは、自分自身も塾の教材を全て解き、必要ならばインターネットや参考書を使って解法を調べています。「私が全部わかっていないと、子どもに説明できない」と言い切るほどの徹底ぶりでした。

しかし、こうした関わり方が常にスムーズに進むわけではありません。子どもは「もう分かったってば!」と声を荒らげて反発することも頻繁にあり、お母さんもつい感情的になり、子どもとぶつかることが日常的でした。

それでも、このお母さんが関わり方を変えなかった理由は、「私がここまでやらなければ、この子は絶対に難関校には届かない」という強い使命感があったからです。「塾に任せているだけでは伸びない」「自分が直接教えることで成績は上がるはず」と信じていました。そして実際、子どもの成績は目に見えて向上しました。しかし、一方で子どもとの関係がギクシャクするという代償もありました。

こうしたやり方は、決して万人に勧められるものではありませんが、難関中学合格者の保護者には少なくないタイプです。親自身が問題を解き、教え、管理する一方で、子どもとの衝突やストレスを覚悟する。これが二人三脚サポート型のリアルな姿です。

このタイプの保護者の傾向

・自分自身が学習内容をきちんと理解し、子どもに直接教えられるタイプ。
・子どもが自力でやる前に、「自分が教えないと進まない」と思ってしまう。
・「塾に任せているだけでは成績が伸びない」と感じ、細部まで関わる。
・子どもが難関校を目指している場合が多く、「親がやれることはすべてやらなければ」と使命感を持っている。
・子どもとの衝突も覚悟し、「結果を出させたい」と考えている。

ここまで徹底的に伴走する背景には、「このまま放っておいたら、伸びないのではないか」という危機感があります。また、「子どもが今は嫌がっても、将来感謝してくれるはず」という期待と願いもあり、親としての強い責任感と使命感で子どもをサポートしています。

保護者のサポート例

「親がどんな時もそばにいてくれる」 二人三脚サポート型 は、塾に代わり勉強を教えるだけでなく、プリント・復習管理もします。

塾教材の完全な把握と整理
・塾から持ち帰ったプリントを親が教科別・単元別・日付別に細かく分類・整理し、子どもが学習しやすいよう、教材やノートの管理を徹底的にする。

勉強時間の密着サポート
・子どもが宿題や勉強を始めると、横についてずっと見守る。
・子どもが少しでも手を止めたり、迷っているそぶりを見せたりすると即座に問いかけ、「どこが分からないの?」「ここが間違っているよ」と指摘し、自ら解説する。

問題の直接解説
・子どもが解けない問題を見つけると、自分がその問題を先に解き、完全に理解してから子どもに説明をする。
・子どもの疑問やつまずきに対応できるように、あらかじめ参考書や解説資料を読み込み、塾の先生より先回りして「教える準備」をしている。

徹底した復習管理
・子どもが間違えた問題をコピーして、専用ノートにまとめている。ミスに気が付きやすく、繰り返す間違いは何度も復習をすることで、徹底的に弱点を克服させる。

二人三脚サポート型の特徴

「ミスを指摘するタイミングとその伝え方」次第で、子どもの勉強への理解が深くなり、自ら学ぼうとする意欲も芽生えてきます。

メリット
・学習内容の抜け漏れがなく、弱点も克服しやすい。
・常に学習状況を把握しているため、学習管理の精度が高い。
・難関校合格者の家庭に多く見られ、この方法で成果を出していることが多い。スケジュール管理も抜けがないため、模試に向けて計画的に勉強を進めることも可能。

デメリット
・親の口出しが多くなり、親子間の衝突が増え、関係悪化のリスクあり。
・伴走により子どものストレスや疲労が増えることがある。
・子どもが自分で考え、自走する力が育ちにくくなることも。
・繰り返す間違いに「どうしてできないの?」と親が感情的になってしまうと、子どものやる気が下がってしまう。

注意すべきポイント

子どものわかったふりに注意。手厚い親の伴走が子どもの負担になり、「とにかくこの場を終わらせよう」と表面的な理解に走ることも。

子どもが自ら勉強・計画することを目指すのが大切。親は子どもの自分でできる力を信頼して、少しずつ手を引き、子どもの自主性を育む段階を意識的に作る。

間違いの指摘を随時していると、子どものやる気をうばってしまうことに。例えば宿題がすべて終わってからミスを一緒に見直すなど、工夫をする。

「まだ伸びる!」をあきらめない 中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方

「まだ伸びる!」をあきらめない 中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』(ユウキ先生/KADOKAWA)

「集団塾」「個別指導」「家庭教師」「オンラインサロン」など、中学受験のための選択肢が増える中、どこにどれだけ時間とお金をかけるのがわが子にとっての最適解か?
塾におすすめされる教材や講習はどれだけ取り組めばいいのか?
学校と塾の両立で気を付けるべきことは何か?
など気になる話を、元大手中学受験塾講師であり、保護者としても中学受験を経験したユウキ先生が忖度なしにつづります。