こんな保育園、見たことない! 3歳児がグミ作りを研究する「きらり」の1日に密着
てぃ先生が「日本一の保育園」と絶賛した※、世田谷区の認可保育園 RISSHO KID’S きらり。
子どもの何気ない「つぶやき」を拾い、そこから遊びや活動につなげる保育を大切にしています。
決められたカリキュラムをこなすのではなく、子どもたちの興味や関心が活動の中心にある。そんな「RISSHO KID’S きらり 代沢」の保育に、特別に密着させていただきました!
※中京テレビ「キャッチ!」にて
(取材・文:nobico編集部 中野セコリ)
3歳児クラスのグミづくり
RISSHO KID’S きらりが大切にしているのが、子どもの「やりたい!」という気持ちを、保育者が徹底的にサポートすること。
そんなきらりの代沢園で、3歳児クラス「シリウス組」が今熱心に取り組んでいるのが「グミづくり」です。
進級したばかりの頃は、自然物を使った色水遊びを楽しんでいた子どもたち。やがて本物そっくりの「ジュースづくり」に挑戦するようになりました。
ある日、「ジュースをプルプルにしたらおもしろそう!」という声があがり、ゼラチンで固めてみることに。そのとき、ふと一人の子が「グミもゼラチンでつくれるんだよ」とつぶやいたそうです。
その一言をきっかけに活動は一気に広がり、今では「レインボーグミを作りたい!」という夢に向かって、さまざまな色のグミづくりに挑戦しているそうです。
どうやって絞る?固すぎるレモン
この日シリウス組が挑戦するのは、緑のグミと青いグミ。
材料に選んだのは、レモンとブルーハワイシロップです。
まずは先生がカットしたレモンを、子どもたちが順番に絞ります。ところが思いのほかレモンが固く、あまり果汁が絞れません。力を入れるあまり、絞り器の受け皿が割れるハプニングも発生…(割ってしまった子は、「ぼく、力持ちだから…」とちょっと誇らしげ)。
予想外の固さに、先生たちも苦戦している様子です。
そんな中、絞り器を使わず、手で絞ったほうが効率がいいことに気づいた子が! 「ぎゅってすると、いっぱい絞れるよ!」と、先生や友だちに伝える姿が見られました。
レモンのいい匂いが部屋いっぱいに広がる中、思わず味見をしたくなる子も。
我慢できず手をペロリとなめ、「すっぱい味がする!」と嬉しそうににっこり。
その後ちゃんと手を洗っている姿が、とても微笑ましかったです。
レモン汁を「緑」にするには…
今回は、緑のグミを作るのが目標。という訳で、しぼったレモン汁に、ブルーハワイのシロップを少しずつ足していきます。
順番にシロップを足して、混ぜて、また足して…。レモン汁の淡い黄色に、鮮やかな青が足されるたびに内心はらはらしましたが、最後は無事みんなが納得いく緑色になったようです。
緑のグミとは別に、青いグミも作りたい! ということで、ブルーハワイシロップのみの液も用意します。
砂糖はどうする? 子どもたちの緊急会議
2色の液がそろったところで、それぞれに砂糖を入れるかどうかの話し合いが始まりました。
シリウス組のグミづくりでは、毎回素材ごとに味見をし、砂糖の有り無しを決めているそうです。
シロップをつかった青いグミには、砂糖は入れないことに。しかし思いがけず意見が割れたのが、レモンが入った緑のグミでした。
ほとんどがレモン汁のためかなりすっぱいのですが、砂糖を入れたい派と、入れたくない派で見事に半々に!
なかなか決着がつかない話し合いの中で、先生が「ブルーハワイが甘いから、レモンはお砂糖を入れないのもいいかも…?」と一言。あえての挑戦的な選択ですが、みんなも賛成の様子です。
最後は粉ゼラチンをまぜてレンジでチンした液を、うすく油を塗った型に流します。
家から大きなクマの型を持ってきた子が、すっぱいレモンの液をたっぷり流し入れていました。想像しただけで唾液が出そうな緑のレモングミ、果たして子どもたちは食べられるのでしょうか?
おやつの時間、いよいよ実食
冷蔵庫でしっかり冷やし、午後のおやつの時間には無事グミが完成!
淡い緑のグミと、鮮やかな青いグミがテーブルに並びました。
さっそくみんなでいただきます。
子どもたちが緑のグミをしばらく手のひらにのせていると、体温で少しずつ溶け出してしまいました。慌ててぱくっと食べると、子どもたちはそのすっぱさにびっくり! 先生たちも思わず「すっぱい!」と悲鳴を上げます。
すっぱすぎて食べられない子もいれば、意外にも「おいしい!」と笑顔を見せる子も。食べられるかな?と心配していた緑のグミですが、ほとんどの子が(大きなクマのグミを作った子も)見事に完食していました。
一方、青いグミはしっかりした甘さと弾力があり、まさに「グミ」そのもの。あちこちから「甘い!」「おいしい!」という声が聞こえました。
食べ終わると、「どうして緑のグミは溶けたのかな?」と気になった子どもたち。さっそく仮説を立てて話し合います。3歳児クラスにしてこの探究心…著者が同じ年齢のころは、もっとぼんやり生きていた気がします。
食べ終わった後は、他のクラスの先生にもグミをおすそ分け。先生方の「おいしい!」のひとことに、うれしそうな様子でした。
子どもたちの活動、保育者はどう見守る?
子どもたちが試行錯誤しながら取り組んだグミづくり。
今回の活動について、担当の石川先生にお話を伺いました。

─グミづくり、お疲れさまでした!今回はレモンとブルーハワイでグミをつくりましたが、材料はどのように選んだのでしょうか?
「レインボーグミを作りたい」という子どもたちの夢に向けて、これまでにもさまざまな色のグミを作ってきました。
その中で「青と緑も作ってみたい」という流れになり、子どもたちから「かき氷のシロップって青いよね!」という声があがったんです。
そこで「青いグミをシロップで作ってみよう!」ということになりました。
緑のグミ作りに必要な黄色については、すでにパイナップでグミを作ったことがあったので、まだ使ったことがないレモンが選ばれました。
─これまでに作ったグミにはどんなものがありますか?
最初は「紫のグミが作りたい」との声から、ブルーベリーを材料に選びました。つぶすのが楽しくみんな夢中で取り組んだのですが、鍋で加熱したら煮詰まってしまい、思うような紫色にならなくて…。
そこである子が、「火でやったから焦げちゃったんじゃない?」と言い出したんです。その声を受けて、鍋の代わりにレンジでチンする方法でリベンジしたら、今度はきれいな紫のグミができあがりました。
その後、園庭で育てたスイカを使って赤いグミを作ったり、保護者の方が持ってきてくださったマンゴ―でオレンジ色のグミを作ったり、色々とチャレンジしました。ピンクのグミになることを期待して桃で作ったときは、色が濁って茶色っぽいグミが出来上がったことも…。
材料同士を混ぜて、色や味の変化を楽しんだりもしました。
─苦戦したグミはありましたか?
パイナップルのグミです。潰してゼラチンと混ぜ、レンジでチンして作ってみたのですが、液が固まらず…。「どうしてだろう?」と不思議そうな子どもたちに、「おうちで調べてみようか?」と声をかけると、意外にもみんなちゃんと調べてきてくれました。
「チクチクしたの(酵素)が入っているから固まらないらしい」「缶詰だと固まるらしい」ということがわかり、お台所さんにもアドバイスをもらって、今度は鍋で加熱してみました、すると今度は無事に固まり、グミにすることができました。
─「これは失敗するだろう」という予測が大人はある程度つくと思うのですが、先生はなるべく見守るようにしているのでしょうか。
そうですね。パイナップルのグミが固まらないというのは、実は作る前から分かっていました。だけどきらりの保育として、失敗する経験もとても大事にしているんです。 そこから学ぶことも、やはりたくさんありますから。
はじめから大人が「こうしよう」と誘導するのではなく、子どもと同じ目線で、楽しみながら、一緒に「どうしようか」と考える姿勢を心がけています。
最初に鍋で煮たブルーベリーも、焦げたわけではなく煮詰まっただけなんですけど、「焦げちゃったのか、じゃあどうしようか?」という目線で、子どもと一緒に考えるようにしました。
─家庭でも、子どもに対してきらりのようなかかわり方ができたら理想だと思うのですが、何かコツはありますか?
状況的に難しいときもあると思いますが、親御さんがお子さんと同じ目線に立って、一緒に楽しむことだと思います。準備や片付けのことを考えると、家庭ではなかなか自由にできないことも多いと思うのですが、大人が「こうするとやりやすいよ」サポートしつつ、子どもと一緒に「なんでだろう?」と考える時間も楽しんでみてはいかがでしょうか。
子どもたちの「やりたい!」を大切に
失敗と成功を重ねながら、グミづくりを楽しむ子どもたち。
レモンのグミが体温で溶けてしまったことが心にひっかかった子どもたちは、後日レモンのグミをリベンジすることに。お台所さんに成功の秘訣を聞きに行き、お鍋で加熱してから作ったところ、今度は無事溶けないグミが完成したそうです。
そんな探求心旺盛なシリウス組は、グミづくりのほかに「ハンバーガー屋さんごっこ」も楽しんでいます。
実際にハンバーガー屋さんに足を運びメニューを試食してみたりと、グミづくりと交互に活動を楽しんでいるとのこと。
最近はピクルスづくりにも挑戦したそうで、シリウス組の食に対する強い好奇心が伝わってきました。
決められたことを正しくやるのではなく、自分の頭で考え、アイデアを出しながら活動を進めていく。
そして、大人はそんな子どもたちを見守りサポートする。
RISSHO KID’S きらりの保育は、子どもたちの本当の意味での「生きる力」を育てているように感じました。











































