「学校行きたくない」は限界のサイン 精神科認定看護師が教える、親の対応3つの柱
子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、親も戸惑ってしまいますよね。
「ここで甘やかしてしまったら、子どものためにならないのでは」と考え、なんとか登校を促そうとする方もいるかもしれません。
しかし「学校に行きたくない」という一言の裏には、子どもなりに抱え続けてきた苦しさや葛藤が隠れていることが少なくないと、精神科認定看護師のこど看さんは語ります。
本稿では、こど看さんの著書より、子どもからのSOSを受け止めるために親が大切にしたいことをご紹介します。
※本稿はこど看著『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。
「学校に行きたくない」と言われたら?
子どもから「学校に行きたくない」と言われる。これは多くの保護者にとって大きな衝撃です。「ここで休ませたら休み癖がつくのでは」「嫌なことがあるとすぐ休む子になるのでは」と不安が押し寄せ、つい「もう少しがんばってみたら?」「そんなこと言わないで」と登校を促す方もいるでしょう。しかし、子どもがその言葉を口にした背景に目を向けてみると、違った意味が見えてきます。
子どもの「学校に行きたくない」は、多くの場合「もう限界」というサインです。友だちとうまくいかない、勉強についていけない、教室で孤立している……。そんな状況の中でも、その子なりになんとかがんばってきたはずです。それでもうまくいかず、「親に言ったら迷惑かけるかな」「嫌な顔をされるかもしれない」と葛藤し、勇気を振り絞って出した言葉なのです。だからこそ、そのひとことの裏には、積み重なった苦しさや葛藤が隠されていると考え、まずは受け止めてほしいのです。
「特に理由はない」と言われる場合もあるかもしれません。けれど、その言葉の裏にも、「気持ちを言葉にするのが難しい」「理由を言ったらもっと困らせるかも」「疲れ切っていて説明する余力がない」といった気持ちが隠れている可能性があります。大切なのは、今何が起きているのかを一緒に考え、整理していくスタンスです。
「学校に行かないと将来が大変になるかも」という大人の不安は、子ども自身も強く感じていて、不登校の子どもの多くが「将来が不安」と答えているという調査結果もあります。つまり、子どもは決して気楽に休もうとしているわけではなく、自分を責め、周囲と比べて落ち込み、罪悪感を抱えていることが多いのです。だからこそ大切なのは、「子どもの今を知り、安心と安全を確保すること」です。
学校で孤独を感じ、家でも安心できなければ、子どもは居場所を失います。「居場所がない」と感じたとき、人は力を発揮できないだけでなく、自分の存在そのものを、自分自身で否定してしまいかねません。まずは「休みたい」という思いを否定せずに受け止め、「苦しいときには休んでも良いこと」を保証する必要があります。そして、「休むことも選択肢のひとつだよ」「午前中だけ保健室に行くのもいいし、全部休んでもいい」と、子どもが休み方を選べる余地を残してあげてください。「登校か不登校か」の二択で迫ってしまうと、子どもはますます追い詰められてしまいます。
このように、対応の柱は「受け止める」「安心を保証する」「選択を尊重する」の3つです。伝え方は、小学校低学年には短くやさしい言葉で話す、高校生には自己決定をより尊重するなど、年齢に応じて変えていただけると良いと思います。一方で、「学校に行かせる」という前提でかかわると、その思いを子どもは敏感に察知します。そもそも「行かせる」という考え方自体が、学校に行けない子どもを否定する前提に立っています。目標を「再登校」に置いた時点で、その子のためのかかわりではなくなってしまうのです。無理に連れて行ったり、「行かないならスマホやゲームを取り上げる」といった強制的な対応は、一時的に効果が出るように見えても、実
際には子どもの不安や不信感を強め、子どものこころに大きな傷が生じるなど、長期的には逆効果になることを忘れないでください。
不登校はかつて「登校拒否」と呼ばれ、問題行動と見なされてきた歴史があります。
しかし今では、文部科学省も「不登校は問題行動ではなく、心理的・社会的要因が背景にある」と明確に定義しています。つまり、不登校は決して「怠け」や「サボり」ではなく、ストレスや適応困難などの影響が複雑に絡み合った状態なのです。
「自分の育て方が悪かったから」と自分を責める方もいるかもしれません。しかし、育て方だけで不登校になるかどうかが決まるものではありません。むしろ、親が自分を責める姿を見ると、子どもは「迷惑をかけている」と罪悪感を深めてしまうかもしれません。大切なのは「一緒にゆっくり考えていこう」という姿勢です。自分を責める気持ちは、子どもを大切に思うからこその自然な反応です。その思いを少しずつ「これからどう支えていけるか」に変えていくことが、子どもの安心につながります。
学校に行けるかどうかと、その子の価値は関係ありません。「学校に行きたくない」とあなたに言えたのは、子どもがあなたを信頼している証です。そのSOSを受け止め、「話してくれてありがとう」と伝えてください。そして、子どもが心から安心して休めるように、家を安心できる居場所に整えることから始めてみましょう。