プロ家庭教師が「先取り教育」を勧めない理由は? かしこい子を育てるために本当に必要なこと
「将来のために、できるだけ早く勉強を始めたほうがいいのでは?」そんなふうに考える親御さんは多いかもしれません。
けれど、自ら学ぶことを楽しめる子に育つために必要なのは、早期の先取り学習ではなく、日々の生活の中での体験や遊びだといいます。
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」の西村則康先生、辻義夫先生が、幼児期の過ごし方と、その後の学びにつながる考え方を解説します。
※本稿は、西村 則康、辻義夫(著)『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジブックス)より一部抜粋、編集したものです。
頭がよくなる学びのサイクル
「勉強ができる子」たちのなかには、小さいころから勉強系の教室に複数通っていたり、たくさんのドリル学習をしていたりする子が一定数います。つまり、早い時期から先取り学習をしてきたために、アドバンテージがある子たちです。
でも、そういう子どもたちの中にはどこか疲れた表情をしている子がいます。現時点でのテストの成績はいいけれど、勉強を楽しみながら取り組んでいるようには、どうも見えない。それどころが、我慢して耐えながらやっているように見えるのです。そういう子の中には、いずれどこかのタイミングで失速してしまうか、勉強嫌いになってしまうケースが少なくありません。
一方、同じ「勉強ができる子」のなかには、いつも楽しそうに勉強をしている子がいす。そういう子は、勉強を我慢しながらやっているどころか、勉強を勉強だと思っていないかのように目をキラキラさせながら授業を聞いています。「へぇ〜、そういうことか!」「なるほど、こういうやり方もあるのだな」「わぁ〜、いいこと聞いたなぁ〜」「よし、わかったぞ!」と、常にこころの動きが伴っている「本当にかしこい子」なのです。
この「納得感」や「感動」「達成感」などのこころの動き、あるいは、ああでもないこうでもないと試行錯誤したり、「いま自分が考えていることは本当に正しいのだろうか、ほかにいい考えはないのだろうか」と疑ってみたりといった粘り強さや最後までやり抜こうとする気持ち。これらのこころのベクトルを、私たちは「勉強メンタル」と呼んでいます。そして、この勉強メンタルを高めていくことが、「単に勉強ができる子」と「本当にかしこい子」の差を生むいちばん重要な要素だと考えています。
両者の違いはなにかおわかりでしょうか?
それは、自分に引き寄せて学んでいるかどうか、です。
自分に引き寄せて思い出したり、考えたりできる子は、「勉強は楽しい!」と感じながら、自然と「頭のいい子」に育っていきます。
では、「自分に引き寄せる」とはどういうことなのでしょうか?
それには、子どもの学び方を知っておく必要があります。
幼児期に必要なのは身体感覚
子どもは自分の経験したことが身体感覚として残り、その経験と知識をつなぎ合わせることで理解を深めていきます。
例えば、真夏の公園のベンチに座ろうとしたら、木製の座面は抵抗なく座れたのに、鉄製の背もたれに背中が触れた瞬間「熱っ!」と飛び上がってしまった、なんて経験をしたとしましょう。そのときは、「あ〜、びっくりした!」で終わるかもしれないし、「えっ? いまのはいったいなんだったの?」と不思議に思うかもしれない。なぜそのようなことが起きたのかよくわからなかったけれど、とにかく熱くて驚いたという記憶だけが残った。これが身体感覚です。
やがて、小学生になり、学校でさまざまなことを学ぶようになります。すると、理科の授業で熱の伝わり方を学んだときに、ふっと「ああ、あのとき木製の椅子には座れたけど、鉄製の背もたれがびっくりするほど熱かったのは、素材によって熱の伝わり方が変わるからなんだな」と自分自身の体験を思い出し、そのときの謎がスッと解明されることがあります。
この「ああ、あのときのアレか!」と、自分の経験と新しい知識がピタリとつながる瞬間が多い子ほど、「勉強は楽しい!」と思えるようになります。さらに、自分自身の経験とリンクしているので、自分の知識として頭に残りやすく、そうそう簡単に忘れることはありません。
つまり、幼児期にどれだけたくさんの身体感覚を得てきたかによって、その後の勉強に対する感じ方や理解の度合いが変わってくるということです。
幼児や低学年の子どもの生活の中心は「遊び」です。
わが子の将来の幸せを願って、早い時期からとりあえず「良さそう」なものにあれこれ手を出して、1週間のスケジュールを勉強や習い事などで埋め尽くしてしまっているご家庭は少なくありませんが、幼児期にいちばん大事なのは「遊び」! これは、いつの時代も変わることはない、と私たちは考えています。
遊びだけではありません。家のお手伝いをさせるのもいいですし、親子の会話を楽しむのでもいいでしょう。なにか特別なことをやらせなくても、これらの生活のすべてが学びにつながっていきます。
見たり、聞いたり、触ったり、味わったり、「生活のなかで感じたさまざまなこと」に、学校や塾で習った「新しい知識」が加わると、「なるほど! そういうことだったのか!」「ああ、あのときの感覚がコレなのか!」という驚きと感動を味わえます。これが「おもしろくない」という子はまずいません。むしろ、新しい知識に出会うたびに、たくさんの驚きと感動を味わえるのですから、勉強が楽しくなるのは自然なこと。
そして、もっといろいろなことが知りたくなる。このサイクルができあがると、自分で勉強をする子になります。
「頭のいい子」が勉強は楽しいと思えるのは、こうした「学びのサイクル」ができているからなのです。
西村 則康、辻義夫(著)『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジブックス)
◎ほんとうの意味で頭のいい子=勉強メンタルが育っている子!
「頭がいい」とはどういうことかを徹底的に言語化!
かしこさの新機軸=「勉強メンタル」を育むために親ができること
これまでプロ家庭教師として、たくさんの子どもたちと接して気づいたのは、頭のいい子には、ある共通点があるということ。
授業を聞くときも、問題を解くときも、
「なぜそうなのだろう?」
「そういうことか!」
「ということは、こういうときにも使える知識かもしれない」
「大丈夫、自分なら解ける。絶対解いてみせる!」
と常にこころの動きが伴っているのです。
このこころのベクトルを、私たちは「勉強メンタル」と呼ぶことにしました。
「頭がよくなる」とうたった書籍は数多く存在しますが、本書ではうわべのノウハウではなく、「頭がいい」とはどういうことなのか、その本質を考え、「勉強メンタル」という一生ものの力を育む方法を提案します。
・「勉強メンタル」とは「学びに向かう姿勢」
・すべての学びの土台は「好奇心」
・自分に引き寄せて考える力
・「自由な勉強」と「覚えて、鍛える勉強」
・「当たり前」のハードルを下げてみよう
「メンタル」と聞くと、「やはり勉強には強い精神力」が必要なのでは…と思うかもしれません。しかしそうではなく、すべての学びの土台である好奇心、「学びに向かう姿勢」が、勉強メンタルでもっとも大切なこころの動きです。
