「失敗を許さない親」は要注意 親の顔色を気にする子が受験で伸びない理由

子どもが失敗しそうになると、思わず手や口を出したくなるのは、親として自然なことかもしれません。しかし、中学受験の現場で長年子どもを指導してきたプロ家庭教師は、「失敗を避けて育った子ほど、受験で伸び悩みやすい」と指摘します。
なぜ、失敗を遠ざけることが、学力や思考力の伸びを妨げてしまうのでしょうか。西村則康先生、辻義夫先生の著書より、その解説を抜粋してご紹介します。
※本稿は、西村 則康、辻義夫(著)『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジブックス)より一部抜粋、編集したものです。
失敗をたくさんしてきた子は自分で工夫をするようになる

家庭教師として、たくさんの家庭を訪問していると、最初の訪問でその子がこれまでどんなふうに過ごしてきたのか、おおよそのことがわかるものです。
例えば算数の問題を解いているときに、その子が立てた計算式について「本当にこの式で計算したら答えが出ると思う?」と、わざと聞いてみることがあります。そういうとき、家でのびのびと過ごしてきた子は「うん、大丈夫! だって、この問題は○○の数を聞いているんでしょ? だったら、こことここの数がわかっているんだから、これをこうすれば答えが出るでしょ?」と自信を持って答えてくれます。なかには、答えている途中で「あれれ? いや違う。この数字は○○ってことだから、こういうことか!」とブツブツ言いながら、自分の間違いに気づく子もいます。いずれの場合も、自分で考えて解こうとする姿勢が見て取れます。
それに対して、こちらが尋ねた瞬間に、横にいる親御さんの顔をチラッと見る子がいます。そして、親御さんの表情が険しいのを感じ取ると、自信がなさそうに下を向いて、書いた式をそっと消しゴムで消すのです。こういう振る舞いを見せる子は、普段から親御さんの顔色を気にしながら勉強をしていたり、ただ言われた通りにやるといった勉強が染みついていたりします。親御さんが教育熱心で過干渉なばかりに、小さいころからあれこれ言われ続けているうちに、自分の行動に自信が持てなくなり、自分で考えることをやめてしまった、といってもいいかもしれません。中学受験で伸び悩むのは、間違いなくこの手のタイプの子です。
失敗は成功のもと

わが子には幸せな人生を歩んでほしい──。
すべての親の共通の願いだと思います。ところが、同じ願いを持っているのに、子どもをうまく伸ばしていく親御さんと、子どもの成長を止めてしまう親御さんがいます。
少子化で子どもを育てるのが一人、または二人と少なくなってきているいま、一度だけの子育てで「失敗したくない」と考える親御さんが増えているように感じます。そういう親御さんは、「わが子が困らないように」となんでも先回りをして、きれいに整備された道を子どもに歩かせようとします。でも、こうした誰かが整えてあげた道は、自分で考えて工夫するという機会を子どもから奪ってしまうのです。
勉強、とくに受験のような合否があるものは、自己肯定感が高いか低いかがとても大きく影響します。自己肯定感が高いというと、自信満々な子とどこか性格的なものをイメージしがちですが、実は生まれ持った性格というよりも、まわりによってつくられていく部分が大きいとされています。
自己肯定感が高い子というのは、たくさんの失敗を経験させてもらった子だと思います。失敗をさせてもらう? なんだかヘンな言い方だな、と思った方もいるかもしれませんね。でも、「失敗は成功のもと」という言葉があるように、人は失敗を経験することで、そこからなにかを学び、成長していきます。それは、子どもだって同じです。
幼いころから「なごやかな親子関係」で、安心を感じながら育ってきた子は、自分の興味の赴くままに遊びます。私たちはこの時間を「熱中時間」と呼んでいます。
砂遊びでも、ブロックでも、なにかに夢中になって遊んでいるときの子どもは、ものすごい集中力を発揮します。そして、ああでもない、こうでもないと頭をひねりながら、「こうしたらどうなるのだろう?」「もっとよくするにはどうしたらいいのだろう?」と考え、工夫を見出します。この「熱中時間」は、子どもの頭のなかがフルに回転している状態なので、脳がものすごく活性化されます。つまり、遊びながらどんどんかしこくなっているのです。
一方、なにかに夢中になって取り組んでいる最中には、ブロックがうまく積み上がらなかったり、固めていた砂が崩れてしまったりと、壁にぶつかってしまうことがあります。うまくいかなかったときは、「もう、やーめた!」と投げ出したくなりますが、そこであきらめずに最後までやり遂げる経験をすると、大きな自信が生まれます。この自信が、「自分ならできるはずだ」とがんばれる支えになるのです。
幼いときにそういう経験をたくさんしてきた子は、受験勉強でも失敗を怖がることなく、まずは自分で考えて解いてみせるぞ、と自分の手を動かし始めます。また、うまくいかないときは、「もうダメだ……」とあきらめるのではなく、「なにかほかにいい方法はないだろうか?」「なにかヒントが得られれば、自分だったら解けるはずだ」と、なんとか次の一手を考えます。
一方、幼いときに「熱中時間」を得られなかった子は、親が用意したもののなかで生活をしているので、自分で考えることも、失敗から立ち直る経験もさせてもらえず、勉強メンタルに必要な試行錯誤する力や乗り越える力を身につけていくことができません。さらに、そういう家庭では、親御さんが「ああしなさい」「こうしなさい」「○○したらダメでしょ」と口うるさく言うことが多い。すると、子どもは自分に自信が持てなくなり、自ら行動を起こすことができなくなってしまうのです。
そして、先に触れたように、常に親の顔色を伺う子になってしまう。でも、実際の入試では、親御さんが横についていてあげることはできません。最初から最後まで、自分一人の力で解いていかなければならないのです。
また、人生に置き換えてみても、親は子よりも先に旅立つのが普通です。つまり、いつまでも親が整えてくれた道を歩くことはできないということです。そうなったときに、途方に暮れてしまう子と自分の力でなんとか乗り越えていく子の、どちらがよいでしょうか。答えはもうおわかりですよね。
西村 則康、辻義夫(著)『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジブックス)
◎ほんとうの意味で頭のいい子=勉強メンタルが育っている子!
「頭がいい」とはどういうことかを徹底的に言語化!
かしこさの新機軸=「勉強メンタル」を育むために親ができること
これまでプロ家庭教師として、たくさんの子どもたちと接して気づいたのは、頭のいい子には、ある共通点があるということ。
授業を聞くときも、問題を解くときも、
「なぜそうなのだろう?」
「そういうことか!」
「ということは、こういうときにも使える知識かもしれない」
「大丈夫、自分なら解ける。絶対解いてみせる!」
と常にこころの動きが伴っているのです。
このこころのベクトルを、私たちは「勉強メンタル」と呼ぶことにしました。
「頭がよくなる」とうたった書籍は数多く存在しますが、本書ではうわべのノウハウではなく、「頭がいい」とはどういうことなのか、その本質を考え、「勉強メンタル」という一生ものの力を育む方法を提案します。
・「勉強メンタル」とは「学びに向かう姿勢」
・すべての学びの土台は「好奇心」
・自分に引き寄せて考える力
・「自由な勉強」と「覚えて、鍛える勉強」
・「当たり前」のハードルを下げてみよう
「メンタル」と聞くと、「やはり勉強には強い精神力」が必要なのでは…と思うかもしれません。しかしそうではなく、すべての学びの土台である好奇心、「学びに向かう姿勢」が、勉強メンタルでもっとも大切なこころの動きです。






























