志望校で迷ったら、まず「一番近い学校」へ 塾講師が教える中学受験・学校見学の攻略法

矢野耕平
2026.02.16 12:21 2026.02.27 11:50

学校の屋上の男子と女子(中学生.高校生)

中学受験で悩むのが、志望校選び。その第一歩として矢野耕平先生がおすすめするのが、「自宅から一番近い学校を見に行くこと」です。

学校見学の考え方から合同説明会・学校説明会で注目すべきポイントまで、中学受験の現場を知る塾講師の視点の解説を、著書より抜粋してお届けします。

※本稿は、矢野耕平 (著), ぴよととなつき (著)『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。

志望校選びの第一歩は学校見学

学校の廊下

塾通いを始めているわが子が小学校3年生、あるいは4年生くらいであれば、親子とも「中学入試」というものが漠然としたものになるはずです。つまり、どういう学校を最終的に目指すことになるのか、そのイメージが全然つかめないのですね。

保護者はそんな中途半端な気持ちで塾通いさせて良いのだろうかと不安を抱かれるかもしれません。でも、ご心配なく。中学受験塾に入ったばかりのご家庭で受験に挑むわが子の姿を思い描けるところなどほとんどありません。もちろん、兄や姉がいて、中学受験経験者であれば話は違ってくるでしょうが。

さて、「学校選び」については、中学受験の主役である子どもよりも、保護者が主導権を握って動いたほうが良いでしょう。なぜだと思いますか? 中学受験生、小学生の子どもが「確たる判断基準」でどの学校を受験するかを自ら選択することは難しいからです。その学校の教育方針はどのようなものか? この学校はわが子の趣味嗜好、性格を考えたうえで、それをさらに伸ばしてくれる環境を有しているのか? そして、ご家庭の教育方針、現時点で考えているわが子の将来像に近づけるようなカリキュラム、教育手法、クラス編成などが用意されていて、また、それに見合った施設や設備が整えられているのかどうか……。そういう複合的な観点でその学校の「良し悪し」を判断できるのは大人である保護者にしかできないことです。

いちばん近所の学校をまず見学したほうが良い理由

学校の校庭

そんなことを言われても……と、分厚い中学受験案内を目の前に途方に暮れる保護者が大勢いることでしょう。わが子の成績動向がどのように推移するかまったくわからない……加えて、こんなに数多くの私立中高一貫校にあふれているなか、一体どこに足を運んだら良いのか皆目見当がつかない……。

このようにお困りの保護者に対するわたしの回答はシンプルです。

「ご自宅からいちばん近くの私立中高一貫校へ最初に見学に出かけてください」

わが家もそうでした。拙宅からいちばん近い学校、もっと言えば子どもたちが通う小学校より短時間で行ける学校でした。まずは、この学校の在校生たちの登下校の様子などを(不審者に思われない程度に)観察するところから始めました。学校の内側まで行かずとも、いろいろな情報が得られます。たとえば、友だちと集団で下校するグループが大勢を占めているのか、あるいは、一人で下校する生徒が目立つのか……。その他、登校するときと下校するときの在校生たちの表情はどのようなものか……。これは塾講師としてではなく、一人の父親としての直感ですが、「全体的に礼儀正しくて、ほんわかしている生徒たちが多いなあ」ということでした。さらに、近所の公園で同校の男女それぞれ三人ずつのグループが砂場で小さな子たちと一緒に遊んでいた風景を目にしました。同校は進学校として、いわゆる一流とされる大学の合格実績をメキメキと飛躍的に伸長させている「イケイケ」のイメージを抱いていましたが、それとは裏腹に在校生たちにはおっとりとした気質を感じ取ったのです。恐らく、こういう面は学校説明会に参加したところではわからない「生の情報」だとわたしは考えています。

それでは、なぜ自宅からいちばん近隣の学校を選ぶのでしょうか? それは、その学校が位置づけられている偏差値レベル、進学校・付属校・半付属校といった学校組織形態、共学校・男女別学校といった生徒構成形態など、保護者がその学校に持つ数々の「バイアス」をいったん排してみたほうが良いからです。

そして、最初に見学に行った「近隣の学校」を一つの軸(私立中高一貫校のプロトタイプ)として、そのあと見に行く学校と最初に見学した学校の幾つかの要素を引き比べていくと、わが家にとってのその学校の「良し悪し」が見えてくるとわたしは考えています。

合同説明会のブースでは同じ質問をしよう

志望校で迷ったら、まず「一番近い学校」へ 塾講師が教える中学受験・学校見学の攻略法の画像1

皆さんは「合同説明会」をご存じですか。合同説明会とは、(地域や男女別学等の区分で)複数の学校の先生方が集まり、各々ブースを設けて資料を配布したり、小学生保護者からの質問に答えたりする催しです。

この合同説明会、毎年3〜11月に首都圏のさまざまな会場でおこなわれています。代表的なのは「東京私立男子中学校フェスタ」「子どもまなびフェスタ」「女子校アンサンブル私立中学・合同説明会」「キリスト教学校フェア」「東京都私立学校展」「千葉県私学フェア」「神奈川私立中学相談会」「中・高入試 受験なんでも相談会」あたりでしょうか。WEBサイト「私立中高学覧」を調べてみると、首都圏だけでも1年間で100イベントを超える合同説明会が開催されていることがわかります。

合同説明会の短所はもちろんその学校の内部を直に見られるわけではないという点ですが、それを差し引いても数多くの利点があるとわたしは考えています。

一つ目は、合同説明会に1回でも足を運べば、その日のうちに数多くの学校のパンフレット類が手に入ることです。家に持ち帰って、それらを引き比べることで、どの学校に見学に行こうか、もしくはどの学校の説明会に参加しようかという選定材料になります。

二つ目は、各校のブースで学校の先生方に直接質問でき、その回答を得られるところです。

この場ではどういう質問をすべきなのでしょうか。わたしは「わが子にとっていちばん力を入れたいことに関連するもの」だと考えます。たとえば、中学進学後にサッカー部で活躍するのを楽しみにしていると仮定してみましょう。

「中学サッカー部の練習は週何回、どういう環境でおこなっていますか。ざっくりでかまいませんが、練習試合や大会ではどのような結果を残しているのでしょうか?」

こんな質問が浮かんできますね。

わたしは保護者が気になる学校のブースを回って、敢えて「同じ質問」をするのが良いと考えています。このような具体的な質問には、もちろん具体的な回答が返ってくることでしょう。そうなれば、その回答から各校のサッカー部に対する「温度」が確かに感じ取れるのではないかと思うのです。そして、この回答を参考に、見に行く学校を絞ることもできるでしょう。

学校説明会で耳を傾けるのは「一つのこと」

勉強 仕事

続いて、「学校説明会」です。学校説明会とは字面通り、その学校の講堂やホールで開催される小学生保護者を対象にした「自校の説明会」です。内容としては、校長のあいさつ、教頭からの六年間の教育内容の概要説明、広報担当から直近の入試状況、各科目担当からは入試問題とその得点結果に関する所見、その対策方法など……。そのように構成されているところが多い気がします(もちろん、学校によっては内容構成が異なることもあります)。また、学校によっては説明会のあとに校舎や各施設の見学会などもおこなわれますので、こちらも積極的に参加したいものです。

説明会では、学校サイドからの話を聞き漏らすまいと一生懸命メモに取ろうとすればするほど、多岐にわたる話に耳を傾けることになってしまい、その学校についての特色が見えにくくなってしまうものです。

そこで、一点に絞って話を聞いてみてはいかがでしょうか、とわたしは自塾の保護者会などでアドバイスをしています。その一点とは次のものです。

「この学校は中高6年間の教育でどういう子たちを育てていこうと考えているのだろうか」

これだけです。ここだけに焦点を絞って説明会のトークに耳を傾けると、その学校の姿が案外見えてくるのではないかと考えています。在校生たちの「自主性」をどのように後押ししているのか、在校生たちの将来の進路をどのようにサポートしているのか、など。

わたしと仲の良い同業者の一人はこんなことを口にしていました。

「ウチの学校はこんなにすごいのですよ、というアピールをするところより、ウチの子どもたちはこんなにすごいのですよ、と在校生を誇りに思えるところは好印象を抱きますよね」

この話も先の一点と通じているものがあるように感じます。

わたしが申し上げたことを参考に、多くの学校に足を運んでみてください。

矢野耕平

1973年東京都生まれ。中学受験指導スタジオキャンパス代表、国語専科博耕房代表。指導担当教科は国語と社会。中学受験指導歴は今年で33年目を迎える。法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。現在は社会人大学院生として同大学大学院同研究科国際日本学インスティテュート日本文学専攻博士後期課程に在籍し、認知言語学、語用論などをベースに学齢児童の言語運用能力の研究に取り組んでいる。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文藝春秋)など。

中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ

矢野 耕平 (著), ぴよとと なつき (著)『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)

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