「最初のグラブはビニールでOK」老舗メーカー社長が教える、後悔しない野球の道具選び

上原伸一 (著), 松井克典 (監修)
2026.02.18 10:41 2026.02.27 11:50

野球の帽子、バット、グローブ、ボール

子どもが「野球をやりたい」と言い出したとき、最初に悩むのが道具選びです。特にグラブは価格も幅広く、「最初からいいものを買うべき?」と迷う保護者も多いはず。

野球用品メーカー・株式会社ハイゴールド代表取締役の風呂本隆史さんが語る、最初の一つの選び方や手入れ方法、そして買い替え時期とは?スポーツライターの上原伸一さんによるインタビューを、書籍『子どもが野球を始めたら読む本』より抜粋してお届けします。

※本稿は上原伸一 (著), 松井克典 (監修)『子どもが野球を始めたら読む本』(ベースボール・マガジン社)より一部抜粋、編集したものです。

最初のグラブはビニール製でもいい

野球ボールで父親とキャッチボールする未就学児の男の子

上原:野球は用具が必須のスポーツです。野球を始めてチームに入るとしたら、身に付けるものも多く、ひと通り揃えるには費用もかさみます。子どもが野球を始めたいとなったとき、最初に買うべき用具は何で、どんなものを買えばいいのでしょうか? 特に野球未経験者のお父さんやお母さんは迷うと思います。

風呂本:野球を始める年齢にもよりますが、やはりグラブじゃないですかね。どんなグラブを買えばいいかは、野球の始め方によると思います。いきなりチームに入るのであれば、革製の体の大きさに合ったグラブがいいでしょう。小学低学年で体も平均くらいなら、小さめがいいと思います。他方、年齢的には未就学児で、遊びで始めるなら、玩具のグラブで十分かと。背伸びして革製を買う必要はないです。野球をやらせたい親御さんはすぐに革製を買い与える傾向がありますが……まずはビニールのグラブとゴムボールで野球遊びをさせてみて、お子さんがチームに入りたいと言ってきたら、革製を買えばいいかと。野球は真正面から覚えようとすると、投げるのも打つのも難しいところがあるので、遊びから入って野球の楽しさを知ってもらったほうがいいような気がします。お父さんやお母さんが野球未経験なら、なおさらそうしてほしいと思います。

グラブは手入れさえすれば息をし続ける

野球のユニフォームを着た低学年の男の子

上原:初めて革製のグラブを購入する際は、どういうことをポイントにすればいいですか?

風呂本:最初にお伝えしたいのは野球のグラブは「一生もの」ということです。もちろんサイズが合わなくなれば使えなくなりますが、たまにメンテナンスをしてあげれば、ある意味、息をし続けるのです。ですから、柔らく、すぐに試合で使えるモデルが人気、といういまの流れには反していますが、しっかりした革質のグラブをお勧めしたいです。部分的に合成皮革を使ってコストを抑えているモデルもありますが、全て天然皮革のグラブなら間違いなく長持ちします。はじめから柔らかいグラブはすぐに手に馴染むメリットはありますが、耐久性という点では優れてませんから。

上原:いまは買ったらすぐに使いたい人が多いようですね。

風呂本:その気持ちは分かります。何らかの事情で、今日買ったグラブを明日の試合で使いたいという人もいるでしょう。ただ、野球のプレーがすぐに上手くならないのと同じで、グラブも少しずつ手に馴染ませながら、グラブと一緒に成長していくのがベストだと思います。

あと、しっかりした革質のグラブは使いにくい、と思い込んでる人が少なくないようです。でも対面の専門店なら、頼めば、ある程度は柔らくしてくれます。キャッチボールくらいならできる状態、あとはポケット(後述)を作ればいい状態にしてくれるのです。

グラブは体の成長に合わせて新調する

野球をする子ども

上原:野球を始める年齢や子どもにもよりますが、最初に買うグラブの価格帯はいくらくらいが適当ですか?

風呂本:エントリークラスだと1万8千円くらいでしょうか。ただしこれはあくまで現行モデルの価格です。2年前、3年前の型落ち(旧商品)なら、それよりも安いですし、全く問題はありません。革質も数年前に発売されたものなら現行モデルとさほど変わりないですしね。ただし、あらかじめ湯もみ型付け加工(前述の「湯もみ」を進めたやり方で、捕球面が広がり、ボールが捕りやすくなるなどの効果が期待できると言われている)がされているグラブは、耐久性の点から型落ちは避けた方がいいと思います。

上原:子どもは成長速度がそれぞれなので、一概に言えないかと思いますが、グラブの買い替えの目安はありますか?

風呂本:これも難しいですね。でも体のサイズに合わしてグラブを買い替えたほうがいい、というのは言えます。例えば小学1年で初めてグラブを買ったとしたら、たいてい4年生になるころには小さく感じますからね。自分の体と合わないと感じたときが買い替えのタイミングだと思います。

上原:小学生のときからリトルリーグに入る子や、中学から硬式を始める子は硬式用のグラブを使いますが、軟式用と比べるとかなり高価です。

風呂本:実はリトルでやる子には軟式を勧めているんですよ。そもそも軟式用、硬式用と分かれているのは日本だけですからね。個人的にはハード、ソフトの分類でもいいような気がするんです。アメリカのリトルの子は日本で言う軟式用を使ってますしね。つまりは低学年くらいなら、リトルでも軟式用で十分なんです。どうしても親御さんが硬式用を望まれる場合は、硬式グラブを柔らかくしてお渡ししてますが……。

上原:硬式用のグラブというと、中学生や高校生が使うグラブもかなり高価になっていると聞きますが。

風呂本:裏事情をお伝えしますと、これはメーカーの戦略ではないんですよ(苦笑)。ウチも3万円くらいの硬式グラブはあるんですが、お手頃価格のグラブはあまり売れないんです。お客さんが高くてもいいものを求めているので、どのメーカーもそういうグラブを作らざるを得ないというのが本当のところです。高いクオリティへのニーズに「モノ作りの日本」として応えているわけです。野球の母国・アメリカにはない現象ですね。でもこれから野球を始めようとしている子を持つ親御さんが知ったら、かなり高いと感じるでしょうね。

上原伸一

1962年生まれ。東京都出身。國學院大學文学部を卒業後、外資系のスポーツメーカーのマーケティング職などを経て、2001年からスポーツライターに転身。活動のメインとする野球では、アマチュア野球のカテゴリーを幅広く取材。現在ではベースボール・マガジン社の『週刊ベースボール』、『大学野球』、『高校野球マガジン』などの専門誌の他、Webメディアでは朝日新聞『4years.』、『NumberWeb』、『スポーツナビ』などに寄稿している。2020年より「Yahoo!ニュース エキスパート」。

松井克典

1973年生まれ。日本工業大学共通教育学群・准教授(コーチング学)。埼玉・春日部高、千葉大、山形しあわせ銀行(現・きらやか銀行)、全大宮野球団で内野手としてプレー。以降、体育科教員として勤務した6校(スポーツ専門学校2校、高等学校3校、大学)で野球部コーチ、監督を歴任。並行し、自分の子どもと同時に入団した学童野球チームでコーチを5年間務めた。現在は大学での教育・研究とともに、一般社団法人野球まなびラボ代表理事として小中高の野球指導者・保護者の学びの場の創出や、コーチングやチームビルディングの普及活動に尽力。野球をはじめスポーツに関わるすべての方々が学び、成長していくため活動を行っている。「人生一期一会」「スポーツと教育のミライをデザインする」をコンセプトに、スポーツや教育のあり方を追求している。

子どもが野球を始めたら読む本

上原伸一 (著), 松井克典 (監修)『子どもが野球を始めたら読む本』(ベースボール・マガジン社)

主人公は野球を始めたばかりの子を持つおとうさんとおかあさん。成長期の子どもに本当に必要なもの、食の大切さと体づくり、初めての道具選び、女子野球、気になるお金のことまで。ヒントを求めて7人の賢者を訪ねた筆者が、扉の向こうに見たものは──。