親のためではなく子どものため 「最強王図鑑」が妥協なきガチバトルを描く理由
動物や恐竜、昆虫、幻獣など、さまざまな生き物やキャラクターをトーナメント方式で戦わせ、王者を決める最強王図鑑シリーズ。累計発行部数は650万部を突破し、小学生を中心に高い人気を誇っています。
今回は、シリーズ第1作目から編集を担当しているGakkenの目黒哲也さんに、人気の理由や制作の裏話について伺いました。
リアリティのある戦いが子どもたちの心をつかむ

――25年6月に10周年を迎えた「最強王図鑑」シリーズですが、書店でもひときわ存在感を放っていますね。
純粋な図鑑シリーズとしては、現在19冊になりました。関連するドリルなどの派生書籍も刊行していますので、それらを含めると、ラインナップはさらに広がっています。
――このシリーズは、激しいバトルが、子どもっぽくない言葉の表現で描かれているのが印象的です。「両雄」といった、大人も普段使わないような言葉が次々に登場しますが、もともとは何歳くらいの読者を想定していたのでしょうか。
小学3年生から6年生くらいをイメージしていましたが、実際の読者は小学校1年生~3年生です。ファンの年齢層はさらに下に広がっていて、未就学児のファンも多いです。
――未就学のお子さんに人気が出たのは想定外でしたか?
そうですね。おっしゃる通り難しい漢字もかなり使っていますし、表現もあまり幼くはしていません。低年齢向けに噛み砕くという作り方をもともとしていないんです。
――登場するキャラクターが攻撃を受けて血を流したりなど、迫力のある表現が多い印象もあります。児童書でありながら、マイルドな描写に逃げなかった理由は何でしょうか。
戦って傷を負えば、当然、血も流れます。バトルを描く以上、そこは避けられません。
ただ、図鑑で描いている戦いは、実際の戦いを再現したものではなく、あくまでシミュレーションです。戦いを通して、その動物の特徴も伝えたいという意図があります。
実際の野生動物は、そこまで徹底的に戦うことはありません。捕食はありますが、たとえば虎と熊が死ぬまで戦う、ということはほとんどない。負けそうになれば逃げます。でも図鑑では、最後まで戦わせて勝ち負けをはっきりさせる。そういう構成にしています。
ですから、勝ったとしても、瀕死の重傷を負うこともあります。しかし、次の対戦では完全な状態で復活している。そこは少しファンタジックな設定にしていますね。
ドラゴンのような存在はそもそも架空の生き物ですし、首が取れても再生するといった設定もあります。そうした前提があるからこそ成立している表現かもしれません。
――ほどよくファンタジーを取り入れつつも、あえて幼くしすぎないところが、子どもたちに支持される理由のひとつのようにも感じます。
そうですね。ただ、海外では事情が少し違いまして。子ども向けの作品で血が描かれているのは好ましくない、という文化の国もあり、実際に「血を消してもいいですか」と言われることもあります。その点については各国の判断にお任せしていますね。
「親のため」ではなく「子どものため」に

――児童書を作るときに、親御さんの目線はどの程度気にされていますか?
気にはしていますが、最優先はやはり、「子どもに喜んでもらうこと」です。
小学生向けの本は、「児童書」と「学習参考書」の2つに分かれると思うのですが、個人的には、今はその2つがだいぶ近づいてきていると感じています。
児童書は親御さんにも喜んでもらうために「ちょっと勉強の役にも立ちますよ」という方向に寄ってきている。一方、学習参考書のほうも、ただの教材では子どもたちに読んでもらえないので、エンタメ性を取り入れている。その結果、「児童書」と「学習参考書」が近づいてきていると思うんです。
でも、この2つの本来の目的は違いますよね。学習参考書は理解を深めたり、テストで良い点を取ったりするためのもの。一方で児童書は、まず子どもが純粋に楽しめることが大前提です。親御さんに選んでもらう必要はありますが、子どもに面白いと思ってもらえないと続きません。
「最強王図鑑」も、まずは親御さんの目線より、子どもが面白いと思うかどうかを軸に作りました。結果的に、子どもたちに喜んでもらえたと思っています。
――子ども達にとってのエンターテインメントを追求されたのですね。
当初、ご家庭の方からは、「動物がバチバチ戦っていて、正直自分には、何がそんなに楽しいのか分からない」といった声も多かったです(笑)。
でも、だんだんと、「とにかく子どもがものすごく夢中になっていて嬉しい」「この本をきっかけに本が好きになってくれた」と、あたたかく見守ってくださる方が増えていった印象です。
自分ではそこまで想定していなかったのですが、「ご家庭で親子一緒に読む」ような読まれ方もしており、「この本はコミュニケーションツールなんだな」と思うようになっていきました。
ドリル展開への葛藤も
――「児童書」と「学習参考書」のジャンルが近づいているというお話がありましたが、「最強王」シリーズのドリル展開については、どのように考えた結果なのでしょうか?
正直に言えば、学習参考書という形について、最初は少し迷うな気持ちはありました。「自分の好きな最強王」が、「お勉強の手先」のような形になってしまうと、子どもは嫌がるんじゃないかなと。
ただ、このシリーズを広めていくためには、親御さんにもファンになってもらいたい気持ちもありました、実際、「最強王図鑑でひらがな、カタカナを覚えた」とか、「漢字が読めるようになった」とかいう声をよく聞くようになりました。最強王のイラストがあることで勉強へのモチベーションが上がるのなら、それはひとつの役割を果たしているとも考えられるようになりました。
一般的なキャラクタードリルは、通常の問題集にキャラクターのイラストがカットとして載っているつくりが多いのですが、最強王は自社のIPなので、問題文も含めて最強王らしい世界観を表現することができました。実際、各種のドリルだけでも20万部に達しています。こうしたニーズは確かにあるのだと感じていますね。
木下昌美 (監修), なんばきび (イラスト), 七海ルシア (イラスト)『ドラゴン タッグ最強王図鑑 (最強王図鑑シリーズ)』(Gakken)
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