高学年を疲弊させる「口うるさい親」VS親を心配させる「口ばかりの子」 思春期前のすれ違いの原因は自律神経にあった

吉田美智子

小学5〜6年生になると、子どもは「親に口出しされたくない」と感じ始めます。しかし、大人の目にはまだまだ未熟な部分が目立つ年頃。そのため、つい口出ししてしまい、親子の衝突につながることも少なくありません。

この時期の親子のすれ違いをうまく乗り切るためにはどうしたらいいのでしょうか。
臨床心理士の吉田美智子先生の著書よりご紹介します。

※本稿は、吉田 美智子 (著)『すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する』(高橋書店)より一部抜粋、編集したものです。

5~6年生:今の問題行動を直すより、将来自立できる神経を育む

5〜6年生になると、子どもは「自分のことは自分で決めたい」「口出しされたくない」と感じ始めます。宿題、身支度、友だち付きあいなど、以前は親が声をかけると素直に応じていたことも「うるさい」「わかってる!」と反発するでしょう。

前思春期の子どもは、自分で考えて判断して行動する力が芽生える時期です。

親離れ・自律の準備が進む一方で、考え方や実行力は未熟なため、「口ばかり」「理想と現実のギャップが大きい」「わかっているけどできない」ことが増えます。親からみると、できているならうるさく言わないけれど、できていないから言わずにいられないと悩みます。

放っておけないのは、親の自然な反応で「子どもを守らなきゃ」と自律神経が防衛的に働いているからです。親が「このままでは子どもが困るかも」「失敗させたくない」と思うと、無意識のうちに脳が危険信号を受けとり、交感神経が高ぶります。すると、子どもに対して声が大きくなったり、怖い顔で叱ってしまいやすくなるのです。

しかし、親のその反応は、子どもにとって脅威のサインになるため、子どもの神経は「責められた」「領域を侵された」と感じ、危険から身を守るために闘うか逃げるかを本能的に判断する闘争・逃走反応を起こします。

1〜2年前までは、親の声かけが安心をもたらしていたのに、今は「干渉=脅威」だと感じられてしまうのです。

このすれ違いを防ぐには、まず親が自分の状態に気づくことが大切です。

「イライラしている」「口出ししたくなっている」と感じたら、ひと呼吸おきましょう。深呼吸すると、副交感神経が刺激されて身体が落ち着きます。そして、正しいことを教えてあげなくてはとプレッシャーを感じている自分から、「この子は今、何を感じているんだろう?」と視点を切り替えてみてください。

「どうしてできないの?」「こうするんだよ」から、「困ってることある?」「手伝えることある?」といった声かけに変わると、親のなかにも「子どもが思っていることを知りたい」という気持ちが生まれて、つながりと安心の神経である腹側迷走神経が働き始めます。すると、子どもも安心して冷静さを取り戻せるのです。

しかし、子どもの主張を尊重してまかせると、生活がだらしなくなったり、勉強が疎かになったりするかもしれません。けれど、それも自律への大切な練習の一部です。自分で自分を律する力は、一朝一夕には身につかず、試行錯誤の積み重ねのなかで少しずつ育っていきます。この自律は、こころの成熟であると同時に、自律神経が安定していくプロセスでもあります。あせらず1〜2年という長い目で見守ることが、子どもの自律を健やかに育てていきます。

子どもを見守るコツは、「絶対にゆずれない点」と「大目に見る点」を整理すること。 たとえば、「就寝時間だけは守ってほしい」「それ以外の過ごし方は口出ししない」と決めておくと、いちいち注意せずにすみます。

もし、看過できない様子が見られたら、お互いが落ち着いて話せるタイミングで「最近少し心配なんだけど」とおだやかに伝えましょう。親が子どものペースを尊重しようとしていることが子どもに伝わり、自然と聞く耳を持ちやすくなります。

きちんと生活できていないのに注意しないなんて、甘やかしじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかし、こうした関わりこそ、子どもの望む距離感にあわせた、安心とつながりをつくる腹側迷走神経を通じたコミュニケーションです。

親が落ち着いて関わると、子どもの神経は安心を回復し、信頼が戻ります。すると、こころに少しずつ余裕が生まれ、親の助言に耳を傾けたり、アドバイスを実行してみようという意欲が生まれやすくなるのです。

逆に、子どもが嫌がっているのに介入を続けると、子どもは慢性的にイライラする過覚醒や、無気力状態になる低覚醒に陥りやすくなります。家庭が安心できる場ではなくなり、家でも学校でも交感神経がオンのまま心身が休まりません。反抗が強まったり、睡眠リズムが乱れたり、頭痛・腹痛などの身体症状がでることもあります。

つまり、親の「ちゃんとさせたい」という思いが強すぎると、結果的に子どもの神経やメンタルを疲弊させてしまうのです。

前思春期の子育ては、現状を正しくすることよりも、これから自律して生きていくための神経の力を育てる時期です。完璧を求めすぎず、今は練習中と信じて見守ると、子どもの自律神経を健やかに育てることができます。

すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する

吉田 美智子 (著)『すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する』(高橋書店)

「すぐ泣いて手がつけられない」「何度叱っても効果なし」「落ち着きがない」、じつは、これらは子どもの「わがまま」や「性格」が原因ではありません。
自律神経が未発達なため、脳が危険モードに入っているだけなのです。

【本書は、こんなお悩みのある保護者におすすめです】
・子どものかんしゃくが頻繁で困っている
・イライラ怒りっぽい子どもの反応にびくびくしながら接している
・落ち着きがなく、うちの子だけウロウロしている
・学校、保育園、幼稚園に行きしぶる
・引っ込み思案で挑戦できない
・人前に立って発表するのが苦手

臨床心理士・公認心理師の著者は、18年間で2000組以上の親子のお悩みに向きってきました。
そして、上記のようなお悩みの解決方法として行き着いたのが、自律神経を育む子育てです。
本書は、自律神経の最新理論である「ポリヴェーガル理論」をベースに、子育てのお悩みを解きほぐしていきます。