小学生は「学校ストレス」でゲーム・動画依存に? 無理に取り上げず依存を減らす親のかかわり方

吉田美智子

子どもがゲームや動画に没頭する姿を見ると、親は「このままで大丈夫?」と不安になり、つい厳しく注意してしまいがちです。
しかし、子どもにとってその時間は、学校での疲れを癒し、リラックスする大切なひとときでもあります。

無理に取り上げずに依存を減らすための親の関わり方について、臨床心理士の吉田美智子先生の著書からご紹介します。

※本稿は、吉田 美智子 (著)『すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する』(高橋書店)より一部抜粋、編集したものです。

ゲーム依存は、疲れをやわらげてリラックスしようとする試み

小学生になると、学校では常に緊張やプレッシャーのなかで過ごしています。友だちとの関係、テストや行事での評価、集団行動などにより、日中はずっと交感神経が優位な状態です。

家に帰ると、その反動でエネルギーを落として、休息をつくる背側迷走神経が働き「何もしたくない」「疲れた」と感じやすくなります。そのような状態で、ゲームやYouTubeに没頭するのは、一時的に気分を上げてくれる刺激がほしいからです。

デジタル刺激は脳にドーパミンという快楽ホルモンを分泌させ、一時的に「楽しい」「もっとやりたい」と感じさせます。そのため、現実のストレスを忘れさせてくれる擬似的な安心の役割を果たします。しかし、実際には交感神経をさらに高ぶらせ、休息することがますます難しくなるのです。

ゲームや動画に夢中な子どもを見て、親は「このままではいけない」と不安になり、つい口うるさく注意したり、感情的に叱ってしまうでしょう。けれども、その親の態度が子どもにとっては新たな刺激になってしまいます。

注意されると「自分のペースでやろうとしているのに一方的に否定された」と感じ、身を守るために闘うか逃げるかを本能的に判断する闘争・逃走反応が生じます。そのストレスをやわらげるために、子どもはさらにデジタルの世界に逃げ込み、親はますますイライラする、そんな悪循環が生まれてしまうのです。

ここで大切なのは、反射的にゲームや動画を注意するのではなく、子どもの心理と自律神経の状態を知っておくこと。これを理解できると、親に冷静さが戻ります。まずは、親の自律神経を落ち着かせることが先決です。

デジタル依存は望ましいものではありませんが、学校での緊張や疲れをやわらげ、子どもなりにリラックスしようとする自己調整の試みです。

大人も同じように、SNSを見たり甘いものを食べたりして疲れを癒そうとすることがあますよね。それをやめるには、ストレスやプレッシャーを減らし、睡眠や食事を整え、心地よい活動や信頼できる人との関わりを取り戻すことが必要です。

子どももまったく同じです。まず、日常生活のストレスやプレッシャーが強くないかを見直して、過剰であれば減らしていきましょう。

そして、「疲れたね」「今日もがんばったね」とおだやかにねぎらいの声をかけたり、落ち着いたトーンで声をかけます。子どもの小さな前進を見つけたら、率直に「できたね」と認めてあげてください。

親が批判せずに支えようとしていることが伝わると、親の安心とつながりをつくる腹側迷走神経に子どもが同調し、おだやかなやりとりを少しずつ取り戻していきます。


次に、子どもが落ち着いているときに、親子でデジタル依存を改善するための話しあいを提案してみてください。自律神経が整い始めていたら、子どもからも時間を制限するとかタイマーを使うといった改善アイデアがでてきます。

ただ、話しあいを提案した途端、子どもがイライラして自律神経の乱れが見られるようなら、まだストレスやプレッシャーが大きいのかもしれません。まずは睡眠や食事、日々の関わり方など、生活の土台を見直してみましょう。

そして、子どもからでてきた改善策が、親の理想とギャップがあったとしても、自発的に変えようとする姿勢を評価してサポートしましょう。すると、次第にデジタル機器に頼らずに、遊んだり笑ったりする時間が持てるようになります。さらには、デジタル機器以外の何かに没入する場面も増えてくるでしょう。

禁止や脅しではなく、安心の共有こそが悪循環を断つ鍵です。 そのためにも、まずは親自身が落ち着くことはとても大切です。

イラスト/細川貂々
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すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する

吉田 美智子 (著)『すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する』(高橋書店)

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