「子どもを叱る」が自然に減っていく”親の言葉の選び方”
注目度が急騰している須賀義一さんの「叱らなくていい子育て」。須賀氏は保育園にて10年間勤務するも、子どもの誕生を機に退職し、主夫業の傍ら既成概念にとらわれない子育ての仕方を模索し、提案。その子育て論が多くの人に支持されています。
ここでは、須賀氏の著書『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』より、「叱らなくていい子育て」に触れた一節を紹介する。
※本稿は須賀義一著『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(PHP文庫)より一部抜粋・編集したものです。
子どもを叱らなくていい子育てとは?
「叱らなくていい子育て」の仕方とはなんでしょうか?
さきほど述べたように、いまの子育ての方法は子どもを叱りすぎになっていると思います。叱らないとしても、否定語、ダメ出しの連続になっています。
それから、「早く」など、子どもを支配する言葉も多いようです。こういった当たり前に使われている言葉ですが、子どもには心地よくありません。
些細(ささい)なことでもこれらの否定的な言葉を言われ続けていると、そういった子どもは大人の言葉をスルーする習慣がついてしまいます。そしてそもそも大人の言葉、ひいては大人の働きかけをあまり信頼しなくなってしまいます。
例えば、「ダメッ!」って言葉、よく使う人は一日何回くらい使っているでしょうか? へたをすると、これを職場の上司から大人が言われ続けたらまずノイローゼ間違いなし、というくらい使う人も、少なからずいると思います。
つまり、大人の都合のいいようにしつけようといった意図のもとに、子どもの行動にいちいちダメ出しをしていくと、大人の言うことを結果的には聞かなくなるので、かえって大人の気に障る行動が増えてしまうのです。
基本的に子どもは親を信頼しています。しかし、ダメ出しなどの規制、「早くして」などの指示といった支配的な関わりをやたらと多用していると、その大人への信頼感がだんだんと損なわれていって、子どもは「いうことを聞かない子」となってしまいます。
「子どもから大人への信頼感」というのは、子育てにおいて最良のツールなのです。それを大人が自分から損なってしまっては、子育ては大変なばかりになってしまいます。
心地よい交流を重ねれば気持ちが通じる
では、どうすればいいでしょうか。
子どもには、自分を保護してくれる大人の気持ちを鋭敏に察する感覚があります。
「叱らなくていい子育て」のためには、この感覚を伸ばしていくといいでしょう。
子どもが困ること、嫌なことをしたら「そういうことしたらママ困るな」「悲しいな」と、相手がどんなに小さい子であっても、きちんと言葉で伝えましょう。
そして、口先だけでなく本当に「困る」「悲しい」という気持ちを表情や態度でも示しましょう。普段からこういう関わりを積み重ねていくと、そもそも「困ること」「悲しませること」をしない子になります。
そのためには「困る」などのネガティブな感情だけでなく、「楽しいね」「うれしいね」などのプラスの感情も伝え、共感し合い、心のパイプをつなげていくのです。順序としてはこちらが先ですね。
たくさんの心地よい心の交流をその大人と築いていくと、その同じパイプを伝って「それは困る」「してほしくない」といった気持ちが通じるようになるからです。
「楽しい」「うれしい」「悲しい」「困った」「きれいだね」「おいしいね」「気持ちいいね」など、こういった言葉を普段から使って共感する経験をたくさん増やしていきます。
僕はこういう言葉を「感情の言葉」「心の言葉」と呼んでいます。そして親子の間に感情の共感性を培(つちか)い、伸ばしていくことは、「心のパイプをつくる」ことだと考えています。
では、具体的にはどんなことが「叱らなくていい子育て」なのか、身近なケースで紹介しましょう。