せかしても意味がありません 子どもの「自分でやる力」を伸ばそう!

清水克彦
2023.10.13 11:04 2023.02.13 17:55

母親と娘

自ら考え、行動する力をつけることは、これからの社会を生き抜くために必要なこと。愛するわが子に対しても同じ。そして、その力を育てることが結果的に、お母さんが抱える不安を軽くするのです。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2017年4月号より一部抜粋・編集したものです。

【著者紹介】清水克彦(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師)
1962年、愛媛県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。京都大学大学院博士課程在学中。文化放送の報道デスクを務めながら、執筆や講演を行なう。著書に、最新刊『男の子が力強く育つママの習慣』(PHP研究所)など多数。

主体性を育てることが大事

親が子どもにすべきこととして、食事を与える(滋養)、きちんとした日常生活を送らせる(習慣づけ)、そして、学びの機会を与える(支援)という3つが挙げられます。

しかし、これだけでは不十分です。子どもを自立させ、社会で活躍できる人間へと育てるには、自分の頭で考え行動できる子にするという最大のミッションが残されています。

先の話になりますが、大学入試改革で、現在のセンター試験を廃止し、2020年に新テストへと移行するのは、「自分でやる力」、言い換えれば主体性を育てたいという狙いがあるからです。

ただ、この「自分でやる力」を伸ばしていくことは難しくはありません。詳しくは後で紹介しますが、お母さんが日頃、思ったように動いてくれない子どもに対してやってしまいがちなこと、発してしまいがちな「早くしなさい!」という言葉を少し改めるだけでOKです。

わが子のために今できることを、始めてみましょう。

小学生までに自分でできるようにさせたい5つのこと

人としての基本、また生きていくための基本を、今のうちに身につけさせましょう。

1. 寝早起き

日中、適度な運動をさせ、夕食の時間を遅くしないなどのほか、就寝前に、「起きたら○○をしようね」など、翌朝以降に起きる楽しいことをイメージさせておきます。また、きちんと起床できたら、「えらいね」と声をかけ、「いいお天気よ」「雨だけど○○の花がきれいに咲いているよ」など、朝早く起きると気持ちがいいという感覚を植えつけましょう。

2. 挨拶

総称して”おおいた弁”と呼んでいますが、お母さんから子どもに明るく大きな声で、「おはよう」「おかえり」「いただきます」「いってらっしゃい」「ただいま」といった声かけをしましょう。挨拶は対人コミュニケーションの基本。親が挨拶上手であれば、子どもも率先して挨拶をする子に育っていきます。

3. お手伝い

お母さんやお父さんとの共同作業は、協調性や創意工夫する力を育てる貴重な場面です。最初はうまくできなくて当然なので、「早く!」や「どうしてできないの?」とせめるのはNG。

子どもが手伝おうとしてくれている気持ちに「ありがとう」と感謝し、ある程度任せることがポイント。「こうすればもっとよくなるよ」「○○してくれるとうれしいな」といった言葉で、子どもの気持ちを乗せることも大切です。

4. 片づけと着替え

脱いだ靴をそろえる、遊んだおもちゃを元の場所にしまうなど基本的なことを徹底させます。「片づけなさい!」では動かなくても、「これはどこに片づけるんだっけ?」と疑問形にすれば効果大。

雑でも片づけができればほめてあげてください。着替えも同じで、子どもに任せてみれば、気温や場所に合わせ、自分で服を選ぶようになります。

5. ルール作り

就学前あたりの子どもになると、お母さんと一緒に「遊びは何時まで」「何時には寝る」といったルールを決めてもいい年頃。その場合、時間などは子ども自身に決めさせます。ルールを破ってしまった場合、頭ごなしに叱るのではなく、「誰が決めたのかな?」と質問し、子どもに「自分で決めたのだから」と考えさせるようにもっていきましょう。

 

子どもの「自分でやる力」を伸ばすために大切なこと

やる気や自信を育てるのは、親の日々のちょっとした声かけや関わりです。

○先回りして何でもしない

お母さんが何かと手を貸したり、先回りをしてフォローしないことです。必要なのは、待つことと子どもに任せることです。

何ごとも、お母さんがやったほうが早く、ストレスも感じなくて済むかもしれません。しかし、焦らずゆっくり見守ることが、子どもが1人でできるようになる近道です。

久しぶりに会う親戚から年齢や身長などを子どもが聞かれたとき、あなたが子どもより先に答えたりしていませんか?

家族で入ったファミリーレストランで、子どもが注文を聞かれているのに親が代わりに答えたりするのも、子どもの年齢が就学に近づけば、そろそろやめにしましょう。子どもが答えるまで待つことを大切にしてください。

○自尊感情をもたせる

わが国の子どもたちは、欧米諸国や中国、韓国などと比べ、自尊感情が乏しいと言われています。それは、幼児期から「早くしなさい」「本当に遅いわね」「どうしてできないの」などと言われ続けてきたせいかもしれません。

思ったように動いてくれない子どもの行動を叱るのではなく、「○○してくれるとうれしいな」「○○するともっと楽しくなるよ」といった言葉に改め、少しでも進歩が見られれば、そのことを「よくできたね」「さすがはお母さんの子どもだね」と評価するように変えてみましょう。

○得意なことを応援する 

子どもが興味を示したことは「自分でやる力」の原石です。その際、「そんなことより早く○○して」と言いたくなるのをがまんし、納得するまでやらせてみるのも手です。

子どもには、「競争したがる」「挑戦したがる」「まねをしたがる」「認めてもらいたがる」といった特徴があります。それらを利用し、「すごいね」などと自信を植えつけるような言葉で応援しましょう。

幼児期に「これが得意」と思う感覚や達成感が得られれば、お母さんの「早く!」がなくても主体的に行動する子、確固とした自分軸をもつ子へと成長していきます。

清水克彦

清水克彦

1962年、愛媛県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。京都大学大学院博士課程在学中。文化放送の報道デスクを務めながら、執筆や講演を行なう。著書に、最新刊『男の子が力強く育つママの習慣』(PHP研究所)など多数。