子どものためを思って言っているつもりでも、その言葉が、子どもにまったく届かないこともあります。親はどのように接すればよいのでしょうか。

 

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あなたの言葉、ちゃんと届いていますか?成長に合わせた「伝え方」

 

「まったくもう。言うことを聞かないんだから!」「何度言ったらわかるの!?」......。言うことを聞かないわが子につい感情的になり、ガミガミと叱ってしまうお母さんも多いのではないでしょうか。

そもそも、子どもはなぜ言うことを聞かないのでしょう。その答えは簡単です。「子どもだから」です。

とくに3歳くらいの子は、コミュニケーション能力が未熟なのに加え、判断力が自己中心的で、相手の都合や立場を理解することができません。お母さんが「ダメ!」と言った"その瞬間"はわかりますが、「なぜダメなのか」「自分はどうすればよいのか」などを考える力が、まだまだ不足しているのです。そんなわが子に、「言うことを聞かせよう」と思うことに無理があるのです。

 

・"ブレーキ"をかけすぎない

 

子どもは3歳くらいから、確固とした自分の世界をもち、「このオモチャで遊びたい!」「あの山に登りたい!」など、興味のあることに対して"アクセル"を踏み始めます。しかし、"ブレーキ"の存在にはまだ気づきません。親は子どもの成長に合わせ"暴走"しないように見守りながら、"ブレーキ"のかけ方を少しずつ教えていくことが必要なのです。ただ、「言うことを聞かせよう」と"ブレーキ"をかけ過ぎると、自ら"アクセル"を踏もうとしなくなり、その子らしさが失われてしまいます。

子どもの年齢や発達に合わせた適切な関わりや言葉がけを心がけ、"アクセル"と"ブレーキ"をバランスよく使えるように導いていきましょう。

 

・ルールをつくり過ぎないようにしましょう

 

「おやつは4時を過ぎたら食べさせない」「出かける前にオモチャは必ず片づけさせる」など、ルールをつくり過ぎてしまうと要求が高くなり、叱るばかりになって子どもが萎縮してしまいます。家庭では、「食事は一緒に食べる」「夜は9時に寝る」など、衣食住に関する基本ルールがいくつかあれば、それでよいのです。指示ばかりでなく子どもが自らやろうとしたことを認め、ほめることを心がけましょう。

 

「言わなくてもできる子」にするための年齢別の関わり方

 

"子どもファースト"が大前提ですが、時と場合に応じて"親の都合"で言うことを聞かせてもいいのです。そこに罪悪感をもち過ぎる必要はありません。

 

言わなくてもできる子にするために大切なこと。それは、日常のさまざまな場面で、「この子に今、どうさせることが必要なのか」を考えながら、常に"子どもファースト"で言葉をかけ、関わることです。しかし、親だって人間です。「これから訪れる親戚のお宅はしつけに厳しいから、なるべく騒がないように子どもに言い聞かせよう」など、時と場合に応じて"親の都合"で言葉をかけ、言うことを聞かせても問題ありません。

 

・成長とともに子どもなりに理解していく

 

子どもは成長していく過程で、少しずつ周りが見えるようになっていきます。親の様子や言葉から、「お母さんは、親戚のおじちゃんのうちに行くときは緊張するんだな」などと子どもなりに理解し、場面に応じたふるまいができるようになっていくものです。「どうしてうちの子は言うことを聞かないのだろう」と悩む前に、親自身にも自分本位の面があることを自覚した上で、子どもの良い面と悪い面、両方を受けとめていきましょう。

ここからは、3、7、10歳といった年齢別の心の発達を見ながら、子どもとどう関わっていけばいいのかを考えます。

 

3、7、10歳共通! 言うことを聞かないときのNG対応

 

まず、年齢に関係なく、子どもを傷つけて、自信をなくさせてしまう親の言葉がけを押さえておきましょう。

 

・過去をむし返す

「まったくもう! あなたは昨日もおとといも言うことを聞かなかったわね!」など、過去を振り返って責め立てるのはNG。終わってしまったことをくどくどむし返すのは何の意味もなく、子どもの心の中には、いやな気持ち、悲しい気持ちしか残りません。

 

・周りと比べる

子どもは、友だちやきょうだいと自分を比べながら「自分はどういう人間か」という自己概念を育てていきます。「○○ちゃんはちゃんと言うことを聞けるのに、どうしてあなたはできないの?」と比べられると、マイナスの自己イメージができ、自己肯定感をもちにくくなります。

 

・未来をなげく

こんなに言うことを聞けないと......「将来ロクな大人にならないわよ!」「野球選手になんてなれないわよ!」などと、子どもの未来を否定するような言葉は、子どもの生きていく希望を奪ってしまいます。言うことを聞かない「今の」「目の前の」行動だけに目を向けて叱りましょう。

 

 

3歳...なんでも自分中心に判断。注意しても同じ行動を何度もくり返す

 

個人差はありますが、自我が芽ばえ始めて「○○はイヤ」「△△がやりたい」などの欲求が出てくるのに加え、なんでも自分中心に判断し、相手の都合や立場を想像することができません。危ないことをして「ダメよ!」と注意しても、親の手をはらいのけてやり続けることも多いものです。親から見ると"とくに言うことを聞かない時期"と言えるでしょう。

また、この時期の子どもは、記憶力が未熟です。一度注意した行動が、その瞬間は改善されても少し時間が経ったり場所が変わったりすると、注意されたこと自体を忘れてしまい、同じ行動を何度もくり返すこともあります。友だちとの関わりの中で、「取った」「取られた」からケンカが起こりやすくなるのも、この時期です。

 

・伝えるときのポイント:「ダメ」の理由をさりげなく根気よく伝える

「ダメ!」「やめなさい!」と叱るだけでなく、「○○だったから注意したのよ」「あなたが△△して悲しいわ」など、その理由や親の気持ちを短い言葉でさりげなく、しかし、根気よく伝えましょう。友だちのオモチャを奪ってしまったら「それで遊びたかったのね」など、子どもの気持ちに共感してから注意します。

 

7歳...学校生活の中でルールを重んじるようになり、言葉が届きやすくなる

 

小学校という新しい集団生活が始まり、先生や友だちと関わる中で、ルールを重んじるようになってきます。この時期は、3歳頃とはうってかわって"言うことを素直に聞く時期"。「決まりは絶対に守る」といった正義感にあふれ、友だちのちょっとしたルール違反を受け流すことができず、すぐに先生に言いつけるといった行動を取ることもあります。

一方、「帰宅後、宿題もせず、すぐ遊びに行ってしまいます」という声を聞きますが、それくらいエネルギーにあふれる年齢でもあります。宿題をし忘れたら先生に叱られますが、"痛い思い"をすることで「今日は遊ぶ前に宿題を1つ終わらせよう」など、子どもなりに改善策を考えるようになるもの。自分で転び、立ち上がる経験を重ねることが必要な時期です。

 

・伝えるときのポイント:なぜ「ダメ」なのかを自分で考えさせる

ルール至上主義のこの時期、なんでも言うことを聞くからと「〇〇はダメ」「△△もダメ」と禁止ばかりしていると、子どもの伸びる芽をつんでしまいます。なるべくていねいな言葉で「なぜ〇〇がいけないのか」を子どもに考えさせ、その上で親の考えもしっかり伝えることを心がけましょう。

 

10歳...相手との関係を把握し、対等な立場で話し合いができるように

 

対人関係が広がり、論理的な思考ができるようになってくる時期です。自分なりに考えたり、相手との相互関係の中でお互いの意見を交換しながら話し合うことで、「一度決まったことでも、皆で話し合って納得すれば変えていいんだ」など、折り合いをつけることができるようになります。

家庭でも、親子で「なぜ〇〇を守らなくてはいけないのか」などの話し合いができるようになりますが、反抗期が始まり、自分のことをあまり話さなくなるのもこの時期。親はつい、子どもを放っておきがちになります。ようやく親子が対等に近い形で向き合えるようになったのですから、折にふれ「今日は学校で何が楽しかった?」など、日頃から意識して子どもと会話を重ねましょう。

 

・伝えるときのポイント...親自身のことを語り、時には人生相談を

してほしいことを一方的に伝えるのではなく、「お母さんは子どもの頃、こんな失敗をして恥ずかしかったのよ」など、自分の体験談を話すと子どもも共感し、親の話に耳を傾けるようになります。あなた自身の悩みを相談し、子どもの考えを聞く中で、話し合いへとつなげていくのもよいでしょう。

 

言うことを聞かないわが子を"楽しむ"くらいのゆとりをもって

 

思うようにいかないのが子育て。

それなら、うまくいかないことを楽しんでしまいましょう。

 

ひと昔前、日本が貧しい時代は親が朝から晩まで必死に働き、子どもはそんな姿を見ながら、ひたすら親のあとをついていったものでした。あらゆる情報やモノがあふれる豊かな時代となった今、多くのお母さんは、情報に振り回され、子どもに少し目を向け過ぎているように思います。もしかしたら「子どもが言うことを聞かない」と思うのは、そのせいかもしれません。 

子どもは、着地したあと、どの方向に飛ぶのかわからない「ラグビーボール」のようなもの。お母さんが子どもによかれと思って情報やルールを与えても、期待通りの言動が返ってくることは、まず望めないでしょう。でも、それが子育ての面白さであり、醍醐味なのではないでしょうか。言うことを聞かないわが子の言動を〝楽しむ〟くらいのゆとりをもち、お子さんとおおらかに関わっていけたらいいですね。

 

・周りの手を借りながら自分の人生を生きて

 

お母さんが1人で「言うことを聞かせよう」と思えば思うほど、ますます子どもに目が向き過ぎてしまうので、お父さんはもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、園や学校、習い事の先生など、あなたの代わりにわが子を受けとめてくれる人をつくることも大切です。そして、親は子どもに自分の人生を背負わせることなく、自分自身の人生を楽しみ一生懸命に生きていく。そうすれば、子どもは自然と自立していき、"言わなくてもできる子"に成長していくはずです。

 

【著者紹介】

大日向雅美(おおひなた・まさみ)

恵泉女学園大学学長。 NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事。子育てひろば「あい・ぽーと」施設長。学術博士。母親の育児ストレスや育児不安の研究に加え、地域の子育て・家族支援者養成にも取り組む。著書に、『おひさまのようなママでいて』(幻冬舎)など多数。

 

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年月8月号の特集は<「言うことを聞かない子」が伝え方ひとつで変わる!>です。

 

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