子どもに対し、つい感情的に怒ったり、口出ししたりしてしまうことは誰にでもあるもの。でも、それが頻繁だと、子どもから大事なものを奪ってしまいます。


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子どもは1人の人間という自覚を

よその子にはガミガミ言わないのに、我が子だからこそ良かれと思ってつい口やかましくなってしまう。
「子どもがどんな大人になるのかは親の責任、いい子に育てなくちゃ、だからいいママにならなくちゃ」というプレッシャーに、がんじがらめになっているのかもしれませんね。
でも、こうして理想を追い求めていると、ガミガミママになってしまいます。ガミガミ言うことで、親の顔色ばかり気にしたり、親の指示がないと動けない子になったり、常に親子ともにストレスを感じていたら、かえってよくない結果になってしまうかもしれません。
子どもはお腹に宿った時点で親の所有物ではなく、1人の人間です。叱る回数が増え、口出しや手出しが過度になると、子どもの自主性、自信を奪ってしまうことになりかねないのです。

ガミガミが子どもから奪うもの

親が常日頃、子どもに口うるさく言っていると、こんな子になってしまう可能性があります。

(1)自分で考えなくなる
「ヘリコプターペアレンツ」という言葉を知っていますか? 子どもが失敗しないように頭上で旋回して監視する過保護・過干渉の親を皮肉った言葉です。
登校前に「あれ持った? これ持った?」と何度も確認し、ガミガミ注意する。筆箱を忘れたときは「困っているのではないか」と思い、学校に届けてしまう。すると子どもは、忘れても「ママが届けてくれるから大丈夫」と思うようになります。
反対に届けなければ、

●忘れ物に気をつけるようになる。
●ピンチに陥り「先生、鉛筆貸してください」とSOSを出せるようになる。
●代用品を何とか自分で考える(自分が忘れ物魔だと自覚して、置き傘のように置き筆記用具まで準備する知恵がつく)。
●「私(僕)の貸してあげる」と親切にされ、「友だちを大切にしよう」と思う。この体験で「自分も誰かを助けてあげよう」と思う。成長のチャンスです。

また、ケンカになる前から「仲良く遊ぶのよ」と釘を刺すのも、社会性やコミュニケーション力を伸ばす絶好の機会を奪うことになります。

(2)短所を見つけるのが得意になる
ガミガミの内容は、たいてい子どもができていないことです。
たとえば、玩具を片づけているときもあるのに、親は無言。でも散らかしているときは「なんで片づけないの」。食事の好き嫌いをしたとき、食べたものもあるのに、残したものだけにスポットを当てて、つい叱ってしまう。
親って子どものできていない部分を見つける天才ですね。
でも、欠点ばかりを指摘されたら、自信がなくなってしまいます。将来、自身に対して低い自己評価しかできない大人になってしまうかもしれません。叱るのと同じ量だけできていることを認めましょう。また、欠点は見方を変えると長所です。

× 落ち着きがない→〇 好奇心旺盛
× だらしがない→〇 神経質ではない・おおらか
× おとなしい→〇 協調性がある
× グズ、のろま→〇 丁寧・慎重に生きている
× 偏食→〇 舌が繊細で味がわかる

目先のことだけにスポットを当てると短所に見えることも、将来、強みになります。

(3)言葉が育たなくなる
4歳を過ぎているのに「ほら、そろそろ、トイレに行きなさい!」と、子どもが行動する前に先走って注意する。「ママ、おしっこ!」「ママ、ジュース!」につい条件反射で行動してしまう。
こうなると、子どもはきちんと話さなくても周りの人間は察してくれると思うようになります。そして、幼稚園や学校でも先生に、「先生、おしっこ!」と叫ぶようになります。
園の先生は何を言わんとしているかわかっても、あえて「先生はおしっこではないですよ。おしっこがどうしたのですか?」と答えるようにしています。すると、「先生、トイレに行ってもいいですか」と言えるようになります。このようにすることで、相手に伝わるきちんとした文章で話せるようになり、言葉が増えていくのです。
子どもが行動する前に、こちらの都合でガミガミと注意するのをやめましょう。そして、「ママ、ジュース!」と言われても、「ママはジュースじゃないわよ。ジュースがどうしたの?」と聞き返し、「ジュースが飲みたい」と話すように教えていきましょう。

(4)自己肯定感がなくなる
子どもが生まれた瞬間は、「元気で生きていればそれでいい」と高望みはしなかったのに、"比べる病"に冒されて「あれもできない、これも不足だ」とないものねだりをしてしまいます。
親からダメ出しされて、子どもは「よし! 頑張ろう」とは残念ながらなりません。
それどころか、一番理解してもらいたい親から、「どうしてみんなはできるのに、あなたはできないの」と言葉をかけ続けられることにより、「どうせ私(僕)はダメなんだ」と自己否定するようになってしまいます。
こうなると、子ども自身が"自分を受け入れられない、自分を好きになれない"状態になります。
子ども自身にも「常に人より優れていなくてはならない」という価値観が沁みつき、自己肯定感が低く、何を手に入れても満足できず、幸せを感じられない子になってしまうのです。
長い人生では、さまざまな試練が降りかかってきます。でも、「自分は大丈夫」という自己肯定感さえあれば、あきらめずに乗り越えることができます。

ガミガミ言わないために大切なこと

あなたは子どもの小さな成長に、ちゃんと気づけていますか?

「いい子に育てたい」という思いで、周りの子やきょうだいと比較する"比べる病"に冒され、「あれもできない、これも不足だ」と感じると、どうしても叱る回数が多くなってしまいます。
「個性を大事にしましょう」と言われつつ、実際には平均体重、平均身長にはじまり、小学校に入学すればクラスの平均点と比べてどうかと評価する。また、今も平均年収、平均寿命など周りと比べられながら親自身も生きてきているので、そうなるのも仕方がないのかもしれませんね。

でも、我が子を他の子と比べると、成長は見えてきません。他の子と比べるための物差しは捨てて、我が子の過去と今を比べましょう。過去とは昨日と今日、1週間前と今、半年前と今、2年前と今でも構いません。たとえば、

●落ち着きがない子でも、半年前は病院の待合室でじっと座っていることができなかったけれども、今は5分くらいは座っていられる。
●偏食の子でも、赤ちゃんの頃はミルクしか飲んでいなかったのに、今は種類は少ないが、いろいろなものを食べている。
●昨日は弟の玩具を奪って泣かせていたが、今日は自分のお気に入りの玩具を貸してあげている。
●半年前は使った玩具を一切片づけなかったけれど、今は半分くらいは自分で片づけている。

などです。そして、それをちゃんと口にして、「1人で片づけられるようになって頑張っているね」などとほめましょう。子どもはダメ出しされるより意欲が出て、親の望んでいる行動をきっとしてくれます。

過度な要求をしない

あなたは何年生きていますか?
子どもはこの世に生を受けて、たった数年です。要求が過度にならないようにしましょう。親は、子どもを1人の人格をもった人間として尊重し、人生の先輩として、ガミガミ言うのではなく「教える」姿勢をもちましょう。

●他の子と比べず、我が子の今と過去を比べる
●ダメ出しせずに、子どもの小さな成長をほめる
●子どもを尊重し、先輩として「教える」姿勢をもつ




「PHPのびのび子育て」10月号より


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本記事は、「PHPのびのび子育て」2020年10月号特集【ガミガミをやめれば子どもは変わる!】より、一部を抜粋編集したものです。

【著者紹介】
立石美津子(たていしみつこ)
子育て本著者・講演家。聖心女子大学卒業。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、20年間、学習塾を経営。現在は執筆や講演を中心に活動。自閉症児の母。著書に、『1人でできる子になる「テキトー母さん」流 子育てのコツ』(日本実業出版社)など多数。