子どもへのイライラや怒りをコントロールするコツ

榎本博明
2023.11.06 15:31 2023.02.01 16:20

怒りの感情を引き離す「記述法」

母親と男の子
次に紹介するのは、「記述法」です。ナレーション法は、怒りが込み上げて爆発する危険を感じたときに用いる方法ですが、記述法は、腹が立ったストレスフルな出来事を思い出しながら、自分の怒りの感情をその出来事から引き離す方法として用います。

たとえば、寝る前のちょっとした空き時間に、ひどく腹が立った出来事を思い出しながら紙に書き出します。こんなことがあったという出来事の簡単な記述のあとに、それによって喚起された腹立たしい思いを記述します。

「せっかく子どもが好きなハンバーグをつくってあげたのに、おやつを食べすぎたせいで残したから、ものすごく腹が立った」

「何度注意してもゲームをやめないからゲーム機を取り上げたら、口汚くののしって、ほんとにムカついた」

「忙しいときに、ジュースの入ったコップを倒したり、部屋を走り何って花瓶を倒したりするから、つい腹が立って、怒鳴るだけでなく手が出てしまった」

書くことによって、怒りの感情は「文字」という形に客観化されます。それを改めて読み返すと、それほどムキになって怒るほどのことでもなかったと思えてきます。冷静になってみると、怒りすぎて子どもがかわいそうだったと思えてくることもあります。

このような記述を、ときどき時間に余裕のあるときにやってみると、次第に似たようなことが起こっても、これまでのようにムキにならずに冷静に対処できるようになっていくから不思議です。

榎本博明

榎本博明

1955年生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。主な著書に、『伸びる子どもは○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『教育現場は困ってる』(平凡社新書)、『〈自分らしさ〉って何だろう?』『「さみしさ」の力』(以上、ちくまプリマ―新書)『「やさしさ」過剰社会』(PHP新書)などがある。

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