子どもに何度言ってもわからないのはなぜ?
「何度言ったらわかるの!」「何度も同じこと言わせないでよ!」こんな叱り方をしたことがありませんか?でも考えてみてください。一度叱っただけですむのなら、育児って、こんなラクなものはありません。何度も何度も注意し、叱ってやっとできるようになるのが子どもです。
私たち大人だって同じではないでしょうか。何度も同じことを注意されて、やっとできるようになったという経験はないですか?
育児には、根気と忍耐、待つことが必要です。 何度注意しても、言うことを聞かないと思ったら、子どもを叱る前に、ご自分の叱り方がどうだったのか考えてみましょう。
※本記事は『お母さんの「叱りすぎ」がピタッ! ととまる本』(PHP研究所)より一部を抜粋編集したものです。
波多野ミキ(はたの・みき/波多野ファミリスクール副理事長・カウンセラー)
1934年生まれ。早稲田大学文学部仏文専修、東洋大学文学部教育学科卒業。東京家庭裁判所家事調停委員を20年間務める。現在、財団法人波多野ファミリースクール理事長 同カウンセラー。「母親は子どもにとって最初の先生」であるという立場からの、子育て しつけを提唱。波多野ファミリースクールで、お母さんの子育ての相談も行っている。
理由1:意味が理解できていないから
大きな声で叱られれば、ビクッとして、その場はやめるかもしれませんが、何が、どうしていけないのかを理解していなければ、また同じことをしてしまうのは当たり前です。
子どもの年齢に合ったことばで、ちゃんと説明しましょう。「危ないからしてはいけない」「だれかに迷惑がかかるからやめましょう」などです。子どもは、何が危険なのか、どんなことをしたら人に迷惑をかけることになるか、まだわかっていません。
まだ――幼いし、経験も少ないからです。ですから、似たようなことを、また、するかもしれません。そのたびに、注意します。 そうすれば、何が危険か、どうすると迷惑か、などがだんだんわかってきて、やがてそういう行為はしなくなってきます。それが、しつけです。一つひとつ、何度も教えなければ、理解できません。それが子どもなのです。
とくに、幼児期の男の子には、注意が必要です。内科医で心理学者のレナード・サックスによれば、耳の発達の順序に男女で差があることから、男の子は若い女性の声音域が上手に聞きとれないらしいのです。
どなられた声は聞こえますから、その場はやめるかもしれませんが、内容まで理解していませんから、また同じことをくり返して、叱られることになってしまいます。「男の子は聞き分けがない」と思われてきたのは、こんな理由もあったのです。
男の子はもちろん、女の子にも、叱る時は遠くから大声でなく、そばに近よって、静かに言って聞かせます。しっかりと目を見て、時には肩に手を置いて。この方がずっと効果があります。
理由2:いつも注意されているから
こまかいことまで注意することが多くありませんか?
たとえば、食事中、「ほら、こぼすわよ」「おはし振りまわすんじゃないの」「ごはんばっかり食べないで、おかずも一緒に食べなさい。三角食べって言ったでしょ」「テーブルにひじつくんじゃないの」「お口の中に入れたまま、しゃべっちゃダメでしょ」など、あれこれ注意していませんか?
親はきちんとお行儀よくさせたいから注意するのでしょうが、あまり注意が多くなると、子どもは話を聞かなくなります。「またか、うるさいな」「また何か言ってる」程度で、集中して聞けなくなってしまうのです。
そのうち、「人の言うことをいいかげんに聞く」という態度を学習してしまうのです。親の意図とはまったく逆のしつけをしていることになってしまいます。
理由3:くどくど叱るから
叱る時は、簡潔にしましょう。いくら言っても、ちっとも言うことを聞かないからと、くどくど小言を言っていませんか?
「何度同じことを言ったらわかるの! この前も言ったでしょ! お母さんの言うことちゃんと聞いてるの! だからあなたは……」しまいには、今叱っていることとは関係ないことまでもち出して、小言を言う人がいます。こんな叱り方をしても、まったく効果はありません。
子どもは「またはじまった、うるさいなあ」と思っても、何か言えばもっと叱られますから、黙って他のことを考えながら、小言の嵐が過ぎ去るのを待っています。
親の言っていることを真面目に聞いているわけではありませんから、何を言っても無駄です。そして、やっぱり、同じことをして、また叱られるのです。
お母さんの「叱りすぎ」がピタッ! ととまる本(PHP研究所)
叱る回数が増えると、子どもは親の言うことを聞かなくなる!「気持ちを伝える・肯定的に話す」「子どもの発達に応じた叱り方」など、子どもが変わる叱り方を紹介します。