「叱りすぎ」をなくすための2つのお守り
子どもを必要以上に叱ってしまい、自己嫌悪に……そんな辛い悩みから解放される、2つのお守りをご紹介します。
※本記事は『お母さんの「叱りすぎ」がピタッ! ととまる本』(PHP研究所)より一部を抜粋編集したものです。
(はたの・みき/波多野ファミリスクール副理事長・カウンセラー)
1934年生まれ。早稲田大学文学部仏文専修、東洋大学文学部教育学科卒業。東京家庭裁判所家事調停委員を20年間務める。現在、財団法人波多野ファミリースクール理事長 同カウンセラー。「母親は子どもにとって最初の先生」であるという立場からの、子育て しつけを提唱。波多野ファミリースクールで、お母さんの子育ての相談も行っている。
(1)叱っても改善しないことは叱らない
「子どもは叱らずにほめて育てましょう」と言われても、実際に、毎日24時間子どもの世話をしていたら、叱らずにはいられないという方もいるでしょう。でも、叱る回数をへらす方法は2つあります。
1つは叱っても仕方のないこと、無意味なことについては叱るのをやめることです。では、叱っても意味のないことって、いったいなんでしょうか?
たとえば、おねしょ。パジャマやシーツを洗わなくてはならない、おふとんを干さなければ……など、あと始末がたいへんだからでしょうか? 叱る親が多いようです。でも、叱ったら、おねしょはなくなるのでしょうか?
このように、「叱ったら、それはなくなるのだろうか?」と、ひと呼吸置いて考えるくせをつけましょう。
おねしょに関して言えば、睡眠中に排尿をコントロールできない生理現象ですから、叱っても改善することができません。むしろ、子どもの心に不安を与えてしまい逆効果になることのほうが多いと言えるでしょう。
他によくある例として、成績のことがあげられます。いくら叱っても、成績がよくなることはありません。
小学校に入ってから伸びていくかどうかは、幼児期に、子どもの好奇心をどれだけ満たすことができたか、指示、命令をしないで、自分で考える力を伸ばしたか、直接体験をどれだけさせられたかなどが、深く関わっているからです。
小学校へ入ってから、悩んだり、叱ったりしないですむようにするには、幼児期の育て方が本当に大切なのです。
まず、親がこまかいことまでいちいち口うるさく言わないこと。親がうるさく言えば言うほど、自分で考える力が育ちません。
答えを教えるのではなく、「どうしてだろう」「ふしぎだなあ」「知りたいなあ」と思う気持ちを育てることが、いろいろな意味で、子どもを伸ばすことにつながります。
(2)言い方を変えてみる
叱る回数をへらすもう1つの方法として、言い方を変えてみるという手もあります。
たとえば、子どもがドアを開けっ放しにした時、「また、開けっ放しにして!閉めなきやダメでしょ! 何度言ったらわかるの!」と言ったら、叱ることになってしまいます。
でも、「ドアを開けっ放しにしたら寒いわ」と言ってみます。叱るのではなく「寒い」という事実を伝えるのです。「寒いから閉めてね」と、親が感じたことを言ってみるのです。
買ったばかりのおもちゃをこわしてしまったとします。「もうこわしちゃったの! 乱暴にするからよ!」とか「買ってあげたばっかりなのに! もう買ってあげませんからね!」などと言っていませんか?
多分、これからも、子どものねだる声に負けて、買い与えるに違いないのに――。
そうではなく、「あら? こわれちゃったの? どうしたらこわれたの?」と聞いてみればいいのです。どこを、どんなふうにいじればものはこわれやすいのかなど、ものの取り扱い方を教えられます。もし直せそうなら、子どもと一緒に直せば、ものを大切にする心も伝えられます。
言い方の問題もあります。「もうこわしちゃったの!」となじるような言い方をすれば、「ダメじゃない!」と叱ることばが続きます。
でも、同じようなことばでも、「もうこわれちゃったの?」と言えば、こわしたという事実の確認になりますし、あとに続くことばも、「残念ね」「どうしてこわれたのかしら?」「こわれやすいのね」など、思いを伝えることができるのです。
お母さんの「叱りすぎ」がピタッ! ととまる本(PHP研究所)
叱る回数が増えると、子どもは親の言うことを聞かなくなる!「気持ちを伝える・肯定的に話す」「子どもの発達に応じた叱り方」など、子どもが変わる叱り方を紹介します。