わが子が孤立しないために…大切なのは「親の関わり方」

有光興記
2024.09.10 11:32 2023.02.15 14:46

小学生の男の子と女の子

10歳は、友達関係が複雑になる時期。コミュニケーションスキルが身についていないと、「気づけば孤立していた」なんて事態に陥ることも……。

※本稿は、有光興記著『子どもが友だちで悩まないために10歳までに親がすべきこと』(PHP研究所)の中から、一部を抜粋・編集したものです。

有光興記(関西学院大学文学部総合心理科学科教授)
1971年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部総合心理科学科教授。博士(心理学)、臨床心理士。カウンセリングや認知行動療法、マインドフルネスをベースに、発達障害の子へのソーシャルスキルトレーニングを実践している。監修書に『発達障害の子のコミュニケーション・トレーニング』『発達障害の子の「イライラ」コントロール術』『発達障害の子の「友達づくり」トレーニング』『発達障害の子の「励まし方」がわかる本』(以上、講談社)がある。

なぜ10歳までの親の関わり方が大切なの?

わが子が孤立しないために......大切なのは「親の関わり方」の画像1

小学校に入る頃から集団遊びが始まります。低学年ぐらいまではクラスが同じとか近所に住んでいるとかいう理由でその場その場で仲よく遊びます。全員がまだ幼いので、友だちづきあいはシンプルです。

しかし4年生ぐらいになると、人の気持ちを想像できる子のほうが多くなります。そして譲り合ったり、自分の気持ちに折合いをつけて場の空気に合わせたりして、友だち関係を育んでいきます。

この時、自分の話ばかりしていたり、自分の感情を我慢できなかったりする子は、次第に集団から浮いてしまうようになります。仲よくしたくても、相手がいつも「自分勝手」にふるまっていれば「なんだ、あいつ」と思うのも無理はありません。大人だって同じではないでしょうか。

本人にも悪気はないし、周りの子どもたちも示し合わせて仲間外れにしようなどとは思っていません。ただ、一緒にいるうちに「何となくやりづらい」「この子がいるとスムーズに遊べない」ということが重なり、少しずつ誘われないことが増えていく。親が気付いた時には、いつもポツンと1人でいるという状態になっています。

親としてはショックですよね。真っ先に「うちの子がいじめられている!」と考える人も多いでしょう。しかしこの段階で過剰反応しても、何のプラスにもなりません。

まず、なぜわが子が1人でいるのかをよく観察し、場合によっては本人から話を聞いてみてください。もちろん「いじめられてるの?」と聞くのではなく、「いつも誰と遊んでいるの?」「どんな遊びが楽しい?」など、友だちとの関わり方が把握できるようなことを聞きます。

話してくれる子もいるし、上手に話せない子もいますが、内容自体より話し方に注目してください。こちらの問いかけに対する答えになっていない、話がすぐ逸れる、小さな声でぼそぼそ話すので聞き取りにくいといったことがあれば、学校でも友だちとのコミュニケーションがスムーズにできていない可能性があります。

コミュニケーションスキルは小さい頃からの積み重ねが重要

廊下を歩く小学生の集団

この記事の画像(1枚)

たとえ1人で過ごすことが多くても、本人が苦痛に思っていない、あるいは周りの子どもたちから攻撃されていないという状況であれば焦る必要はありません。

ただ、将来のことを考えると、ある程度は人とコミュニケーションをとれるスキルを身につけておいたほうがいいでしょう。

思春期に入ると、お互いの悩みを打ち明け合うなど、コミュニケーションはさらに複雑になります。先輩や後輩との交流も生まれます。そしてその延長線上には、社会人という立場があります。

いずれ社会に出た時、いかにふるまうか。性格や価値観はそれぞれですが、「人の話をきちんと聞く」「感じのいい受け答えができる」「聞き取れる声でていねいに話す」といった基本的なコミュニケーションスキルは大前提です。どんな関係性を築いていくかは、それができたうえでの話です。

多くの子どもたちは小学校で集団生活を送り、ケンカをしたり仲直りしたりの繰り返しのなかで、どのような場面でどうふるまえばよいのかを身をもって学んでいきます。家庭や地域も大切な学びの場になります。

しかし少子化や地域の変化(少子化による子どもだけの活動の減少で、学校以外に遊べる場が減ってきたなど)に伴い、学びの場も少なくなってきました。

おけいこ事に通う子どもも増え、子ども同士で会話をしたり遊んだりする時間も短くなっています。つまりコミュニケーションスキルを学ぶ機会自体が減っているのです。

結果として、今は家庭がコミュニケーションスキルを学ぶ、あるいは学び直す場とならざるを得ません。荷が重いと感じる親御さんもいるかもしれませんが、自分の子どもが学校や子どもたちだけの場面でどんなコミュニケーションをとっているのかを知ることができやすいとも言えるでしょう。

10歳を過ぎると、友だちのなかでも特定の相手やグループとの「深く狭い」つきあいが始まります。その時に「友だちと遊びたいのに遊べない」という状況になってしまわないよう、そして最終的には社会人になった時に孤立しないよう、10歳までに必要最小限の「友だちづきあいのスキル」を身につけておくことはとても大切です。

有光興記

有光興記

1971年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部総合心理科学科教授。博士(心理学)、臨床心理士。カウンセリングや認知行動療法、マインドフルネスをベースに、発達障害の子へのソーシャルスキルトレーニングを実践している。監修書に『発達障害の子のコミュニケーション・トレーニング』『発達障害の子の「イライラ」コントロール術』『発達障害の子の「友達づくり」トレーニング』『発達障害の子の「励まし方」がわかる本』(以上、講談社)がある。

子どもが友だちで悩まないために10歳までに親がすべきこと

子どもが友だちで悩まないために10歳までに親がすべきこと
「わからないことの聞き方を教える」などのロールプレイ法から「新しいクラスで友だちを見つけるには?」などの困りごとへの対処法まで、子どもの友だち関係をサポートする方法を紹介しています。