泣くはただのイヤイヤじゃない? モンテッソーリが大切にする「子どもの観察」
子どもを観察してわかった「順序」へのこだわり
敏感期にある子どもは、非常に「順序」に対するこだわりを見せることがあります。
子どもの中には、これまでの経験から獲得した「独自」の順序ができ上がっていて、 それを守りたいという強い欲求があります。
この順序自体は、大人にとってみれば、正しくもないし、効率的でもないことがほとんどです。しかし、大切なのは、「順序」という概念を、この時期に子どもがまさに体を使って「体得」するのだ、ということです。
将来、物事を順序立てて行ったり、仕事の計画を立てたりすることが上手にできる人というのは、敏感期に「順序」という概念を手に入れた人なのです。
先日、私が「失敗した」と思ったのは、嫌がる1歳の息子に食事用のエプロンを無理やりつけて、大泣きさせてしまったことでした。手を洗った後に、首にエプロンをつけたのですが、ひどく嫌がり、泣きながら自分で取ってしまうのです。
私も「なんでつけないの!」とひどく叱ってしまいました。しかし後からよく考えると、息子はいつも「椅子に座ってから」エプロンをつけていることを思い出しました。
息子としては、いつもの「順序」にこだわっていただけであり、決してエプロンをつけるのがイヤだったわけではなかったのです。
このようなことは、よくあるものです。私たち大人は、「子どもが順序を守ろうとしている」ということを知りません。ですから、「目の前で起こっていること」自体を子どもがイヤがっていると勘違いしているのです。
先の例でいえば、「エプロンをつけること」自体をイヤがっていると思い込んでしまうのですね。
しかし、そうではありません。息子は順序が守られなことをイヤがっていたのです。ご飯のときのいつもの順序を、私は見逃していたのです。
マリア・モンテッソーリが「子どもを科学者のような目で観察しなさい」といったのは、このように目の前で起こっている事象を引き起こしている本当の原因を知っていたからです。
今日から、お子さんをよく観察してみましょう。洋服を着るとき、靴を履くとき、ごはんを食べるとき、お風呂に入るとき、決まった順序はありませんか? 何かを同じ順番でしていませんか?
もしそうであるなら、その順番を尊重してください。そうすれば日常生活の中での子どもに対する徒労感が、ずいぶんと減るはずです。
「習慣」へのこだわりを利用する
我が家では習慣としていることが、いくつかあります。例えば、幼稚園の登園リュックに入れるものを別のかごに用意しておき、自分でリュックにお弁当や水筒などを詰めさせます。
そうすると、かごの中にあったものがなくなると、リュックの中に入れたことが子どもにも見てわかるため、忘れ物がありません。
同様に帰って来たら、そのかごの中にお弁当や水筒、お便りファイルなどを入れます。こちらとしても、お弁当箱の洗い忘れや、お便りのチェック漏れがなく、重宝している習慣です。
もちろん子どもは最初からはできないので、一緒に手伝いながらやるのですが、回数を重ねると自分で朝やることがわかってきて、かごにものを用意してあげるだけで後は勝手に自分で幼稚園の用意をしてくれます。
このように習慣にこだわることを利用すると、親にとっても、子どもにとっても、朝の忙しい時間に少し余裕ができます。
テレビを見ている子どもの横でママが用意をするよりも、自分で手を動かし、自分で用意をしたほうが、幼稚園に行ったときにどこに何が入っているのかがすぐにわかります。
自分で用意をするほうが、子どもにとってもいいのです。男の子のママはついついかわいさ余って手を出してしまいがちですが、子どもの習慣へのこだわりを刺激できる環境を工夫してみてください。
もっと大きな視点で見ると、日常生活そのものが習慣であるともいえます。幼稚園や保育園に通っているお子さんであれば、もしかすると土日にうまくお出かけできないことがあるかもしれません。
おばあちゃんの家に行くと約束した土曜日。出かけようとしたら、「僕は行かない」 といって駄々をこねる。ママは「おばあちゃん、楽しみにしているのに!」と怒ってしまいます。
これは、平日と違うスケジュールで過ごすことが、子どもにとってイヤなことだからです。
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