遊ぶほど「本物の学力」が育つ3つの理由
「知識」や「生きる力」は遊びとの関わりの中で育まれていきます。ここでは、その理由をご紹介します。(取材・文:加曽利智子)
※本記事は、「PHPのびのび子育て」2012年8月号より、一部を抜粋編集したものです
高濱正伸(花まる学習会代表)
1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程卒業。93年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外の体験教室」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員。
遊ぶほど「本物の学力」が育つのは本当?
“頭のいい子”と聞くと、「テストでよい点数がとれる」といったことを思い浮かべる方は多いでしょう。もちろん、それは事実です。しかし、「テストの点のよさ」は頭のよさの一部にしか過ぎません。本物の頭のよさとは、「生き抜く力」だと私は思います。
そもそも、今後、お子さんが学校に通い、勉強をしていく目標は、自分でメシが食えて、しかも人に好かれる魅力ある大人になること、すなわち“自立”です。しかし、社会に出れば困難や苦労が渦巻いています。
ときには自分とは考え方の異なる人と協力することも必要でしょう。このような様々な問題を乗り越えるために、いかに頭を働かせることができるのか。それこそが、「生き抜く力」なのです。
この力を育み、頭のいい子を育てるには、幼児期に“どれだけつらいことを乗り越えて笑える体験をしたか”がベースになります。そのために大切なのが、遊ぶ経験です。
【理由1】発想力やイメージ力が育つ――「空間認識力」がつく
「子どもは体験したことでしか、成長しない」と言います。なかでも、幼児期に一番伸ばしたい「発想力」や「イメージ力」は、外遊びによって体と五感を働かせることで育ちます。
例えば、野球をしたいけれど3人しかいない。そんなとき、子どもたちは「今日は三角ベースでやろうよ」と工夫をします。楽しむために懸命になって発想力を働かせるのです。
あるいは、かくれんぼをしたとします。鬼になった子は「もしかしたら、世界中で急に、僕はひとりになってしまったかもしれない」といった切実な思いで、「あの茂みの中に、〇〇くんはいるかな?」「それとも、こっちかな?」と、ものすごい想像力を働かせながら、友だちを探します。まさに、遊びに熱中する中で、イメージ力が伸びていくのです。
発想力やイメージ力は、空間認識力につながります。空間認識力とは、頭の中で立体を自由に動かす力のこと。算数や理科の勉強には欠かせない能力です。