スーパーで「これ買って!」…人前での言い聞かせ

渡辺弥生

日常生活のなかで、子どもが人に迷惑をかけてしまったとき、思わず大声で怒鳴ることはありませんか? 渡辺弥生先生は、「幼児や小学校低学年の子どもたちにとって『人前』を意識し、その場いるたくさんの人たちの心を理解するのは難しいことです」と著書で解説されています。

「迷惑」がどういうことかを理解するのもハードルが高いという時期には、目の前の子どもの心の発達をよく見て、興味のあるおもちゃを持っていくなどの事前の対策を練ることが大切。また、経験や失敗を重ねて子どもは学んでいくとも。

それでも人前で叱りたくなった場面の対処法を、渡辺先生の著書『人前での叱り方・言い聞かせ方』の中から学んでいきます。

※ 本稿は『人前での叱り方・言い聞かせ方』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

渡辺弥生(法政大学文学部心理学科教授)
筑波大学、静岡大学を経て現職。教育学博士。育児に不安を抱える保護者のカウンセリングや家庭教育講座などの講師も務める。著書に、『子どもの「10歳の壁」とは何か?』(光文社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など多数。

スーパーで「これ買って!」

スーパーやデパートでの子どもの「これ買って!」は、実によく見られる光景です。子どもは見たことのない楽しそうなものに囲まれるのですから、ほしくなるのも当然です。そんなときに常に買い与えると、子どもは物のありがたみがわからなくなってしまいます。

しかし「絶対に買い与えない」と決めるのも酷な気がします。たまには親子で買い物を楽しむことも、子どもにとってよい経験になりますから。

まずは夫婦で話し合っておおまかなルールを決めましょう。「毎週日曜、家族で買い物をする日は好きなお菓子を買ってあげる」「習い事の帰りに買い物するときは買ってあげる」「ピアノのレッスンをがんばったから、買ってあげるね」(物で釣るのではなく、たまのごほうびとしてあげるなら問題はありません)など、一定の基準を設けます。

いつ、どんな場合に買うのか具体的に言葉にすると、子どももルールを覚えていきます。

買わない日は、建物の入り口の前で「今日は『買って』はなしだよ」と約束しましょう。家で約束しても、記憶力の未熟な子どもは移動中に忘れてしまいます。約束という概念も、子どもの年齢によってはむずかしいものです。

【事前の準備や対処法】
・親が買う、買わないの基準を決めておく
・事前にぐずっているのなら店に入らない。買い物に行かない
・「今日は買わない」という約束は、家ではなく建物の入りロでする
・買わないと決めた日は、おもちゃ売り場やお菓子売り場などはなるべく通らないようにする
・「今日は一つ買ったでしょ。終わりだよ」とその場からサッと離れる
・「買うのは日曜でしょ。今日は土曜だからまた明日ね」など、理由を具体的に説明する

「うるさい!」「やめなさい!」と怒鳴る前に 人前での叱り方・言い聞かせ方(PHP研究所)
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