子どもへの「早く起きなさい!」の言葉が危うい理由
小中学生の自立を育むための家庭教育論をベースに家庭教育支援と不登校支援のアドバイザーとして活動をする水野達朗氏と山下真理子氏。
同氏の著書である『これで解決! 母子登校 不登校にしない、させない家庭教育』では、不登校の前兆ともいわれる母親の付き添い登校(母子登校)を早期に解決するために大切な家庭教育のあり方を、具体的にマンガで示している。
本稿では同書より、家庭教育を行なう上で親が持つべき意識や注意しなければならない言動ついて、ついイライラしてしまいがちな朝の時間を例に紹介する。
※本稿は『これで解決! 母子登校 不登校にしない、させない家庭教育』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです。
水野達朗(家庭教育アドバイザー、不登校復学支援専門のカウンセラー)
不登校専門の訪問カウンセラーとして多くの不登校の子どもたちと関わり復学へと導く。不登校の解決法として家族内コミュニケーションの在り方に着目し、水野式の家庭教育メソッドである「PCM(=ParentsCounselingMind)」を構築。家族と子どもの自立を第一に考え、全国の親と子をサポート。
山下真理子(家庭教育アドバイザー)
不登校専門の訪問カウンセリング領域と、保護者対象の家庭教育支援領域を専門分野としている。不登校支援では待っているだけでは解決できないケースに対して、直接的に家庭に介入して支援をするアウトリーチ型支援で多くの不登校の子どもたちを復学へと導く。
「子どもに失敗させたくない」という考えは危険
子どもが小学校に進学すると、多くの親御さんは朝の対応に追われます。
朝起こしに始まり、朝ご飯、身だしなみチェックに、遅刻しないように家を出発させるなど、家庭によってそのご苦労はさまざまです。
子どもが布団からのそのそと起きた瞬間から…
「いつまで寝てるのよ。毎日同じこと言わせないで!」
「寝ぐせついたままよ!いい加減にしなさい」
「ほら早く食べなさい!前にも遅刻しかけたでしょ、バカ!」
「ハンカチ持った?もう!水筒も忘れてるじゃないの!」
と始まってしまうことも多いのではないでしょうか。
このように朝に一生懸命になって対応されている親御さんは愛情にあふれた親だといえます。
「今日は子どもをどう叱ってやろうか」
「さて、どうやってあの子の自尊心を傷つけてやろうか」
などと思いながら目を覚まし、子どもたちの朝食を作る親は、まずいませんよね。
しかしながら、近年はその愛情が子どもの自立心や社会性等の成長につながらないケースがとくに増えてきているように感じます。つまり「過干渉」や「過保護」といわれる対応です。
一生懸命な親御さんであればあるほど、子どもに失敗させたくないという気持ちが強く、先回りして子どもが失敗する経験、失敗から学んで起き上がる経験を奪ってしまうことにつながります。
このような家庭教育で育った子どもは幼かったり、わがままだったり、極端に打たれ弱かったりと心配な傾向が強まることが、支援の現場ではよく見受けられるのです。