早くから抜け出すために大切なこと~今の親を取り巻く環境~
【1】子どもの育ちが、いつしか母親の通信簿に
とかく子どもが悪いことをすれば、「お母さんのしつけができていないから」と言われ、いい子に育っていれば、「お母さんが頑張っているから」と言われます。子どもの育ちはまるで、お母さんの通信簿のようです。
SNSやブログなどで他人の暮らしや子育ての様子が見えるようになったことも、お母さんたちの評価の場を増やすことになりました。ネット上に手作りのおやつや料理などをアップするのも、見方によっては、人に評価されたい、認められたいというお母さんたちの気持ちの表われかもしれません。
その一方で、思うような評価を得られなかったり、他のお母さんと比較して自分ができていなかったりすると、焦ったり、落ち込んだりしてしまうのです。
このようにお母さんたちは、常に周りの評価にさらされ、その結果に振り回されています。正直、”子どもの育ちは親の成果”という周りの見方を変えることは難しいでしょう。でも、お母さん自身が周りからいい評価を得たいがために、わが子を理想の子ども像に近づけようと焦ると、子どもはもちろんお母さん自身も追いつめられてしまいます。
【2】時間の感覚が短くなり、待てない時代に
携帯電話がない時代は、待ち合わせ時間に相手に会えなくても、「何かあったのかな?」「待ち合わせ場所はここでよかったのかな?」など、いろいろ思いをめぐらせながら30分くらいは平気で待てたものです。
ところが、ほとんどの人が携帯電話を持つようになってからは、時間通りに相手が来なければ、電話やメール、LINEなどで連絡を取り合い、「先にお店に行っているね」などとすぐに対応できるので、待つ必要がなくなりました。
そして、もらったメールやLINEには、すぐに返信するのが鉄則。そうしなければ、話題に乗り遅れたり、グループからはずされてしまったりするからです。何らかの事情ですぐに返事を出せないときは気になって落ち着かない、というのが現在のお母さんたちでしょう。
今の日本は待てない社会となりました。実際は10分しか経過していないのに、何十分にも感じるなど、私たちの時間の感覚も変わってきているのかもしれません。子どもに「早く」と言うことが増えたのは、大人の時間の感覚が短くなり、子どもを待てなくなったことも原因の1つと言えるでしょう。
【3】子育てにおいて結果を早く求めるように
本来、子どもの成長というのはゆっくりであり、親が子どものためにしていることの結果というのは、すぐにはわからないものです。
でも今は、教えたことが次の日にできないとイライラするなど、すぐに成果が出ないと不安になる親が増えているように思います。
現在、子育てをしている世代は、テストや試験において、その答えが出るまでの経緯はあまり見てもらえず、結果で評価されてきた世代です。
そのため、家事や子育てにおいても、どうしても結果に目が向きやすく、答えがすぐにわからないと不安になったり、イライラしてしまうのです。また、周りから出遅れることを極端に恐れる傾向もあります。
その傾向は、子どもの教育においても見られます。「多少無理をしてでも小さいうちに始めておけば、将来が安心」と、早期教育やお稽古事を始める方がいますが、これも「うかうかしていては周りの子に後れをとってしまう」という焦りがあるからかもしれません。
でも「将来のために」と早期教育を始めたとしても、すぐに成果が出ないと、またイライラしたり悩むことになり、不安のループからは抜け出せないのです。
※「早く」の頻度は立場でも変わる
「そんなに子どもを急かすなよ」と、のんびりかまえていた父親が、いざ育児休暇などをとって子育ての主な担い手になったとき、「早く」を連発するようになったという例はよく聞きます。子どもに「早く」と言うのは”母親だから”ではなく、立場がそうさせている面も大きいのです。