早くから抜け出すために大切なこと~今の親を取り巻く環境~

大日向雅美

朝から晩まで子どもを急かしてばかり。いったいどうしてこんなに「早く」と言ってしまうのでしょうか。その理由を探りながら、自分自身を振り返ってみましょう。

※本稿は、『PHPのびのび子育て』2016年8月号より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

大日向雅美(恵泉女学園大学学長)
NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事。子育てひろば「あい・ぽーと」施設長。学術博士。40年近く母親の育児ストレスや育児不安の研究に取り組む。著書に、『おひさまのようなママでいて』(幻冬舎)など多数。

子どもを急がせてしまうのは…

「早く起きなさい」「早くごはんを食べなさい」「早く支度をしなさい」……。あなたは1日何回くらい、子どもに「早く」と言っているでしょうか。もしかしたら、数えられないくらい言っている、と思う方もいるかもしれませんね。

「早く」という言葉は、昔から親が子どもに言っている言葉です。でも近年、子どもに対し、「早く」を言う頻度が増しているように思います。いったいお母さんたちは、いつ頃から、こんなに子どもに「早く」を求めるようになったのでしょうか。

日本が高度成長期を迎える前、一家の主婦の多くは、家事や農作業といった家の仕事に追われ、子どもにあまり手をかけることができませんでした。そのため、子どもは両親だけでなく祖父母や近所の人たちなど、みんなの手で育てられていました。

ところが、高度成長期に入ると主婦の役割は一転。核家族や専業主婦家庭が増え、農作業や嫁姑問題から解放された代わりに、子育ての責任を母親が全面的に負うことになったのです。

現代のお母さんたちは、家事、育児に加え、仕事までもつようになりました。インターネットの普及などから効率が優先され、すべてを完璧にこなすためには、子どもを急かさざるを得なくなったのです。

自分を見つめる時間を

このような時代背景を見れば、お母さんが子どもに「早く」と言ってしまうのは仕方がないのかもしれません。でも親の「早く」が、上記のように子どもの育ちに影響してしまうことがあるというのは、ぜひ心に留めておいてほしいと思います。

子どもは、その時期にしかできない経験を通して成長していきます。そんな子どものかけがえのない時間を奪わないよう、少しだけ普段の自分を見つめ直してみてほしいのです。