出版社が熾烈な戦い!? 同じようでけっこう違う「学習まんが・日本の歴史」5選

馬屋原吉博

近現代に注力した『集英社版 学習まんが日本の歴史』(集英社)

――2016年には、全20巻の『集英社版 学習まんが日本の歴史』が刊行されました。

(馬屋原)集英社版はひとりの監修者がいるのではなく、時代ごとに監修者を立てています。つまり、その時代にくわしい専門の方が担当されているということです。それは専門性を取るか一貫性を取るかということで、どちらが優れているかということではないと思います。あくまで特徴ですね。総合アドバイザーとして大学受験のカリスマ講師といわれた野島博之先生が参加しています。

――全20巻のうち、8巻を明治維新以降の近現代に割いていますね。

もちろんこれは、新学習指導要領を考慮してのことです。内容としては、漫画の中の情報量は最低限に抑えて、巻頭や巻末の資料を充実させるという構成になっています。学研版と同様ですね。大学受験に出る内容がないわけではありませんが、どちらかといえば中学受験レベルにふさわしいと思います。

また、表紙を少年ジャンプなどで活躍する人気まんが家が描いているというのも特徴です。たとえば「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦先生や「キングダム」の原泰久先生が描かれた表紙はやはり印象的ですよね。ただ、さすがにまんが本編を描いているのは別のまんが家さんなので、買う前に、実際に中身も読んでみてほしいですね。

もともとはハードカバーでしたが、2021年にコンパクト版が発売され、より安くて軽くなりました。これも時代のニーズでしょうね。

 

カラーの資料が充実した『講談社 学習まんが 日本の歴史』

――全20巻の『講談社 学習まんが 日本の歴史』は、2020年です。集英社版とは異なり、表紙と本編は同じまんが家さんが担当しています。

(馬屋原)表紙は新しさはありませんがオーソドックスで、これはあえて意図的にこうしているのだと思います。第1巻の担当は「将太の寿司」の寺沢大介先生。構成も演出もよく、第1巻ということで気合いが入っていることが伝わってきました。

また平安貴族を描いた第5巻は、「源氏物語」をまんが化した「あさきゆめみし」の出版社ということもあってか、少女まんが的なタッチの池沢理美先生が担当されています。清少納言と中宮定子の初対面が「わたくしは定子さまに恋をした」だったり、藤原道長がイケメンだったりして、子どもには刺さりやすいのではないかと思います。各巻でまんが家さんの個性が出ているので、全体の統一感はないかもしれませんが。

――情報量や内容のレベルについてはどうでしょうか。

(馬屋原)講談社版も、時代ごとに専門の監修者を立てる方式です。大きな特徴は、冒頭の全32ページに及ぶカラーページのほとんどを資料に費やしているところ。他社では資料を後ろにもってくるところがほとんどですが、頭に置くことで資料の価値をアピールしているようにも思えます。最近は資料写真を掲載するにも膨大な費用がかかりますので、これだけの量を集めるのは大変だったと思います。

全体の情報量も、中学受験レベルをはるかに超えて大学受験にも通用するレベルです。本来は、高校生が読むと一番勉強になるのではないかと思います。小学生であっても、一度日本史を学んだことがある子であれば楽しんで読めると思いますね。