出版社が熾烈な戦い!? 同じようでけっこう違う「学習まんが・日本の歴史」5選

馬屋原吉博
2023.06.30 10:57 2023.03.16 11:55

フルリニューアルされた『小学館版 学習まんが日本の歴史』

『小学館版 学習まんが日本の歴史』

――1981年に刊行され、定番だった学習まんが「日本の歴史」から切り替えて、2022年12月に発売されたのが新しい『小学館版 学習まんが日本の歴史』です。

(馬屋原)高校の日本史教科書「詳説日本史改訂版」を出した山川出版社が編集協力というのが大きなポイントです。高校の歴史教科書では山川出版社のシェアは大きく、それだけ王道の歴史まんがといえそうです。監修されているのも、若手研究者が多い講談社版に比べ、名誉教授など大御所の先生が多いですね。

最大の特徴は、他社のものと比べて一冊あたりの情報量がものすごく多いこと。資料も充実していますが、まんがの中に盛り込まれた情報が本当に多く、大学受験向けの講談社のさらに上をいっています。判型もA5判と、現状のトレンドである四六判よりひと回り大きい。情報量を増やすためにも、このサイズにこだわったのではないでしょうか。

どちらかといえば、大学受験生に読んでもらいたいですね。たとえば徳川将軍も歴代総理大臣も、ほぼ全員が、それぞれのつながりとともに描かれています。他社の歴史まんがには出てこないような人物もどんどん出てきます。時代の流れを描くというより、いっさい飛ばさないで描こうとしているようです。徹底しています。これだけの内容を、全20巻に収めているところもすごいと思います。

ただ、読みやすくするための脚色やまんがに没入させる仕組みがまったくないので、読むには非常に時間がかかります。小学生にこれを勧めたとしても、読んでくれない可能性もある。でも、好きなことは無限に覚えてしまうような小学生もいますので、そういう子であれば小学館版も読めるでしょう。
 

――各社の特徴がわかったところで、具体的にどう選べばいいのでしょうか。

(馬屋原)学習まんがを実際の勉強に役立ててもらいたいのであれば、まずは何よりも読んでもらわなくてはなりません。買ったはいいけど、家の飾りになっているのではもったいないですよね。ですから、一番いいのはお子さん本人に選んでもらうことです。

書店に連れていって実際に読み比べてもらい、これなら読めそうだなと本人が思ったものを購入するのが一番です。まんがとしてこなれているKADOKAWA版を選ぶ子もいるでしょうし、好きなまんが家がカバーの絵を描いているからと集英社版を選ぶ子もいるでしょう。

たとえば最初は学研版を買って読んだけど、物足りなくなって講談社版や小学館版が欲しくなる子もいるかもしれません。その場合は、ぜひ異なる出版社のものを買ってあげてください。セットで買ってもいいし、好きな巻から少しずつそろえるのもいいし、違う出版社の本をバラで買っていっても構いません。電子書籍での試し読みができる学習まんがもありますから、まずは試し読みをしてみるのもいいと思います。

――読んでもらわないと意味がないのですね。

(馬屋原)リニューアルされた小学館版が出版されたことで、各社の学習まんがの特徴がより際立つようになりましたね。

初めて学ぶ子にピッタリなのが学研版、中学受験レベルの集英社版、そしてKADOKAWA版と講談社版は大学受験まで対応が可能、さらに情報量を求めるのなら小学館版と、きれいにグラデーションができたような気がします。情報量が多く高度な内容を必要とする子もいれば、初めて歴史を学ぶ入口に立った子もいる。それぞれのレベルに合わせて、最適な学習まんがを選んでほしいと思います。