モンテッソーリに学ぶ「小学生の部屋づくり」で意識すべき3つのポイント

あべようこ
2024.04.25 22:58 2024.05.02 11:40

笑顔で勉強している女の子

おうちで行う小学生のお子さんの教育に、モンテッソーリ教育のエッセンスを取り入れるためのポイントを、モンテッソーリ小学校教師の国際資格(AMI公認)を持ち、0歳から幼児と小学生が通えるモンテッソーリ教室「モンテッソーリ・ファーム」を立ち上げたあべようこさんがお伝えします。

※本記事はあべようこ著『学ぶのが好きになる! 小学生のためのモンテッソーリ教育』(河出書房新社刊)より一部抜粋・編集したものです

「お部屋づくりのポイント」について

勉強している女の子

児童期の子どものお部屋づくりについて、お伝えしたいポイントは3つ。

1つめは、ものがきちんと整理されていること。文房具や掃除道具など、いつも使うものの置き場が決まっていることです。

置き場所が決まっていて、自分が使いたいときに使いたいものがすぐに手に取れるようになっていれば、子どもは生活に、大人と共に参加できます。自分も社会の一員として活動できるようになることが、子どもにとってはすごく大事なのです。

ですから、できるだけ整理整頓を心がけ、ものの置き場所を決めておくようにしましょう。

ポイントの2つめは、使ったものはみんなで元に戻すこと。このルールを徹底することで、子どもは、自分がやりたいときに、やりたいことをするための道具をすぐに手にとれます。
 
3つめのポイントは、図鑑や歴史の本など、子どもの興味を引くためのものが多すぎないことです。児童期の子どもにとって、家の中や教室で学びきれないことを、外へ出て学ぶことがとても重要になってきます。

ですから、「うちの子は恐竜が好きだから……」と恐竜の本を何十冊も買い与えるのではなく、家にはくわしい本を2〜3冊置いて、子どもが興味を持ったら図書館や博物館などへ調べに出かけるのがベスト。家の中に置く情報は不足しているくらいでちょうどいいのです。

それが、子どもの関心を外へと向けるきっかけになります。今はインターネットでも簡単に情報が手に入りますが、外で実際に体験したことこそ、真の学びにもなりますし、記憶にも残ります。

「ゴーイングアウト」について

水族館の女の子と男の子

モンテッソーリ教育では、子どもが興味を持ったことを外へ調べに行く活動「ゴーイングアウト」と呼んで、とても大切にしています。

このように積極的に外へ出て行って、社会と関わりながら学ぶことは、児童期の子どもにとって特に重要です。なぜなら、なんでも知りたい児童期に、「自分の知りたいことは、身近な大人以外の社会からでも学べるんだ!」という経験をしておくと、自分の興味をあきらめずに追求する気力や社会性が育ち、その子の行動の幅がグンと広がるからです。

ですから、クラスや家庭でお子さんが興味を持ったことがあって、「もっと知りたい!」となったら、ママやパパは積極的に外へ連れて行ってあげてください。先生を含め、大人にも知らないことがあるのは全く悪いことではないので、「自分も知らないから、一緒に行ってみよう!」と協力者になればよいと思います。

双眼鏡を使う子どもたち
恐竜に興味がある子なら図書館や博物館へ連れて行ってもいいですし、古生物が好きなら化石採集に出かけるのもいいでしょう。動物が好きなら牧場へ、植物に興味があるなら植物園に一緒に出かけるのもいいと思います。地元の歴史に興味を持った子の場合は、地元の郷土史資料館を調べて、知りたいことを一緒に聞きに行ってみるのも面白いと思います。

ちなみに、最終的に、児童期の子どもが自分で「ゴーイングアウト」を計画し、目的地までの行き方や交通手段や費用を調べたり、専門家に電話やメールで質問時間をもらうためのアポイントメントを取ったりするなど、一連の手続きを自分たちこなせるようにすることです。

生きていく上での実質的なスキルをリアルに学ぶことは、「外」でなければできない経験です。大人は、子どもが家の中の学びだけに満足せず、外へ出て行く力を育むサポートをしましょう。帰ってきたら、お礼のメールや手紙を書いてみるのもオススメです。

「スクリーンタイム」について

ゲームコントローラーと子どもの手

お子さんがゲームや動画、スマホに夢中になる「スクリーンタイム」。これは、できるだけ少ないことが望ましいと思います。

なぜなら、児童期の子どもたちも、まず感覚器官を使って現実をしっかり見つめてほしいからです。動画の中で一方的に話す人よりも、あなたのために今目の前にいる人間の話にしっかり耳を傾けて、感じる心を失わないでほしいのです。

自分が生きている宇宙のこと、地球のこと、自然のこと、さまざまな生物や、我々人間の歴史。生きるための基本となる現実に、いかに興味を持てるかで、子どもが感じ取り、さまざまなことに感謝し、現実を生き抜く力は変わってきます。

特に、「なぜ?」「どうして?」を強く求める児童期の子どもは、一度興味を持てば、夢中になってそれを学びたがります。そんな時期だからこそ、中毒性のあるゲームや動画に夢中になって、それしか考えられなくなるのは、すごくもったいないと思うのです。

また、動画で多くを学びすぎると、ゴーイングアウトなど、実際に外に出て社会で体験するワクワクも薄れてしまうかもしれません。

小学生
どこでも手軽に楽しむことができるスクリーンのエンターテインメントに比べ、モンテッソーリ小学校で学ぶことは、ときに面倒くさいかもしれません。

実験などの活動は、ポイントが面白くまとめられた動画のようにただ見ているだけで楽しめるものではありませんし、物語を聞くには、大人の声だけに耳をじっと澄ませる力や、見えない部分をイメージで補う想像力が必要になります。

でも、だからこそ、頭も身体も心も鍛えられます。スクリーンタイムは、これらを鍛える時間を大幅に奪うと思うのです。小学生になっても、外の音に耳を澄まし自然を見て美しいと感じる心を忘れないようにサポートしてあげてください。

今の時代、ゲームや動画を全面的に禁止するのはなかなか難しいと思いますが、閲覧制限を設けることは、とても大事だと思います。ルールを子どもと一緒に決めてもよいと思います。

また、その分、親御さんと一緒に興味があるものについて話し合ったり、ゆっくりと手を動かす時間をつくったりすることができれば素敵ですね!

あべようこ

あべようこ

上智大学文学部卒。国際モンテッソーリ協会公認(0-3、6-12歳)教師養成資格、日本モンテッソーリ協会公認(3-6歳)教師資格取得。イデー・モンテッソーリ運営。

Instagram:@montessorimanga

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