思春期あるある? 「親を見下す子」とどう向き合うべきか

中野日出美

思い通りにならない事を親のせいにする子、親を馬鹿にする子とはどのように向き合えばよいのでしょうか。「思春期だから」…と見過ごしてしまうと、後々の人生に大きな影を落とすかもしれません。
子どもが親を見下す原因とその対処法を、親子専門の心理セラピストである中野日出美さんに解説いただきました。

※本稿は中野日出美著『言葉にできない気持ちをわかってほしい 思春期の男の子が親に求めていること』(大和出版 )から一部抜粋・編集したものです。

中野日出美(なかの・ひでみ)
一般社団法人 親と子の心理コミュニケーション協会代表理事。日本心理学会認定心理士。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。

親を脅したり、バカにしたりする

「もう、うちの息子ったら、自分の思いどおりにならないと、すぐにキレるんですよ」
ケイスケ君(中1)は、朝食に嫌いなおかずが出ていたり、お母さんがちゃんと新しい靴にヒモを通していないと、「お母さんのせいで、学校に遅れるだろ!」などとキレるそうです。

親が自分の思いどおりに動かないとキレる、自分の失敗を親のせいにする、自分が不機嫌なときに親にあたる……。
こうしたことは、思春期特有の反抗ではなく、ただのワガママです。
親が子どもをかわいがり、大切にしすぎたために、すっかり子どもにナメられている状態だと言えます。

甘やかしすぎの悪影響

最近は少子化のせいもあり、親が子どもに愛情を十分に注げるようになりました。
それはいいのですが、まるで子どもを小さな王さまのように扱う親も見られます。
子どもが小さなうちには、「ちょっぴりワガママな甘えん坊さん」ですみますが、思春期に入り、体も大きくなってくると、少しずつ事情は変わってきます。家庭によっては、親が子どもの感情におびえたり、顔色をうかがうようになってしまうのですね。
表向きは「思春期の息子とやさしい親」のように見えますが、内情は「裸の王さまと召使いたち」といったところでしょうか。
もともとは子どもかわいさに甘やかしたのが原因ですが、思春期に入る頃になると、立場が逆転し始め、無意識に子どものご機嫌とりのためにやさしくしたり、気を遣ったりしてしまうのです。
そうしてすっかり図に乗った子どもは、傍若無人に振る舞い、典型的な内弁慶になります。
外では素直でおとなしい子なのに、家では自分の権力を振りかざすようになるのです。

「親は自分よりもバカ」という勘違い

中には、子どもに部屋を片づけるように注意すると、「お母さんなんか、お父さんの給料で食べている奴隷みたいなもんなのに、エラそうに言うなよ」と言ったり、「しっかり勉強しなくちゃダメだぞ」と父親から言われた際に、「はい、はい。勉強しないと、お父さんみたいに一生、安サラリーマンで終わるもんね」などと、完全に親をバカにした言葉を平気で投げかける子もいます。
また、定期試験で成績が下がると、「前日、お母さんがつくった料理を食べたことで、お腹の調子が悪くなったせいだ」などと、何でも親に責任転嫁するようになるかもしれません。
こうなると、親が子どもから脅され、傷つけられていると言っていいでしょう。
子どもからのパワハラみたいなものです。
親を脅したり、バカにしたりする子どもの潜在意識には、「親は自分よりもバカでダメな人間だ」「自分は特別な人間なのだから、優遇されて当然だ」という勘違いが植えつけられています。

今こそ子どもと向き合うべき

子どものこんな態度をすべて思春期のせいにしていると、大変なことが起こる危険性があります。
まず、ワガママ放題の人間に育ってしまった子どもは、学校や社会での厳しさや公平さに我慢ができず、リタイアし、引きこもりになり、大人になってもずっと、親のスネをかじり続けるようになるかもしれません。
もしかすると、うまい具合に就職しても、周囲とのコミュニケーションがとれず、転職を繰り返すかもしれません。
結婚しても、妻を親に見立てたり、召使い扱いして、暴力を振るうかもしれません。
大切な子どもがそんな悲しい人生を送るのは、親として耐えられないですよね。
だからこそ、親はしっかりと子どもとの関係性に向き合うべきです。
子どもが親の人格や尊厳を傷つけるような態度や言葉を発したら、どんなに反抗されようとも、しっかりと立ちはだかり、子どもの目を見て、叱ってください。
子どもが自分の失敗を親や他人のせいにしたら、同じように目を見て、たしなめてください。
人間として、きちんと叱責してやれるのは親だけなのです。

言葉にできない気持ちをわかってほしい 思春期の男の子が親に求めていること

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