小学生の人間関係が「子どもの語彙力」に左右される理由

齋藤孝

前編に引き続き、子どもの言葉習得のコツを齋藤孝先生に聞きました。マンガと読書で語彙力を養ってきたという齋藤先生は、子ども時代に多くの言葉に触れることが大切だと言います。
小学生になって、算数の文章問題や理科の実験内容を理解するには、「語彙力」や「読解力」が必要となります。これは学校科目ができる・できない以前の問題です。子どもにはどのように言葉と出会わせるとよいのでしょう?

齋藤孝(明治大学文学部教授) 
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。

子どもの将来のために親ができること

――子どもには、多くの豊かな言葉に触れてもらいたいと多くの親が感じていると思います。どんな方法が有効ですか?

(齋藤)親子で書店に行って、子どもに本を選ばせて、それを一緒に読むというのがオススメです。私も子どものころはそのようにして親に本を買ってもらい、一緒に読んでもらっていました。

オノマトペが出てくる絵本は子どもも大好きです。オノマトペに関する本を親がすすめてみるのもよいですね。私は身体論をベースにした教育学を専門にしていて、身体のスイッチをオンにして学ぶことを提唱しています。言葉も、口先だけで言うのではなく、身体を使って発声することで感覚に刻み込まれ、記憶に残ります。

私の新著『へんし~ん! ことばブック』は、子どもの身体感覚と言葉を一致させるためにつくったオノマトペの本ともいえます。オノマトペは感覚の言葉なので、ぜひ親子で演技しながら読んでみるといいと思います。

――小さいうちから、そんなに多くの言葉を覚えることができるのかという不安もありますが、そのあたりはいかがでしょうか?

(齋藤)ある程度の言葉が身についてからよりも、言葉の知識がまっさらな状態の方が、吸収度が高いと言えます。乾いた土がぐんぐん水を吸収していくイメージですね。

私は、子ども時代に読んだマンガのセリフを、いつの間にか全部暗記してしまっていました。今でも言えるくらいです。国語が得意だからとか読書家だからではなく、好きで楽しくて夢中になって読んだから忘れないのです。マンガのセリフで学んだことも多く、人生にもいい影響がありました。

子どもを育てている方はわかるかもしれませんが、子どもの語彙が爆発的に増える時期がありますよね。小学校時代がまさにその時期なので、その少し前から多くの言葉と出会っておくのがとても重要なのです。

――語彙が増える時期にたくさんの言葉と出会わせてあげるのが、子どもの将来のために親ができることなのかもしれないですね。

(齋藤)親は、子どもの一番近くにいる大人です。その上、子どもの語彙の水準、どの言葉を知っていてどの言葉を知らないかがある程度わかりますよね。新しい言葉に触れるのは、生の会話が一番です。オノマトペの絵本を媒介に会話することで、多くの言葉に触れていってほしいと思います。