「足を引っ張ろうとする人があらわれたら…」葉一さんが中学生へ伝えておきたいこと

松下雅征、葉一
2023.06.02 10:59 2023.06.21 06:00

教育系YouTuber・「とある男が授業をしてみた」葉一

志望校が決まらない、将来のやりたいことが見つからない…。様々な場面で選択を求められるものの、進むべき道が分からず途方に暮れている、そんな中学生は多いはず。将来を決める時に役立つヒントを探るべく、サイル学院高等部・学院長の松下雅征さんが教育系YouTuber・葉一さんに話を聞きました。

※本稿は、松下雅征著13歳からの進路相談』(すばる舎)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

松下雅征(サイル学院高等部 学院長)
東京都の公立中学校卒業。早稲田実業学校高等部を首席卒業。米国留学後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値で進路を選び後悔した経験から、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げ。中高生からの相談数は7万件以上。2022年、一人ひとりが自分にあった進路を選べる社会を目指して通信制オンラインスクール「サイル学院高等部」を創立。2023年、同校の中等部を創立。進路選択をテーマにした講演・イベントの登壇実績多数。1児の父。

教育系YouTuber・「とある男が授業をしてみた」葉一
1985年、福岡県生まれ。高校時代の恩師の影響で教師を目指し、東京学芸大学へ進学。教材の営業職、個別指導塾の講師を経て、2012年6月よりYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設。チャンネル登録者数は185万人超(2022年12月時点)。TBS「情熱大陸」やNHKへの出演経験もある、注目の教育イノベーター

今を生きる君たちへ「もし私が、13歳なら」

【一人ひとりが自分にあった進路を選べる社会へ(松下雅征)

偏差値というたった1つのものさしだけを基準にするのではなく、まわりの大人の声にただ流されるのでもなく、一人ひとりが”自分の人生の主人公”として、意志を持って将来を選び、切り拓いていってほしい。

とは言え、社会に飛び立つ前の10代にとって、進路選びは難題です。「将来、どんな道があるのか、想像できない」「何を基準に進路選びをすればいいのか、わからない」と言うのが本音だと思います。進路選びは、正解のない問い。迷いがあって、当然です。

一方で、今、社会の第一線で活躍しているビジネスパーソンや、自らの能力を発揮し、いきいきと生きている大人たちにも、皆さんと同じように進路に迷った10代の日々があったはず。彼らは、どんな学生時代を過ごし、どのように進路を選択して、今に至っているのでしょうか。

彼らが持つ十人十色のヒストリーは、進学や就職など、今、岐路に立っている皆さんの背中をそっと押してくれるはず。ここでは『13歳からの進路相談』に収録された、教育系YouTuber・葉一さんのインタビューを紹介します。

葉一「夢は変わっていい、 まずは始めることが大切」

教育系YouTuber・「とある男が授業をしてみた」葉一

【松下】葉一さんは、中学時代まで教師に不信感を持っていたと伺いました。そんな葉一さんが教育の道を志したのはなぜですか。

【葉一】高校で出会った恩師のおかげです。数学の先生で、初対面の印象は最悪だったんですが、いざ授業を受けてみると板書がきれいで、ものすごくわかりやすかった。苦手だった数学がどんどん楽しくなって。休み時間に自分から話しかけ、相談に乗ってもらうまでになりました。教師嫌いだった僕がですよ?

「教師も大人も、みんな敵だ」と本気で思っていた自分を変えてくれるなんて、教師って実は、すごく面白くて魅力的な職業なんじゃないかと感じたんです。

【松下】その後、学芸大に入学されて教員免許を取得。でも、学校の先生にはならなかったんですよね?

【葉一】はい。教育実習に行ってみてわかったのは、学校の教師は激務で、自分が目指す教師のあり方を実現するのは難しいということ。加えて、大学を出てすぐに先生になるより、まずは社会に出たほうがいいと感じました。修行のつもりで、ひとまず3年は外で働こうと。

ここでもいい出会いがあって。勤務先の営業所の所長に、本当にお世話になったんです。自分のダメな部分をたくさん指摘してもらえましたし、「仕事は長距離走なんだから、頑張る時と気を抜く時のメリハリをつけなきゃ続かないよ」と教えてもらいました。高校の恩師が第二の父親なら、所長は第三の父親です。

【松下】高校の恩師や営業所の所長…葉一さんのターニングポイントには必ず大事な人がいますね。

【葉一】僕は、どんな出会いにも意味はつくれると思っています。もちろん生きていく中で、あわない人もいます。

でも「あわないな」と思った時に、「なんでそう思ったんだろう?」などと分析していくと、自分のことをより深く知れるんです。そういう機会をもたらしてくれた人との出会いは、いい出会いだなぁと思います。

【松下】その後、塾講師を経てYouTuber になったのは、何かきっかけがあったんですか?

【葉一】塾講師を3年やって、親の所得格差と教育格差がダイレクトに結びついてしまっている現実を目の当たりにして、「この現状を変えたい」と思うようになりました。

たまたま私が担当する生徒は、母子家庭のお子さんが多くて。子どもも勉強したいし、親も勉強させたいけれど、お金が障壁になってできない。なかには預金通帳を見せながら「月謝で精一杯だから夏期講習には通わせられない」と謝るお母さんもいました。

所得による教育格差は仕方ない。たしかに、そうかもしれません。でも仕方ないで済ませてしまったら、永遠に変わらない。一度きりの人生なんだから「子どもが無料で教育を受けられる環境づくり」にチャレンジしたいと思いました。

【松下】強い意思を持って歩んでこられたのですね。もしも葉一さんが、今の知識や経験を持ったまま13歳に戻れたとしたら、どう行動しますか。

【葉一】教育者として、どんな道があるか模索するでしょうね。ひとまずいろんな人と知り合って、つながろうとする気がします。

13歳だった昔の自分にアドバイスするとしたら「知ろうとする気持ちだけは失うな」。学生の自分が知っている世界なんて小さいじゃないですか。アクションを起こして、自分の世界を広げてほしいです。

たとえば僕だったら、インフルエンサーや教育系のYouTuber にDMを送りまくりますね。話を聞かせてほしいって。中学生や高校生っていう肩書がついていると、協力してあげたいと思う大人も多いはず。メッセージを送って、学ぶ機会を得ようとすると思います。

【松下】最後に、今を生きる、現代の13歳に伝えたいメッセージをお願いします。

【葉一】前例のないこと、既存の枠から外れることをすると、足を引っ張ろうとする人もあらわれます。そんな時、忘れないでほしいんです。あなたは、まわりの人のために生きているわけではないということを。自分自身のために生きてほしいです。

僕は「初志貫徹」じゃなくてもいいと思っています。「やってみて違うと思えば、軌道修正すればいい」と考えているほうが、気軽に始められるはず。進路だって、夢だって、ころころ変わっていい。肩の力を抜いて、前に進んでいってください。

13歳からの進路相談

13歳からの進路相談(すばる舎)
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