「自分ばかりPTAの役員になっている!」と感じたら…人間関係の15秒で変える方法
なぜか自分にばかり仕事が振られる。 でも、指摘したら角が立つかも……。そんな時の対処法がこちらです!
※本稿は、『15秒あれば人間関係は変えられる』(PHP研究所)の内容を一部抜粋・編集したものです。
齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。 同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、 明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、 コミュニケーション論。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『語彙力こそが教養である』(角川新書)、『コミュニケーション力』(岩波新書)、『1分で大切なことを伝える技術』『必ず覚える! 1分間アウトプット勉強法』(以上、PHP新書)などがある。
「ここ数年のPTA役員について一枚の資料にまとめてみたのですが、私がちょっと多めになっているんですね」
自分から望んでいるわけではない役回り―― 例えば、PTAの役員や町内会の委員が、なぜか頻繁に自分のところに回ってくる、ということで不満に思っている人も少なくありません。一度もやったことがない人もいるのに、なぜ自分だけ……。実際のところ、頼む側としては頼みやすい人とそうでない人がいて、頼みやすい人につい頼んでしまう、というのはよくあることです。それは信頼されていることの証でもありますが。
これは実際にあったケースなのですが、何回も学校の委員を務めてきた人が、自分の委員としての履歴を一枚の紙にまとめてきたことがありました。「2014年には会計を、2016年には副委員長をやりました」といった具合です。まさに一目瞭然、みな即座に納得して、すぐさまほかの人に委員の役回りが引き継がれることになりました。
大体、多くの人は他人の負担については覚えていないもので、ある人に役回りが集中していることをきちんと認識している人は案外少ないのです。
ですから、こうした資料でより望ましいのは、自分の履歴だけではなくほかの委員の名前も書いておくことです。そうすると、委員の偏り具合が誰の目にも明らかになり、「自分に委員が集中している」という個人の問題から、「委員がある特定の人に集中している」という、組織全体の問題になります。一枚の客観的な資料に示された組織全体の問題を、組織全体で話し合うということになるのです。
これによく似た別の実例も経験したことがあります。ある組織の中で統計をとってみたら、ある部署からはまったく委員が選出されていなかった。周りから見るとずるいということになるのですが、その部署のトップ自身がそのことに気づいていなかったのです。過去のデータ一覧でそのことが明らかになったので、慌てて「やりますやります」と委員を出してくれました。
そのトップにも悪気はなかったのです。こうした無知が負担の偏りを生んでいるケースは数多くあると思います。ですから、みなが納得するような統計をとったうえで交渉すれば、ほとんどの場合、うまくいくでしょう。
また、そのことで人間関係がぎくしゃくするということも考えにくいのではないでしょうか。なぜなら、個人だけの問題ではなく、「一部の人に役回りが集中している」という組織全体の問題を指摘しているからです。組織全体の問題をきちんと客観的に指摘して、非難されることはまずないでしょう。
このような一目瞭然の資料をつくれば、プレゼンは15秒で十分なはずです。
関連書籍
『15秒あれば人間関係は変えられる』(PHP研究所)
上司や先輩、部下とのやりとりから、家庭やPTAの問題まで。具体例を挙げながら、双方が納得できる提案を15秒で行う技術を、コミュニケーション研究の第一人者が開陳します。