なぜすぐ諦めてしまう? 今の子どもが「挑戦することを避ける」理由

石原健次
2023.08.10 18:41 2023.08.09 11:40

読書をする小学生

「3匹の子ブタ」のオオカミは悪者なのか? そんな「ちょっとちがう視点」で世界の名作童話を読み解く児童書『10歳からの 考える力が育つ20の物語』の著者で放送作家の石原健次さんにおうかがいする連載の第2回。

今回は、最近上梓した最新作『10歳からの もっと考える力が育つ20の物語』の読み解きをベースに、ご自身の子育て経験をふまえた「考える力」の育て方についてうかがいました。

石原健次(放送作家)
1969年生まれ。兵庫県神戸市出身。『行列のできる相談所』、『ダウンタウンvsZ世代』(ともに日本テレビ)、『SMAP×SMAP』(フジテレビ)、『Ⅿ-1グランプリ』(朝日放送テレビ)などの構成に参加。また、『0号室の客』(フジテレビ)、『クロサワ映画』などでドラマや映画の脚本を担当。本書の第一弾『10歳からの 考える力が育つ20の物語』が初の著書となる。

子どもに伝えたい「自分の守り方」

本を読む小学生

――シリーズ第2弾となる最新作『10歳からの もっと考える力が育つ20の物語』では、前作でブルースの秘書だったシナモンが、2代目童話探偵になりましたね。

そうです。成熟した大人のブルースに対して、シナモンは、まだあれこれ悩みながら人生の荒波を乗り越えていくイメージが強く、読者の子どもたちに共感してもらえるポイントになるのでは、と考えました。

――子どもたちに対して、とても現実的なアドバイスも含まれているように感じました。たとえば、「まんじゅうこわい」の話では、「まんじゅうがこわい」という男の荒唐無稽なウソに、なぜみんながだまされたのかと疑問を投げ、「人はイライラすると、冷静な判断ができなくなるからだ」とシナモンが読み解いています。

一時の感情のたかぶりで極端なことを言ってしまうことって、子どもにはよくあると思うんです。子どもって、宿題をやらずにテレビを観て注意されたときに「じゃあもうテレビなんて観ない!」と癇癪を起してしまったことがありますよね。ほかにも、「クリスマスプレゼントいらない!」とか、「もう学校には行かない!」とか。

「まんじゅうこわい」の話も同じで、普通なら、「まんじゅうがこわい」なんてウソだと気づくはずです。でも、みんなはその前に、主人公の男から、自分たちが「こわい」というものを「ぜんぜんこわくない」と否定され続けた。そのイライラで、冷静な判断ができなくなってしまったのでは、と思ったんです。

――この読み解きには、ご自身の経験も含まれているのでしょうか。

おっしゃる通りです。どんな仕事でも、意見が対立することはあります。そのときに攻撃的なもの言いになってしまい、「なんでもっと冷静に対応できなかったんだろう」と反省しても、もう遅い。タイムマシンがあれば戻りたいことだらけです(笑)。

そのことを子どものうちに理解しているだけで、相当未来は明るいんじゃないでしょうか。理想的な教訓だけでなく、子どもがデメリットを受けないための「自分の守り方」を伝えることもこの本では意識しています。