「子どもは親の言うことを聞いて当然」は権利侵害? 言ってはいけない子育てのNGワード

中山芳一
2023.08.10 18:43 2023.08.11 06:00

「誰のおかげで生活させてもらえているの?」と言ってしまう

親子で手を取り合って

【親の考えに子どもが反発する一場面】

親「お前! 誰のおかげでこれまで生活できていると思ってるんだ?」

 「いま、あなたが好きなことをできているのは私のおかげでしょ!」


 「あなたは、私がおなかを痛めて産んだ子どもなんだから、


 「私の言うことを聞いていればいいのよ!」

先ほどの「年上問題」のところで、私たちは経験に拘束されてしまう…という話をしましたが、この発言も私たち親世代は要注意です。自分自身が言われてきていますから、ついつい口に出してしまいかねません。

ちなみに、一番上の「誰のおかげでこれまで生活できていると思ってるんだ?」については、保護者(養育者)には18歳になるまでわが子を養護する義務があるため、この親がこの子を生活できないようにしてしまったら、それはネグレクト(育児放棄)という重大な児童虐待になってしまいます。

ですから、誰のおかげで生活できているも何も、あなたの子どもはあなたの義務として18歳まで育てなければならないのです。

したがって、昭和にありがちだった最初の発言は問題外となってしまいます。ほかの発言についても、とても危険な発言であることに違いはありません。

「好きなことをさせてあげたから…」「おなかを痛めて産んだから…」これらも先ほどと同様に、児童を養護する義務の範疇になるのですが、同時に、こういう言葉を理由にして、合意をつくるのではなく押し付けをしようとしている危険性があります。

まさに、子どもの権利を侵害している言動であり、「パターナリズム(父権主義)」に陥っています。

そのため、仮に合意がつくられたように見えても、それは決して健全な合意づくりではなく、やはり強制力のある合意になってしまっているということですね。

このようなパターナリズム発言をしてしまう方、要は恩着せがましいことを言って言うことを聞かせようとしている方は、その「恩着せがましいこと」は決してわが子が納得する理由になっていないということをまずは理解しておいてください。楽をして納得させようとするのはやめましょう!

・わが子の生活の養護を放棄したら、それは虐待になる
・これまでお世話したことは、子どもを納得させる理由にならない
・楽をせずに、子どもが納得できる理由をしっかりと示そう

 

子どもが思う通りにならないと感情的になりすぎてしまう

男の子とブランコ

【宿題をしていなかった一場面】

親「なんで宿題をきちんとやってないの?」

子「だって、分からなかったから…」


親「分からなかったらやらなくてもいいの!?」

 「宿題をやらなかったらあなたが将来困るのよ!」
 「なんでそんなこともわからないのよ!」

みなさんはいかがですか? お子さんが宿題をやらないということに対して、ここまで感情的になって怒ってしまいますか?

これは宿題に限らないのかもしれませんが、宿題に限って言えば、こんなに感情的に言われると、子どもの方も気持ちが萎えてしまうか、逆に腹が立ってしまうか…という感じでしょうか。

全否定や押し付けのない健全な合意づくりをするのなら、やはりそこには宿題をすること自体の理由であったり、ご家庭で宿題をするためのルールについて、事前に合意をつくって共有しておかなければならないでしょう。

宿題だけに限ることではありませんが、感情的になって怒るほどのことなのか、感情的になることで余計に悪化してしまうのではないか、ということを少しでも思い起こしていただけたらと思います。

もちろん人間なので、絶対に感情的にならないでくださいとは言いませんが….。 

【習い事から帰る際に、親が急いでいる一場面】

親「あ~忙しいなあ…早く行かないと間に合わない…」

子 ゆっくりと準備している


親「早くしろよっ! お前のせいで遅れるだろっ!!

このやりとりはいけません! 先ほどの通り、人間なので感情的になることはあるでしょう。ですが、習い事の場所でのやりとりということは、公共の場でこれだけ声を荒げているということになります。

しかも、帰りの準備が遅いという理由だけであって、子どもの生命の危険などの緊急性はありません。

そんな中で、これだけ感情的に声を荒げてしまうということは、冷静さを欠いてしまっていることがとてもよくわかります。もはや感情表現ではなく、おさえの利かない感情の吐き出しです。

このように、子どもに対して感情的になりすぎたあとは、そのことについて子どもに素直に謝りましょう。こういったことが反省なく繰り返されるのはかなり危険です。

・本当に感情的になるほどのことかを確かめよう
・公共の場で感情的になっているのは危険信号
・感情的になってしまったときには、そのことを子どもへ素直に謝ろう

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