子どもを縛る「親の決めつけ」…小学生の考える力を伸ばすための接し方は?

石原健次

「3匹の子ブタ」のオオカミは悪者なのか? そんな「ちょっとちがう視点」で世界の名作童話を読み解く児童書『10歳からの もっと考える力が育つ20の物語』(矢部太郎・絵/アスコム刊)の著者で放送作家の石原健次さんにおうかがいする連載の第3回。

ルールが書き換えられた未来を生きる子どもたちに親が教えられる「たったひとつのこと」のこと。すなわち「考える力」の育て方について、今回もおうかがいしました。

石原健次(放送作家)
1969年生まれ。兵庫県神戸市出身。『行列のできる相談所』、『ダウンタウンvsZ世代』(ともに日本テレビ)、『SMAP×SMAP』(フジテレビ)、『Ⅿ-1グランプリ』(朝日放送テレビ)などの構成に参加。また、『0号室の客』(フジテレビ)、『クロサワ映画』などでドラマや映画の脚本を担当。本書の第一弾『10歳からの 考える力が育つ20の物語』が初の著書となる。

「自分を守ることも大切」

――童話探偵シリーズの読み解きで、石原さんが一番気にいっているものは何でしょうか?

ひとつに絞るのは難しいのですが、あえてあげるなら、第一作目で紹介している「ハーメルンの笛吹き男」でしょうか。

――町のネズミを退治した男が、約束の金貨をもらえず、怒って町中の子どもたちを連れて行ってしまう童話ですね。

そうです。「ハーメルンの笛吹き男」の読み解きで、童話探偵ブルースは「誰かひとりでも約束を守ろうと声を上げていたら、男はあんな悲しい仕返しをしなかったはずだ」と言っています。そして、「でも、ひとりで正しいことを主張するのは、とても難しいことだ」とも。

――「間違ったことには声を上げよう」で終わりにするのではなく、フォローを入れているのが現代的だと感じました。

正しいことを主張するって、必ずリスクが伴いますよね。特に、「ハーメルンの笛吹き男」のように、みんなが間違った方向に流れていってしまっているケースで声を上げれば、孤立してしまう可能性もある。そのことを理解したうえで、それでも、ひとりでも声を上げる勇気を持てるなら声を上げよう、と。

ただ正しさを押し付けるのではなく、「人は完璧に正しくはなれない」「自分を守ることも大切」という部分を残したいと思いました。

――確かに、そこをセットで伝えないと、子どもに対して無責任になってしまうかもしれません。

ぼくたちはずっと、「これが正しい!」という断定するような教育を受けてきたと思うんです。でも、今となっては、「こうするべき」「こうでなくてはならない」という硬直した考え方は危険ですよね。

ぼくは20年以上、主にバラエティ番組の放送作家をしています。テレビやラジオ番組などの企画を考えたり、その構成を作ったり、台本にまとめたりするのが仕事ですが、特に最近は、物事を一方的に見て「こうだ」と決めつけないことを意識しています。それは、新しいルールの中でどれだけ面白いものを作れるかという挑戦でもあります。

「決めつけない」子育て

――その変化は、子育てにも何か影響を与えていますか?

否定しないこと。もちろん頭ごなしの否定はしませんけど、何かを教えたい気持ちから出てしまう否定こそ、注意すべきだと思っています。たとえば、うちの子にバスケットボールを教えたとき、ぼくは経験者なので、つい「もっとああして、こうして」と言いたくなってしまいます。

でも、子どもにとっては、ダメだと言われているのと同じになりかねない。だからもう、淡々と見守る。で、うまくいったときは「お、今のはいいね」とか、教えるにしても「こうしてみたらどう?」。それくらいがちょうどいいんじゃないでしょうか。

――決めつけなければ、子どもが自分で考え始めるという側面もありそうです。

そうですね。とくに今は情報量がものすごいですし、今は小学生でもipadで検索したり、YouTubeを見たりしています。そんな環境の中で、この本に書いてあることをヒントにして、「あ、これ今の自分と同じだな」というふうに、子どもが自分の状況に合わせて応用していってもらえればうれしいです。

――子どもはもちろん、大人にこそ必要かもしれません。

実際、大人の方からもよく本の感想をいただくんですよ。「この本は大人のビジネス書だ」と言ってくださった方もいました。「多様性を認めよう」「いろんな角度から物事を見よう」というのは時代の流れでもあるし、だったら自分の認識をアップデートしなければなりません。「いろんな角度から物事を見る力」は、もちろん大人にも必要だと思います。

――それでは最後に、この記事を読んでいる親ごさんたちにメッセージをお願いします。

未来がどうなるかなんて、わかりません。私が子供の頃、大半の時間をスマホを眺めて生活することなど想像もできませんでした。これからを生きる子どもたちは、さらに新しいルールに書き換えられた世界を生きていくことになります。

だから、ぼくたちが今の時代の価値観で子どもたちに教えたことが、未来の足かせになってしまうこともあると思います。そのなかで、ぼくたち親が、大人が子どもできることは、とにかく自分の頭で考える力を身に着けさせること。

どうしたら自分が幸せになれるかを考え続ける力を育てること。それだけが、未来を生き抜くための力になるんじゃないかなと思っています。ともにがんばりましょう!

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