お前なんかいなければ…反抗期の子へ向けた言葉が生んだ「親子の埋まらない溝」

親野智可等

これまでたくさんの愛情を注いで育ててきた我が子が、反抗期をむかえて豹変…。冷たい態度をとる子どもに親御さんは戸惑うことでしょう。反抗期はいつまで続くのでしょうか。また、反抗期の子どもにとるべき態度とは? 親野智可等さんが解説します。

※本稿は親野智可等[著]ぴよととなつき[イラスト・マンガ]『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)から一部抜粋・編集したものです

親野智可等(おやの ちから)
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メールマガジンなどで発信中。

ぴよとと なつき
滋賀県出身のイラストレーター、まんが家。夫と息子2人と過ごす日々を育児マンガにしてSNSにて投稿中。最近オンラインで筋トレと英会話を始めました!ブログ「ピヨトト家のひとコマ。」voicy「近所のピヨトトさん」

あの頃の息子は今…。

これまで息子との関係は良好でした。周りから見ても仲の良い親子だったと思います。しかし中学に上がった途端、突然やってきた反抗期。暴言を平気で発したり親を無視したりするようになり、かわいかった息子はすっかり別人に。

変わってしまった息子が辛く、小さな頃の写真を見るたびに心が沈みます。お母さん〜! と駆け寄ってきてくれた優しい息子はもういないんです。今までの育て方が悪かったんでしょうか。

(中学1年男子の母)

子どもの心はいつかまた親の元に戻ってきます

思春期・反抗期の子どもとの接し方は難しいですよね。悩まない親はいないはずです。中にはこちらの相談者さんのように「自分の育て方が間違っていたのでは」と思い詰めてしまう人もいるようです。

でも、反抗期が来るというのは子どもが順調に成長している証拠です。育て方が悪かったのでは全くありません。まずは「来た来た反抗期!」という感じで、心にゆとりを持つようにしましょう。

幼かった息子さんと今の息子さんが別人のように感じるのも無理もないことです。この時期、子どもは大人に反抗しながら自我を確立していっている最中です。子どもは大きな壁である大人に対抗しなければならず、それが暴言や無視という形で発現しています。

大体の場合、思春期・反抗期が終われば子どもの心がまた親の元に戻ってきて、良い関係を築けるようになります。しかしながらそうならない場合もあります。

それは、子どもに「人格否定」「存在否定」の言葉をぶつけて、心を深く傷つけてしまった場合です。思春期・反抗期の子どもは親に対して挑発的で生意気な言葉を発することがあります。それを聞いた親がキレて感情的になったときが危険です。

子どもに絶対に言ってはいけない言葉を発してしまうことがあるからです。例えば「卑怯なやつだ」「お前がいなければ…」などの言葉です。

一度でもこういう言葉をぶつけてしまった場合、子どもの心が離れたまま元に戻らなくなることがあります。それが引き金で思春期・反抗期が終わっても親の元に二度と戻ってこないということもあり得ます。

反抗期を経てひと回り大きくなり、頼もしくなった息子さんが戻ってくるその日のために、今はゆったりと構えつつ共感的・民主的な態度で子どもに接しましょう。また反抗期の子には子ども扱いではなく、一人の大人として接するようにします。

反抗期はいつまで続くの?

うちの子は高3だけどまだまだ反抗期。全く言うことを聞いてくれません。一体いつになったら終わるんでしょうか?

(高校3年男子の母)

子どもを一人の大人として敬うことです

「思春期・反抗期がいつ始まり、いつ終わるか」は、この時期の子を持つ親にとっては最大の関心事だと思います。

早い子なら女の子で小学4年生くらいから、男の子はその2年後くらいから思春期前期に入ります。本格的な反抗期は中学1年生の半ばくらいからが多いようです。

さほど激しくなく短期間で終わってしまう子もいれば、相談者さんのお子さんのように高校3年生になっても、さらには大学生になっても激しい反抗期が続いているという子もいます。

長引く反抗期にはいくつかの要因があります。学校や友人関係など子どもが置かれている環境、また子どもの持つ性格や資質などもその一つです。

そして子どもに対する親の対応も大きな要因となります。思春期・反抗期の子をいつまでも「子ども扱い」して、その言動にいちいち切れて感情的に言い争ったり、細かいことでガミガミ叱ったりしていると反抗期が無駄に長引きます。

一人の人間として敬って「大人扱い」している方が反抗期を順調に通過します。そのためには、大人が一歩引いたところで、大きくドンと構えて見守ることが大事です。

もちろん、これは引けないということは、ちゃんと正対して冷静かつ穏やかな言葉で伝えることも大事です。その際は、子どもへの愛情とリスペクトを込めて伝えましょう。