ミリオンセラー絵本の謎? 『おやすみ、ロジャー』の結末を子どもたちが知らない理由

三橋美穂

子を持つ親にとっての難関はなんといっても「寝かしつけ」。さあ寝ようと子どもに声をかけた瞬間からはしゃぎだす子が全世界に何人いることでしょうか?

そんな世界の親たちの悩みを解決しつづけ、日本国内での発行部数が100万部を突破した本が『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』(カール=ヨハン・エリーン著、飛鳥新社刊)。「たった10分で、寝かしつけ! 心理学的効果により読むだけでお子さんが眠る」を謳った大ヒット絵本です。

本記事では、この本の翻訳者である三橋美穂さんに、『おやすみ、ロジャー』を訳す際に気を付けたことや、子どもの睡眠への効果についてお聞きしました。(写真提供:飛鳥新社)

三橋美穂(快眠セラピスト/日本睡眠学会正会員)
寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。睡眠を多角的にとらえた実践的なアドバイスと、手軽にできる快眠メソッドが、テレビや雑誌等で支持を集め、睡眠のスペシャリストとして多方面で活躍。講演や執筆活動のほか、ベッドメーカーのコンサルティングや、快眠グッズのプロデュース、ホテルや旅館の客室コーディネートなども手がける。

あえて「お父さん、お母さん」と翻訳した理由は…

『おやすみ、ロジャー』翻訳のご相談を飛鳥新社さんからいただいて、単純に「面白そう!」と。今までこんな絵本は見たこともなくて、すごく興味が湧きました。是非やらせてくださいという気持ちでした。

原書の英語原文を読んで、文章は端折らずに訳したほうが「寝かしつけ」という機能のために良いと感じました。原書に基づきながら、その意図を汲み取りながら日本語に置き換え、効果が発揮されるように訳していきました。原文のニュアンスを変えずに、工夫して翻訳した箇所も多くあります。

例えば、最近のお子さんは「パパ・ママ」と呼ぶことが多いですが、あえて「お父さん・お母さん」と訳しました。「パパ・ママ」が破裂音であるため、リラックスしづらい音なんです。

「お父さん・お母さん」という言葉を使うことで、息を「ふ~っ」と吐くと体の緊張が抜けて副交感神経が働くんです。実際に自分で音読してみて、ちゃんと効果を感じるかどうかを確認しながら翻訳を進めました。