子どもに請求された多額の慰謝料…「友達にケガをさせた」時に親がしてはいけない行動

高橋麻理
2024.09.18 15:13 2023.08.19 11:30

お友達の家の家具を派手に汚してしまった! 弁償しないといけない?

見上げる女の子

A. 相手に生じた損害について支払義務が生じます。誠意ある対応を心掛けたいところです。

参考となる法令など:民法709条、民法712条、民法714条

子どもと一緒にお友達の家に遊びに行くのは、子どもにとっては特別な楽しい時間であるうえに、よその家庭を知る良い機会にもなります。そして親にとっても、子どもたちが少しくらいはしゃいでしまっても周囲の目をあまり気にせず、親同士でゆっくりおしゃべりすることができたりしますよね。

そんな楽しい時間を過ごしたいのに、子どもがお友達のおうちで家具を汚してしまったり、おもちゃを壊してしまったりしたら……。そんな不安を感じてしまうこと、あると思います。

家具を汚してしまったり、おもちゃを壊してしまったりしたことで生じる代金相当分やクリーニング代などについて、親に支払義務が生じます。ですから、相手からそれらの金額を聴いた上で支払うことになります。

法律とは少し逸れますが、面識のない人の物を壊してしまったという場合と比べて、子どもがお友達同士という関係であるがゆえの難しさを感じるケースもあるかもしれません。

相手も「本当は弁償してもらいたいけど、お友達同士だから、そんな話をして気まずくなったらどうしよう」という思いから、「お互い様だし気にしないで!」などと言いながら内心モヤモヤ……ということも考えられますよね。

関係性にもよるので、一概にこれといった正解はありませんが、通常の法的な解決方法とはちょっと違った方法で関係性を保つことも検討できるかもしれません。

たとえば、相手がこちらの弁償を辞退した場合には、お子さんのお誕生日などちょっとしたきっかけを利用して、壊してしまったおもちゃと似たおもちゃを選んでプレゼントするといった方法です。

家具を汚してしまったり、おもちゃを壊してしまったりした場合は、お相手がたとえ拒んでも、「今後も仲良くお付き合いいただきたいので、だからこそ、こういうことはちゃんと対応させてほしい」とお伝えした上でお支払いを申し出てみるのも一案かもしれませんね。

子どもが保育所で大けが。見守りが不十分だったとして、保育士を辞めさせたり体制を改善させたりできる?

泣く男の子

A. まずは適切なヒアリングで経緯と原因を明らかにしてから責任の所在を検証しましょう。

参考となる法令など:民法415条、民法709条、民法715条

まず、保育施設で何があったのかを明らかにする必要があります。どのような経緯で子どもが大けがに至ったのかによって、誰に、何を請求すべきかが違ってくるからです。これは簡単そうで、意外と難しい場合が多いです。

幼児にとっては、自分の身に起きたことを時系列に沿って正確に話すことは難しく、質問の仕方やタイミングによって、話が不安定になってしまうこともあるからです。

施設にカメラが設置されていて状況が録画されていたり、目撃者が複数存在し、その人たちがきちんと状況を説明できたりすればいいのですが、もしかしたら、目撃していたのは、幼児たちだけかもしれません。

そうなると、事実を明らかにするために、早い段階で弁護士など専門家にも相談しつつ、施設側にも協力を求めながら適切なヒアリングなどを実施する必要があります。

ヒアリングの結果、たとえば、大けがの原因が遊具からの転落だとわかった場合は、見守りが不十分だったことなどについて、子どもを預かることに伴い守るべき責任を果たしていなかったとして、民法に基づき保育施設側に治療費等を請求することなどが考えられます。

また、お友達からの加害行為でけがをしてしまったという場合には、やはり保育施設側の責任を追及したり、お友達の保護者に対する治療費等の請求も考えられます。

保育士を辞めさせたりクラス替えをしたりなど、保育施設の体制を変えさせることについては、法的に、必ずしもそれらを保育園に求めることができるわけではありません。

でも、事故の原因が保育施設の体制にあると考えられる場合には、体制の改善を要望したいところですよね。その際は、同じ保育園の保護者にも協力を求めたり、「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」なども参考にしながら、保育施設側に具体的な改善提案をし、話し合いをしてみるとよいと思います。

高橋麻理

高橋麻理

第二東京弁護士会所属。弁護士法人Authense法律事務所。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。社外役員(社外取締役・社外監査役)に就任し、社内不祥事予防等業務に従事する一方、子どもが関わる離婚問題、子どもに関わる犯罪、学校問題等にも取り組み、子どもへの法教育として小中学校でのいじめ予防授業、保護者向け講演なども行う。法律問題を身近なものとしてわかりやすく伝えることを目指し、テレビ、ラジオ、新聞等メディア出演も多数。『大人になる前に知ってほしい 生きるために必要な「法律」のはなし』(ナツメ社)共同監修。一人の母として子育て奮闘中。

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