先進国で高齢出産が増えているのはなぜ? 年齢と流産・染色体異常の発生率の関係

重見大介

女性のライフスタイルの変化により、高齢出産は珍しいことではなくなってきました。しかし、初産の年齢が上がることによるリスクの増加も、決して無視できない心配事となっています。そもそも高齢出産とは何か、どんな問題に備えるべきかを、産婦人科の重見大介さんに解説いただきました。

※本稿は重見 大介著『病院では聞けない最新情報まで全カバー! 妊娠・出産がぜんぶわかる本』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集したものです

重見大介
産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。株式会社Kids Public 産婦人科オンライン代表。大学病院の産婦人科で臨床を経験したのち、「女性の健康 x社会課題」へのアプローチを活動の軸として、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りや啓発活動、臨床研究、性教育などに従事。また、SNSやネットニュース等で医療情報を積極的に発信している。

そもそも「高齢出産」とは

ニュースなどでも「高齢妊娠」「高齢出産」という言葉を耳にすることが増えてきました。

もともと医学的には、「35歳以上の初めての妊娠・出産」を「年齢が高い状況での妊娠・出産」と捉えてきました。

これは、35歳未満の女性とそれ以上の年齢の女性を比べると、後者のほうで流産率が上昇(35歳を超えると流産率が約25%、40歳を超えると50%近くに上がる)し、妊娠中の合併症やトラブル(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、切迫早産、前置胎盤、常位胎盤早期剥離など)が増えるということがさまざまな研究によって明らかとされてきたためです。

※参考 一般社団法人 日本生殖医学会ホームページ「生殖医療Q&A」 
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa23.html

妊婦の年齢が上がるほど染色体異常の発生率が増える

また、生まれる赤ちゃんの染色体異常(ダウン症など染色体に原因のある生まれつきの病気)の発生率は妊婦の年齢が上がるほど上昇し、20代女性に比べて40代女性では10倍ほどになります。

母親の年齢ごとのダウン症の発生割合

20歳……1/1667
25歳……1/1250
30歳……1/952
33歳……1/625
35歳……1/385
38歳……1/175
40歳……1/106
43歳……1/50
45歳……1/30

※厚生労働省『不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会』ワーキンググループ 報告書 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000013498.pdf

第一子の出産年齢は平均31歳

ところが、最近では先進国全体で、妊娠・出産の年齢が徐々に上昇しています。これには色々な理由・背景があり、女性がより仕事やキャリアを自由に選べるようになったこと、妊娠・出産・育児に必要なお金を若いうちは十分に持てないことなどが挙げられるでしょう。

日本では、第一子の出産時年齢は平均で約31歳となっており、第二子以降の出産時は35歳を迎えている女性もかなりの割合だと考えられます。

このような状況から、現代の日本において
・「高齢妊娠・出産」は35歳以上という区切りのままでよいのか
・第二子以降についての定義はなくてよいのか
などの疑問が湧いてきますが、まだ明確な答えは出ていません。

妊娠・出産のタイミングというのは、自分自身の希望や意思がとても大事ですが、それだけで叶うものでもありません。しかし、上記のようなリスクが伴うということは知識として持っておく必要があるでしょう。

こういったことも、子どもたちにきちんと性教育の一環として伝えていくべきだと思っています。

関連書籍

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